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164話:バイル・エゲレス

島左近清興だ、ワシの下にある客人が来ている。客人というか招かれざる客といった方が正しい


「サコン準男爵殿、貴殿の手腕、我がマルギニア民主共和国にて発揮してもらいたいのです!」


【虎の牙】の頭目にしてマルギニア民主共和国総統フレイク・マルギニアの側近バイル・エゲレス、何故この男がここにいるのか、話が遡る・・・・


「旦那様宛に御手紙が来ております。」


「ん、誰からだ?」


「はい、マルギニア民主共和国のバイル様と。」


「何?」


マルギニア民主共和国と聞いて、ワシは【虎の牙】を思い出した。バイル・エゲレスというのはフレイク・マルギニアの側近中の側近である。その男が何故、どうやってワシの事を知ったのか分からぬが、取りあえずワシは書状を拝読することにした





【サコン・シマ準男爵殿へ】

「初めまして、私はバイル・エゲレスと申します。私はマルギニア民主共和国総統であるフレイク・マルギニアの秘書を務めております。突然の御手紙、ご無礼いたします。今日私が手紙を書いたのは貴殿を我が国にスカウトするためです。貴殿の名はマルギニア民主共和国にも聞こえており、是非マルギニア民主共和国の繁栄にご協力のほどよろしくお願いします。」

【バイル・エゲエスへ】




ワシは書状を一読いた後、書状を握りしめ、そのままポイと投げ捨てた。アリーナはワシの行動に驚き、丸めた書状を拾おうとしたら・・・・


「辞めておけ、ロクな事は書いておらぬわ。」


「左近様、何事にございますか?」


そこへ与一が現れ、例の丸めた書状の方を向いた後、ワシの方へ向き直した


「差出人は?」


「マルギニア民主共和国のバイル・エゲレスだ。」


「ああ、なるほど。」


与一はマルギニアの名を聞いた途端、即理解したようだ。与一は丸めた書状を持って暖炉に入れて燃やした。書状は暖炉の火によって徐々に小さくなっていき、黒焦げになって燃えた。ワシはアリーナの方を向いた


「アリーナ、彼の国の書状が来ても迷わず処分しろ、奴らは国を奪った大盗人だからな。」


「は、はい、畏まりました。」


それからマルギニアから書状が届いたが、ワシは事前に屋敷の者たちにそのまま処分するよう命じた。ティア・ストロート(監視役)にも報告するなと口を酸っぱく忠告した。シグレにもティアの監視を厳重にするよう命じた。それから一週間が経ち、ワシの屋敷に一台の馬車が向かっていると【お庭方】より知らせが入った


「国境方面から馬車が来るだと?」


「はっ、何やらきな臭いですな。」


「心当たりは一つしかないな。」


「某も左近様と同様にございます。」


ワシらは一応、準備を進めると馬のいななきが玄関に響いた、使用人がワシの下へ訪れた


「旦那様、お客様にございます。」


「誰だ?」


「バイル・エゲレスと聞けば分かると・・・・」


「・・・・客間へ通せ。」


「畏まりました。」


ワシは身嗜みを整え、客間へ向かうと長椅子ソファーに座っていたのが書状を送り付けた男、バイル・エゲレス。見た目は緑髪の短髪、色白赤目で秀麗な美貌、身長は175cmほどの美丈夫である。向こうはワシの事に気付き、立ち上がって挨拶をした


「突然お尋ねして申し訳ありません、私はマルギニア民主共和国総統フレイク・マルギニアの秘書を務めるバイル・エゲレスと申します。」


「遠い所からわざわざよく参られた。」


ワシとしては歓迎はしていないが、取りあえずは適当に振って帰らせることにした


「して何用で参られたのか?」


「貴殿をスカウトしにです。」


「御断りいたす。」


ワシはすかさず辞退を申し出た。バイルは茶を一服し一息つけたところでバイルは理由を聞いた


「理由をお伺いしてもよろしいですか?」


「ワシは既にシュバルツ王国に居を構えており、貴国は飢饉と干魃の最中だと聞き申した。」


「噂にございます。」


「それに某は今の暮らしが気に入っておるのでな。」


「でしたらそれ相応、いやそれ以上の待遇を御約束します。」


「バイル殿、貴殿らの国のやり方では全ての民のための政を行っていると聞く。そのように依怙贔屓をしては民のための政とは言えぬのではないのか?」


「ふふふ。」


「何か可笑しい事でも申されたかな?」


「いいえ、我が国はより仕事に励む者にはそれ相応の待遇を与えております、自分達も負けじと奮起させるためです。」


「なるほど、自分の才と努力で出世する国作りという事にござるか。実に冒険心の富んだ国ですな。」


「ええ、どうです。興味が湧いたのではないでしょうか?」


「残念ながら某は宮仕えは苦手でしてな。」


「それは残念ですな、せっかくの才が地に埋もれてしまうとは実に勿体無い。」


「貴国には貴国の生き方があるように、某は某の生き方がござる。何度でも申し上げる、某は御辞退いたす。」


長い問答がようやく終わり、ワシは改めて辞退を申し出た。バイルは眼鏡をクイッと動かし、溜め息をつくと、ワシの方へ向き・・・・


「貴方とは良き仕事ができると思ったのですが残念です。」


バイルは立ち上がり、帰る準備をしていた。ワシは念のために見送りをしつつ、妙な動きをせぬよう監視を続けた。玄関口へ差し掛かると、そこへもう一台の馬車が我が屋敷の前に止まった。シュバルツ王国の紋様がある、馬車戸からは案の定、ルナが出てきた


「これはこれはルナ殿。」


「突然すいません・・・・そちらの御方は?」


ルナの視線は自然とバイルの方を向いた。ワシはすかさず紹介することにした


「あぁ、この御方はマルギニア民主共和国総統の秘書のバイル・エゲレス殿にござる、某をスカウトしに参ったのだ。バイル殿、この御方はシュバルツ王国内政官のルナ・キサラギ殿にござる。」


紹介されたバイルは苦笑いを浮かべつつ、ルナに挨拶をした


「初めまして、私はバイル・エゲレスと申します。」


「シュバルツ王国内政官のルナ・キサラギです。それにしても、わざわざサコン殿をスカウトをしに参られたのですか。」


「ええ、見事に振られてしまいましたが。」


「サコン殿は貴族にも興味を抱かない御方ですから当然ですけれどね。」


「ははは、では私は此にて。」


2人は会話しつつも互いに牽制しあっていた。バイルの方はこの場を離れたかったのかさっさと馬車に乗り、そのまま国境方面へと向かった。残ったワシと与一とルナは馬車を見送った後、ルナはバイルの事を聞いてきた


「スカウトと聞きましたが、それは本当なのですか?」


「ええ、某は宮仕えはこりごりだから辞退したのですが、しつこくてのう。流石は国を盗んだ大盗人の側近を勤めるだけの事はある。」


「随分と辛辣ですね。」


「ところでルナ殿、何用で参られたのか。」


「あぁ、そうでしたわね。ロミオ王太子殿下から伝言を伝えに参りました。」


「わざわざ伝言を送るために参られたのか。」


「ええ、殿下曰く【1度ならず2度も救ってくれた事を心より感謝する】と仰られましたので。」


「左様か、しかとお聞き届けしたと殿下に伝えてくだされ。」


「分かりました、では私は此にて。」


「せっかく参られたのだからお茶でも。」


「いいえ、片付けなければならない仕事もあるのでお気持ちだけでも受け取っておきます。」


「左様か、では道中お気を付けて。」


ルナは会釈をした馬車に乗り、王都に向けて出発した。今日ほど慌ただしい日はないと実感し、屋敷へ戻るのであった。一方、ルナはマルギニアが島左近に接近してきた事に少なからず危機感を抱いていた。幸いにも島左近が辞退したから良かったものの、もし受けていたらシュバルツ王国にとって大変な損失に繋がり兼ねないほどの事態である


「マルギニア、油断できないわね。」


島左近のスカウトに失敗したバイルは内心、残念に思いつつもシュバルツ王国に知られた事に危機感を抱いた。優れた人材を他国よりスカウトとするために隠密裏に行っていたが、運悪くシュバルツ王国の内政官に知られた事で向こうは人材流出を避けるために何かしらの手をうってくる可能性があるため、どうするか考えていた


「こうなれば同志フレイクに相談するしかないな。」



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