18話:到着
ここはシュバルツ王国の王宮内の医務室、第2王子であり、父に似た金髪碧眼、身長は172cm、十代前半の色白の美少年である現王太子ロミオ・シュバルツが刺客に襲われ、掠り傷を負ったのである。ロミオの守役であるマサヒデ・ノエルが国王に謝罪をした
「ロミオ、大事ないか。」
「はい、ただの掠り傷にございます。」
「申し訳ございません!私が付いていながら、この失態、どうか私に厳罰を賜りますようお願い申し上げます。」
「突然の襲撃だったんだ、そちが悪いわけではない。」
「で、ですが!」
「それに掠り傷で済んだんだ。命まで取られなくて良かった。」
「陛下・・・・」
「それにロミオを救ったこの者にも礼をいわねばな。」
ロバートが隅で控えている男に注視した。ロミオが刺客に襲われた際、一人の男が助太刀し、ロミオを救い、刺客を返り討ちにした。刺客を生け捕りにしようとしたが、刺客は舌を噛みきり、息絶えたのである
「そなたは何者だ。」
「ははっ!私はブリュッセル辺境伯家にお仕えする隠密にございます。」
「何、ブリュッセル辺境伯の!」
「ははっ!此度、参上いたしたのは他国のスパイが陛下と殿下らの御命を奪わんとする情報を入手いたしました。」
「そうか、辺境伯がのう。」
「しかし一歩遅れてしまい、殿下に御怪我を負わせてしまい、誠に申し訳ございません。」
「いや、そちが駆け付けていなければロミオは刺客に討たれていたやもしれん、礼を申すぞ。」
「も、勿体なきお言葉!」
「うむ、それで他国のスパイの正体は分かったのか?」
「いいえ、それはまだ・・・・」
「そうか。」
そのころ、隠れ家に潜んでいたカリンはロミオ王太子の暗殺に失敗した報を受けていた
「失敗したのか。」
「ははっ!」
「で、それを邪魔した忍者は何者だ。」
「どうやらブリュッセル辺境伯家の者だと。」
「ブリュッセル・・・・あの女狐の実家か!」
元王太子であるロゼオの元婚約者であるセシリアからの仕返しとも言える此度の行為、セシリアへの逆怨みともいえる感情が芽生えた
「忌ま忌ましい、おい、本国からの指令はまだか!」
「ははっ!未だに・・・・」
「くそ!」
カリンは醜悪な表情でバケツを蹴り、バケツは音を出しながら転がっていった。なぜこうも上手く行かないのかとイライラを募らせた
その頃、足の筋を切られ、歩行困難となったロゼオは絶望の境地にいた
「くそ、くそ!」
ロゼオは見張りの男を人質に取り、脱出を図ったが、運悪く背後にいた仲間の一人に鈍器で殴られ、取り押さえられ、足の筋を切られ、現在は体をジタバタすることしかできないのである
「僕はこれからどうなるんだ。」
ロゼオは先行きの不安に苛まれながら過ごしていると扉が開いた
「か、カリン。」
「ごきげんよう、元殿下。」
かつての恋人であるカリンが入ってきた。だがその表情は険しく豚を見るような眼でロゼオを見下ろしていた
「な、何のようだ!」
「決まってるじゃない・・・・・憂さ晴らしに来たのよ。」
カリンの手には動物を躾けるための鞭があった。ロゼオは嫌な予感がしてカリンから遠ざかろうとしたが・・・・
「逃げられないわよ、私から。」
カリンは部下たちに命じてロゼオを捕らえ、柱に縛り付けた。そこへカリンは鞭を降りながら、ロゼオに接近した
「辞めろ、辞めてくれ!」
「喧しい!」
「ぐはっ!」
カリンは持っていた鞭でロゼオにぶつけた。何度も何度もロゼオを痛め付けた
「ふん!ふん!」
「や、辞めてくれ。」
「黙っとれ!」
「嗚呼!」
鞭で叩かれた部分は赤く腫れ、皮が向け、血が滲み出てきた。それでもカリンは辞めずにロゼオを責め立てた
「ふぅ~、スッキリしたわ!」
ようやく叩き終え、カリンはスッキリした表情でロゼオを見続けた。ロゼオの顔、上半身、足らは痛々しいほど、血にあふれ、皮が捲れ上がっていた。ロゼオは完全に泣きべそをかき、失禁もしていた
「あらあら、せっかくの美形が台無しですわね、おい、傷を治してやれ。」
「はっ!」
カリンの命を受け、黒装束の男たちは塗り薬を傷口に塗った。ロゼオは「ウ!」とうめき声を上げ、眉を顰めながら苦痛を味わった
「我慢しなさい、傷口にしみるけど、効果はあるから・・・・」
自分を痛めつけた張本人が言うと皮肉としか言いようがないが、従う他ない。ロゼオは反論する気力すらなく、塗り薬による地獄を味わう他なかった
島左近清興だ。ワシらは中国大返しの如き神速でようやく王都へ到着した
「やっと到着したな。」
「ええ。」
「や、やっと、つ、着いた・・・・」
ワシらの後を着いてきたベル・クラウンら騎士たちは疲労困憊だった。忍びたちは問題なしだが、騎士連中はだらしがないな
「ベル殿、そのように疲労困憊では勝てる戦も勝てませぬぞ。」
「わ、分かっておりますが・・・・」
「左近様、とりあえず忍びたちには辺境伯屋敷へ先に行かせましょう。」
「そうだな、行ってくれるか。」
「承知!」
忍びたちは一斉に王都の方へ向かった。我等は検問所へ向かい、門番に紹介状を見せ、通してもらった
「左近様、無事に入れましたな。」
「ああ、他国の忍びが我等を見ていなければいいがな。」
「ではベル殿、屋敷へ案内していただきたい。」
「こ、心得た。」
ワシらはベル・クラウンの案内でブリュッセル辺境伯屋敷へ向かった。道中を警戒しながら進み、ついにブリュッセル辺境伯屋敷へ到着した
「(左近様、忍びの気配は感じられません。)」
「(うむ、どうやら我等の存在に気付いていないようだな。)」
「ここがブリュッセル辺境伯屋敷です。」
ブリュッセル辺境伯屋敷は外観は、この間見たリスカルド伯爵邸とフランシス伯爵邸に負けず劣らず立派な外観をしていた。すると玄関口からある白髪混じりの気品に溢れた老人がやってきた
「お待ちしておりました、この屋敷を管理しているモール・ロイヤルにございます。」
この屋敷に仕える家令であり、セシリア・ブリュッセル御付きの執事である
「出迎え忝ない。」
「いいえお嬢様をお救いいただき感謝に堪えませぬ。さぁ、中へ御入りください。」
「では、失礼致す。」
ワシらは屋敷に入り、休憩を取った後、家令のモールに王都の現状を聞いた
「王太子殿下が刺客に襲われたと!」
「はい、刺客の襲撃によって怪我を負いましたが命に別状はないとのことにございます。辺境伯家に仕える隠密が刺客を退治いたしまして・・・・」
「そう、やはり。」
「サコン殿、このモールめにも、これまでの出来事、シュバルツ王国を揺るがすほどの大事件が起きていることが嫌でも分かります。」
「そのために貴殿の主である辺境伯公が我等を御送りくだされたのです。だが我等の存在に気付いて他国のスパイが何をするか分かりません。事は隠密裏に行わなければなりませぬゆえ、そう心得ていただきたい。」
「承知しました。」
「某は辺境伯公に一武人である我等に手厚いもてなしをしてくださった恩義がござる。その恩を必ずやお返し申す。」
「サコン殿、忝ない。」
ワシはモール殿にそう誓い、自室に戻り、武器の点検等をして時を過ごすのであった




