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157話:橋の建築【2】

島左近清興だ、ワシは今、橋の建設の材料集めを視察している。建築費用はワシとマシリト商会のみが出しており、他の商会は様子見を決め込んで居る、ワシはこの時よりマシリト姉弟を御用商人にしようと思った。この者たちは自分の人生を賭けた大博打に身を投じているのだから・・・・


「カルナ・マシリト。」


「はい。」


「主は弟と共にマシリト商会を経営しているそうだが、両親は如何した?」


「両親は私たちが十代の頃に死にました。」


「すまん。」


「いいえ、私たち姉弟は両親が残した遺産を元手に一から商売の勉強をしてから独立し、準男爵様の御領地へ参りました。此度の橋の建設は私たちの人生をかけた大博打、必ずや物にして見せます。」


「(吝嗇りんしょくに励む商人共と違って、冒険心があるな。)」


人生をかけた大博打か、女子の身でありながら、ようやるわい。目先の利益に囚われ投資をしなかったあやつらにはできぬ行為だわ


「(それにこの女子も相当な場数を踏んでいるようだな。)」


先程のカルナの言い分にワシは思わず同情してしまったが商人として情を訴えるやり方の可能性もあるのでワシは表に出さず、冷静な対応をした


「果たして吉と出るか、凶と出るか。ワシも橋建築のための費用を出しているからな、言うなれば主等と同じ大博打にした身だ、その後はどうなるか天のみぞ知るだ。」


「そうですね。」


一方、投資をしなかった商人たちは会合を開いていた。会合の内容は橋を完成させた後の商売の事である


「橋の建設が開始したようですな。」


「ええ、橋の建築に投資したのはマシリト商会のみでしたな。」


「投資したからといって、準男爵様の心を動かせまい。」


「左様、金品を受け取らず突き返しましたからな。」


商人たちは島左近の御しにくさを知っていた。御用商人の座を手にいれるために多額の賄賂を送ったが、そのまま送り返され、未だに誰一人として御用商人になった者がいなかった


「そんな事はさておき、橋を完成させた後の王国の動きが気になりますな。」


「私の方も調べておりますが、国王陛下はなかなか口を割りませんからな。」


「うむ。」


「どなた様も知らぬようで。」


問題は橋を完成させた後の褒美が気になった。もし土地であれば、その土地の商売を展開することができるが、もし金品であれば島左近と投資をしたマシリト商会に分配され、自分たちの分はなしになる


「今からでも投資をしますか?」


「ううん。」


「褒美が何なのかも分からないのに投資などできるか!」


「そうだそうだ、もし投資して何もなかったら大損だぞ!」


「それに誰が責任を取るんだ!」


「静粛に、静粛に!」


商人たちは現世で言う【小田原評定】の如く、誰も責任は取らず、無駄に時間だけが過ぎ、いつまでも結論が出ずに橋の完成まで続くのであった


「やれやれ、随分と無駄な会議だな。」


「こんな会議をしている暇があったら投資したらいいのに。」


商人たちを見張っていた【お庭方】がよくもまぁ、無駄な議論を続けていることに飽き飽きしていた、一応、仕事なので冠詞は続け、交代しながら見張りを続けたが結局は決着がつかずにいた。【お庭方】の報告を聞いた島左近は呆れつつも、あの姉弟を御用商人の方がいいと確信したのである


「マシリト商会に決定だな。」


その頃、サスケたちは元ソビエット子爵領の調査をしていた。領民の様子はというと、目を覆わんばかりの悲惨さであった


「これは酷いですな。」


「ここまでするか普通。」


「左様ですな。」


「人間のする事じゃねえよ。」


元ソビエット子爵領に侵入した【お庭方】は思わず目を覆わんばかりの光景が広がった。領民たちは誰の目から見ても痩せ衰えており、王国の直轄地になってから、やっとまともな飯が食べられるようになったという。逃亡した領民が続々と戻り、ようやく田畑を耕す事ができるのだとか・・・・


「始末して良かったわ。」


「ええ、あのブクブク太った豚の最期、滑稽でしたな。」


「あ、あれを!」


「ん、どうした?」


サスケは領内を調査するとある物を見つけた。一見すると雑草のように見える植物、【青芋織物】に使う青芋だった


「おお、ここにも青芋があったのか、実に勿体ない。」


「領民たちからすればただの雑草にしか見えなかったのでしょう。」


「あぁ、旦那様や頭領から聞かされる前は、まさか織物作りに使われるとは知らなかったからな。」


恐らくただの雑草として放置されたのであろうな、かくゆうサスケもただの雑草と思っていたが、主である左近と【お庭方】の頭領である与一がこの雑草を知っていたらしく、まさか織物を作るとは夢にも思わなかったので、見つけて良かったと思う。標高86mほどの小さな山を調べたが、山菜と山芋くらいしかなかったのが残念だ。まあ、ここに【青芋】の畑を作れば問題はないが・・・・


「早速、旦那様に報告だな。」


サスケは調査を終えて、左近の下へ帰還し元ソビエット子爵領の事を報告した。領民の状態、田畑の広さ、山の産物、そして青芋の事も・・・・


「ほお、青芋があったのか、それは朗報だな。」


「はっ、それで他の商人たちは?」


「無駄な議論に時を費やしておるわ。おまけに投資する気はなさそうだ。」


「左様で。」


青芋の件は置いといて、ワシは再び橋の視察に来た。大工たちが設計する橋は、長さは13m、幅は10m、混擬土コンクリートで作られる橋である。橋としては小さい方で、アーチ「上方へ弓形に曲がった梁」橋という種類の構造である。ワシも実際にアーチ橋を見た事があるが、南蛮の技術の凄さを垣間見えた瞬間であった。昔の事は置いといて大工の棟梁であるゴンザがワシの下へ訪れ、張り切った様子で豪語した


「準男爵様、長さ15m未満の橋はあっし等の腕があれば短期間でできます!」


「随分な自信だな。」


「あっしが担当したコンクリートアーチ橋の中で一番小さい方です、まあ大船に乗ったつもりで任せてください!」


「そうか、では任せた。」


「分かりやした、お前ら作業に取り掛かれ!」


「「「「「オオオオオオオオオ!」」」」」


ゴンザの号令の下、職人たちが作業を開始した。多くの人足たちが動員され、混擬土コンクリート作りが行われていた。堤作りに活用された混擬土コンクリート、再び使う事になる


「左近様、屋敷へ戻りましょう。」


「そうだな、ワシらにも仕事があるわ。」


橋はゴンザらに任せ、ワシらは屋敷へ戻る事にした。するとそこへ会合が終わったのか、商人たちと出くわした。奴等はいつもように作り笑いをしワシらを出迎えた


「これは準男爵様、ご機嫌麗しゅう。」


「うむ。」


「橋の建設の方は始まったのですか?」


「あぁ、始まったぞ。」


「楽しみですな。」


「(楽しみであっても貴様らには任せぬぞ。)」


ワシは改めてこやつらに御用商人を任せなくて良かったと常々思った。橋の完成の暁にはこやつらの前でマシリト商会を優遇し、マシリト姉弟を御用商人に認定しよう。さすれば連中の困惑した顔が嫌でも目に浮かび、ついにやけてしまう


「どうかなさいましたか?」


「いいや、何でもない。」


イカンイカン、ワシとしたことがつい、にやけてしまった。ワシらは商人たちと別れ、屋敷へと戻った


「(橋の完成が楽しみだわい。)」




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