155話:マコトの最期
誤字報告ありがとうございます
島左近清興だ、突然だが訃報が舞い込んできた。ワシの領土へ向かう路地でヤルク・ソビエット子爵とその部下たちが何者かに襲われ、全員死亡を確認した。現場近くには犯人が残したとされる虎の紋様がついた銅板のみである。それを聞いたアリーナは長椅子に座りながら、その事を知ったのである
「物騒ですわね、旦那様。」
「全くだ(やったのはワシだけどな。)」
無関係を装いつつも、【お庭方】を放ち、ヤルク・ソビエットらを始末した事で、面倒な輩がいなくなってくれたお陰でワシはあの輩に因縁をつけられず、かつ奴の圧政に苦しむ領民たちも安堵の涙を流しているであろうな・・・・
「(【虎の牙】には感謝せねばな。)」
例の銅板は国王ロバート・シュバルツの下に送られた。忘れもしない虎の紋様のついた銅板に眉を潜めた
「いつ見ても忌々しい銅板だ。」
銅板を見た瞬間、瞬時に【虎の牙】の仕業だと悟り、同時に例の襲撃事件を思い浮かんだ。忘れたくても忘れられない過去だ、ロバートは心の中で思っていると側近が書類を持ってロバートに拝謁した
「陛下。」
「何だ?」
「はっ、ソビエット子爵家の関する報告書が届きました。」
「これへ。」
「はっ。」
側近が報告書をロバートに渡し、それを聞いた拝読するとロバートは再び眉を潜めた
「これは本当か?」
「はい、間違いなく。」
報告書に書かれていたのはヤルク・ソビエットの悪行三昧が書かれていた。先代の養子として子爵家を継いだが、領民に苛税を取り立て、贅沢三昧な暮らしをしていたとの事である
「ポスト子爵を呼べ。」
「畏まりました。」
ポスト子爵というのはヤルク・ソビエットの子爵就任をロバートに推薦した人物であり、共に成金貴族である。待っていると側近に連れられてアイザス・ポスト子爵がロバートに拝謁した
「陛下、御召しにより参上致しました。」
「アイザス、これを読め。」
ロバートはアイザスの下に例の書類を投げつけた。ポスト子爵は戸惑いつつも、例の報告書を拾い、拝読すると顔が青ざめ始め、弁解し始めた
「へ、陛下、違うのです!まさかヤルク殿がこのような事をするとは・・・・」
「知らなかったと申すのか?」
「はい、天地神明に誓って!」
「お前はこう申したな、先代同様、優秀だから取り立てて欲しいと、もし不足あれば自分の家を返上しても良いと声高々に申して居ったな。」
ヤルク・ソビエットがもし何かしらの不祥事を起こせば、推薦したポスト子爵家も返上すると豪語した。今まさにそれが行われようとしているところ、ポスト子爵は目を泳がせながら、しどろもどろになった
「・・・・な、何の事やら。」
「お前たちも聞いていたよな。」
「「「「「はい、しかと耳に。」」」」」
ロバートだけではなく側にいた側近たちもしっかりと聞いており、もはや言い逃れができないと悟ったのか、その場で腰を抜かした
「連れていけ。」
「ははっ!」
ポスト子爵はその場で連れていかれ、そのまま牢に入れられた。ソビエット子爵領とポスト子爵領は国王の命により王国へ返上され、両家は断絶となった。子爵家の領土は王国の直轄地となり、逃亡した領民たちは続々と帰還した
「これでめでたし、めでたしだな。」
「襲撃した賊は【虎の牙】だと国内外に大々的に公表致しましたな。」
「あぁ、マルギニアはどう出るかだな。」
その頃、マルギニア民主共和国にもシュバルツ王国で起きた【虎の牙】による子爵一行の襲撃事件がフレイク・マルギニアの耳にも入った。マルギニアはこの襲撃をマコト・アララギによるものだと瞬時に察知した
「マコト・アララギ、あの大馬鹿者が!」
フレイク·マルギニアは目の前にあったコップを床に投げ捨て、コップは割れて破片が飛び散った。部下はすぐに割れたコップと破片を回収し、側近のバイル・エゲレスがフレイクを宥めた
「落ち着いてください、同志フレイク。」
「落ち着けるか!」
「同志フレイク、もし奴がシュバルツ王国に追われ、この国に戻って来た場合の事を考えなければいけません。」
バイルは子爵一行を襲撃したマコト・アララギをどう処分しようか考え、ある決断に至った。そしてバイルはフレイクに耳打ちした、それを聞いたフレイクは驚きを隠せなかった
「同志バイルよ、それはあまりにも無慈悲ではないか。」
「同志フレイク、国の未来のためにやるしかありません!マコトが子爵を襲い、殺害した事は明白なのです。どうか、御決断を!」
「少し、考えさせてくれ。」
フレイク・マルギニアは同志たちを下がらせた後、一人部屋で悩み続けた。国の存続のためにマコトを排除するか、しかしマコトに心酔する部下たちが黙っていないだろう、だからといって受け入れればシュバルツ王国に狙われるのは確かである、今のマルギニア民主共和国は飢饉と旱魃の真っただ中であり、戦争になったら勝てる見込みがない
「マコト、許せ。国のためだ。」
フレイクは涙を流しながら苦渋の決断を下した。フレイクはすぐにバイルを呼び出し、マコト・アララギを亡き者にするよう密命を下した
「同志バイルよ、しくじるでないぞ。」
「お任せを、同志フレイク。」
一方、マコト・アララギはというと、たまたまマルギニア民主共和国に立ち寄る馬車の一団と出会い、送ってもらう事になった。馬車に揺られて過ごしていると一人の旅人がマコトに話しかけた
「ちょっといいかい。アンタ、マルギニア民主共和国に行くらしいが何しに行くんだい?」
「ん、ちと野暮用でな。」
「あそこは飢饉と旱魃で大変だって聞くぞ。」
「知っている、それでも行かねばならない。」
「ふ~ん。」
馬車に揺られながら、マコトは同志であるフレイクを裏切り、仲間の仇を討つためしシュバルツ王国に向かった。しかしマルギニア民主共和国で飢饉と旱魃が起きている事を知って居ても立っても居られず、敵討ちを断念して、国へと帰還することにしたのである
「(どう弁明するか。)」
マコトの心中にあるのは、やはり仲間の敵討ちを優先し、国を捨てた事、同志であるフレイクにどう弁明するか考えていたが、かつての仲間が誠心誠意謝罪すれば解決できると楽観視してもいたし、それでいこうと考えていた
「(同志フレイクなら分かってくれるはずだ。)」
馬車はようやくマルギニア民主共和国の国境に到着し、マコトは送ってくれた事の礼を述べた後、国境のいた警備兵に声をかけると警備兵はマコトの出現に驚きつつも、迎え入れた。マコトは中にいた警備兵に案内され、旅の垢を落とすために風呂に入るよう誘った
「うむ、それはいいな。」
警備兵の誘いに乗り、風呂に入ることにした。服と持ち物を全て置いた後、風呂に入り、ゆっくりと旅の疲れを癒した
「ふう~、生き返る。」
マコトは湯に浸かった後、一旦、風呂から上がり、石鹸と手拭いを使って体を洗い始めた。体を石鹸で洗い、頭も同時に頭を洗い始めると、背後に殺気を感じた、すると一人の男がマコトに斬りかかった
「うおおおおおお!」
「くっ!」
マコトは何とか避け、近くにあったタライを男にぶつけた。男はうめき声を上げ、その場を離れようとしたが、そこへ複数の男が襲い掛かり、マコトは体術を使い、抵抗をしたが多勢に無勢、その場で刺された
「う、裏切り者が・・・・」
マコトはそう言い残し、その場で息絶えた。マコト・アララギは仲間の敵討ちのために国を捨て、運悪く、情勢に巻き込まれ最期は仲間によって無残に殺されたのである。マコト・アララギを始末した事をフレイクとバイルの耳に入り、密かに埋葬したのである




