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163話:ピサロの憂鬱【2】

島左近清興だ、ワシと交流を持ちたい地主から交流の証として絹織物を送ると書状が送られたが、待てど暮らせど一向に来る気配がない


「やはり只の冷やかしであろうな。」


「して御返事は?」


「するまでもなかろう。もし向こうが焦れて書状を送ってきたら、絹織物は届かなかったと返事を返せば良いだけの事よ。」


ワシと交流を持ちたいと思う輩の中には邪な思いで近付いてくる者も多い。ワシとしては値打ちのある者であれば利用するが、そうでなければ放っておく、ただしワシに敵意を抱くのであれば、事を起こす前に潰すがな・・・・


「左近様。」


「ん。」


扉から気配を察し、会話を止めると扉からノック音がした。ワシが許可を出すと入ってきたのは荷物を持ったサスケだった


「如何した、それは?」


「はっ、賊が持っていた旦那様宛の贈り物にございます。」


「何?」


「どうぞお改めくださいませ。」


サスケは荷物を卓子テーブルに置き、与一が宛先を確かめた


「宛先は左近様宛、相手は例の地主にございます。」


「荷を開けよ。」


「はっ。」


与一は荷を手解くと箱が出てきた。箱を開けると中身は上等な絹織物が入っていたのである


「うむ、間違いなく絹織物だな。サスケ、この荷はどこで手に入れたのだ?」


「はっ、某が御領地へ帰還する道中で御領地に向かう一台の馬車が賊に襲われました。」


「それと何の関係がある?」


「はっ、その馬車に乗っていたのはロミオ王太子殿下の側にいたあのピサロとかいう側近の騎士なのです。」


「何?」


ピサロ、ワシに料理の毒味をするよう強要し、ロミオとルナから叱責を受け、自害しようとした騎士の小童か・・・・


「それで?」


「はっ、その騎士が賊と対峙していた時に賊の一人が馬車に侵入し荷物を奪い、森深く入りました。騎士と対峙した賊も荷物を奪ったのを見計らい、その場を退散致しました。荷物が奪われた事を知った騎士は賊の跡を追いかけましてございます。某は荷物を奪った賊を始末し、荷物を奪い返し宛先を確かめたところ、旦那様宛の荷物だと分かりました。」


「なるほど、そういうことか。それでその騎士はどうした?」


「荷物を優先したのでどうなったかは存じませぬ。」


「で、あるか。御苦労であった、それとこの事は他言無用だ。」


「ははっ、では此にて。」


サスケを下がらせた後、ワシは再び絹織物を手にして拝見した


「うむ、実に見事な絹だ。」


「左近様、御返事は如何致しますか?」


「返事は書くわ。」


「それであの小童の事は如何いたします。」


「どうなろうが知った事ではない。」


「左近様も人がわるうございますな。」


「ワシとて人間だ、毒味の借りは返さんとな。」


その頃、ピサロは荷物を取り戻すべく必死に探していた。盗賊たちも荷物が無くなった事で諦め、アジトへ戻るとピサロと盗賊たちは鉢合わせになった


「貴様等、荷物を返せ!」


「残念だが荷物はねえ、誰かに奪われた!」


「嘘をつけ!」


「嘘じゃねえ!」


「最早、問答は無用だ!切り捨ててくれる!」


ピサロはカッとなり剣を抜き盗賊に向かって斬りかかった。盗賊たちは数に任せてピサロを迎え撃ったが、剣術の上ではピサロの方が上であり、飛び道具を持っていない盗賊たちは続々と切り捨てられた


「こ、こいつつええ!」


「こうなら、ずらかるぞ!」


「まてえええええ!」


ピサロは逃さず、逃亡する盗賊たちを一人残らず討ち取る事ができたが、肝心の荷物は行方不明のままである。ピサロは荷物を失った事で途方に暮れていた、荷物が無くなった時点で任務は失敗、それどころか弁償をさせられてしまうのである


「今更、謝罪することなどできるか、このまま逃げよう!」


最早、弁償の事で頭がいっぱいになり、そのまま逃亡するのであった。ピサロは知らず知らずのうちに任務は成功していたが逃亡してしまっては後の祭りである。任務が達成した事がギルドにも伝わったが肝心のピサロは行方不明のままであり、困ったギルド職員は警備隊に通じてピサロの捜索願いを出し、探し人募集の張り紙をシュバルツ王国内に配布されたのである


「左近様、例の小童の捜索願いが出てますな。」


「うむ、大方任務が失敗した事で逃亡したんであろうな。」


「最早、騎士としての誇りはどこへ行ったのやら・・・・左近様。」


「うむ。」


ワシは与一と共に捜索願いの紙を見ながら、そう呟いた。すると扉から気配を察し、話を辞めた。扉からノック音がして、ワシは許可を出すと入ってきたのはシグレであった


「シグレ、如何した?」


「旦那様、例のピサロという騎士が匿ってほしいと言ってきていますが。」


「は?」


ワシは耳を疑った。何故、奴がここに来たのか、しかも匿ってほしい等とは・・・・


「それで奴はどこにいる。」


「屋敷の裏口にいます。」


「分かった。」


ワシは屋敷を出て裏口へ向かうと、そこにはボロボロの状態のピサロが身を潜めていた。ワシは呆れつつも声をかけることにした


「これはこれは騎士殿。」


「あ、サコン準男爵殿。」


ピサロは身を潜めつつもワシに返事を返した。その顔が後ろめたさでいっぱいであり、藁にも縋る思いでワシの下へ訪れたのは言うまでもなかった


「はあ~、騎士殿。荷物はワシの下に届いたぞ。」


「え!今、何と!」


「荷物はワシの下に届いたと申したのだ、中身は無事だ。」


それを聞いたピサロは腰を抜かし、その場で力なく座った。ワシは例の捜索願いの紙をピサロに見せ、任務は無事に果たした事、ギルドは報奨金を渡したいから捜索願いを出した事を伝えた。それを聞いたピサロはぼそぼそとつぶやいた


「何のために、私は、私は・・・・」


「まさかと思うが逃げたのか?」


ワシはサスケから荷物を受け取った後、ピサロの動向は気にも留めなかったが、捜索願いの紙がワシの下に届いたことで逃亡したと感じ取った


「・・・・私は僅かな退職金でギルドの会員になって、羽振りのいい任務があったから募集して、荷物を守ろうと懸命に働いたけど、荷物が無くなってどうしようか迷って・・・・」


「それで逃亡したと?」


ピサロは力なく頷いた。荷物はサスケが盗賊から奪い返し、ワシの下に届いたから良かったが、今にしておもえばピサロに悪い事をしたと良心の呵責が芽生えた。取りあえずギルドへ向かい、報奨金を受け取るよう勧めるが・・・・


「ギルドへ行けぬ、私は騎士にあるまじき事をしてしまった・・・・」


「・・・だったら騎士を辞めよ、別の道へ進むのも一興だ。」


「私に騎士を取ったら何が残ると言うのだ!私の適正は【騎士】しかなかったんだ。」


めんどくさい奴だなと思いつつも、このままここに居座られても困るし、取りあえずワシはこやつを気絶させることにした


「ふん!」


「がは!」


ピサロはまさか攻撃されるとは思っていなかったようで、あっさりと気絶した。与一に命じてピサロを【サコン町】のギルドの下へ運び出した。ワシらがギルドに入り、アメリアとマリーが出迎えた


「準男爵様、今日はどういった御用で?」


「こやつに報奨金を与えてやれ。」


「その御方は?」


「うむ、ピサロとかいう騎士だ、任務を達成したからな。」


「ああ、例の捜索願いの人ですね、分かりました。」


「うう。」


ピサロは目を覚まし、辺り一面を見渡すと、ギルドにいる事が分かった。アメリアが報奨金を持ってピサロの下へ向かい渡そうとした


「はい、報奨金です。」


「・・・・受け取れない。」


「任務は達成したのだ、受け取れ。」


「いらない・・・ぐっ!」


いらないと駄々を捏ねるピサロを締め上げ、ワシはピサロの顔を睨み付け・・・・


「何度も言わせるな小童こわっぱ、早う受け取れ。」


「は、はい・・・・・」


ピサロは怯えながら、ワシの説得を受け入れ、報奨金を受け取った。ピサロの処遇についてだが、ワシは例の失敗を教訓として、簡単な任務を受けつつ徐々にレベルを上げていく方向へ行くことを勧めた


「は、はい、が、頑張ります・・・・・」


ピサロは涙目になり、失禁しつつも了承した。その後、ピサロは心を入れ替えて、凄腕の騎士となるのは先の話である




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