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153話:シリウス

島左近清興だ、突然だがアリーナは産気付いてから時が過ぎ、男児を出産した、母子共に無事である


「アリーナ、でかした。」


「ありがとうございます。」


ワシにとっては第3子(アルグレンとサリーナの弟)である。アルグレンとサリーナも成長し頭髪の色は濃い茶色の毛並みで、青紫色の瞳をしていた。名前はシリウスと名付ける事にした


「左近様、おめでとうございます。」


「「「「「おめでとうございます!」」」」」


「ああ、ありがとう。」


その後、お決まりの如く、御祝いの品が届いた。使用人たちはいつものように運んでおり、ワシも御礼の書状を書かねばなるまいな。ワシは利き腕を動かしながら、執務室へ向かう途中、サスケが慌てた様子でワシの下に駆け寄った


「サスケ、如何した?」


「はっ!取り急ぎお知らせいたします。」


「どうした?」


「はっ、シュバルツ王国の紋様のついた馬車と騎兵隊がこちらへ向かっております。」


「何。」


シュバルツ王国の紋様がついた馬車と騎兵隊といえば王族あたりか、一体何用あって来たのか


「厄介な時に来たものだ。」


「如何致しますか?」


「王族であれば出迎える他はない。ただし偶然を装え。」


「ははっ!」


ワシらは与一らを呼び、サスケの報告を聞かせた後、手の空いている者をかき集め、偶然を装いつつ、一行を出迎える準備をした。すると外が騒がしい事に気付き、玄関から出るとそこには馬を降りた騎士が立っていた。騎士はこちらに気付き、駆け寄った


「サコン・シマ準男爵殿か?」


「いかにも。」


「ユリヤ大公殿下が御忍びでここを通られる、速やかに出迎えられよ。」


「心得え申した。」


どうやら馬車に乗っているのはユリヤ・シュバルツ大公殿下のようだ。ワシの他に与一、ウルザ、ティア、使用人等が出迎える事にした。待っているとそこへ騎兵隊と共に一台の馬車がこちらに近付つき、ワシらの前に止まった。馬車戸が開き、出てきたのはユリヤ・シュバルツ大公殿下、ワシらは平伏した


「久し振りだな、準男爵。」


「はい、御無沙汰しております。」


「狩りの帰りで寄ったついでにここへ参った。」


「畏れ入ります。」


「ん、あの荷は何だ。」


ユリヤが指差したのは息子の出産祝いの贈り物を乗せた荷車であった


「畏れながらあの荷は某の息子の出産祝いの品にございます。」


「ほぉ~、そなたの妻が出産したのか。」


「左様にございます。」


「うむ、それなら私も出産祝いをやらねばな。」


「いえいえ、御気持だけで十分にございます。」


「遠慮は無用だ、あれを持ってこい。」


ユリヤは騎士に命じて持ってこさせたのは、大きな猪だった。体長は160cm、体重は150㎏という大物である


「この猪をどこで?」


「こやつは近隣の畑を荒らしていた奴でな、先程仕留めたところだ、これをそなたの息子の出産祝いとして与えよう。」


「ははっ!有り難き幸せ!」


ワシの下に新鮮な猪の躯が届けられた。ワシの目から見ても大物である。するとユリヤはティアの姿を見かけ声をかけた


「そこにいるのはティア・ストロートではないか。」


「ははっ、お懐かしゅうございます!」


「しっかりやっておるか?」


「ははっ!お蔭さまにて。」


「畏れながら、ティアは気配りもでき、我等も助かっております。」


「そうか、王宮で選りすぐりの侍女から選んだからな。」


ユリヤは侍女の役割をしっかりと果たしているティアを褒めつつも、やはり監視役として機能しているのかが心配だった。今のところは特に変化はなさそうだが、ルナはサコン・シマは食えない男と言って居った。報告ではこの男は多くの忍者を召し抱えていると聞く、きっと監視役ティア・ストロートきっとの正体にも気付いている。気付いているがゆえに、あえて放置している、よくよく食えぬ男よ・・・・


「殿下、そろそろ。」


「うむ、ではな。」


「ははっ!道中、お気をつけて。」


ユリヤは馬車に乗り、そのまま王都へ向かった。ワシらは一行の姿が見えなくなるまで見送った後、ユリヤから貰った猪を捌くことにした。【お庭方】の中に猪の解体に長けた者に任せ、ワシは執務室にて御礼の書状を書くため、屋敷へ戻った。数日後、ユリヤは王都に到着し、自分の屋敷へ戻った


「お帰りなさいませ、殿下。」


「ああソロモン、何か変わった事はなかったか?」


「ございません。」


「であろうな。」


ユリヤは私室にて、くつろぎつつ報告を聞いた。例の【虎の牙】による襲撃が嘘のように平穏な日々が続いた。それと同時に【マルギニア民主共和国】という国が創設された、国王が存在しない新しい国家、どうも臭いな・・・・


「マルギニアに動きはあったか?」


「特に目立った動きはございません、それが何か?」


「いや、なければよい。」


その頃、マルギニア民主共和国の国会議事堂(元王宮)では総裁であるフレイク・マルギニアはある問題に直結していた


「飢饉が発生したか。」


「はい。」


マルギニア民主共和国ではここ最近、雨が降らず日照りが続いていた。マルギニア民主共和国が誕生する前から悪政によって国は疲弊しており、フレイクは減税をし治安の強化を進め国は再生する途中で起きた天災、各地で干魃が起き創立してからは日が浅く、最大の危機が迫っていた


「同志フレイク、各地で飢饉・干魃が起き食糧を巡って争いが起きております。」


側近であるバイル・エゲレスから報告を受けたフレイクは頭を抱えた


「食糧が不足し国庫を調べても空だ。」


「同志フレイク、何か手を打たねば民は疲弊し反乱致します。」


「税金を免除し、官民問わず質素倹約に務め贅沢を禁じ、兵も田畑を耕し、特産品の奨励、各地で用水路と堤の建設するほかはあるまい。」


フレイクの編み出した方策は【税金の免除】【質素倹約】【屯田兵】【特産品の奨励】【用水路と堤の建設】等を行う事にした。問題の食糧についてだが・・・・


「同志フレイク、食糧の方は如何致しますか?」


「魚や獣の肉、山菜や野草や木の皮で餓えを凌ぐしかあるまい。」


「同志フレイク、他国から食糧を貰い受けるということは・・・・」


「同志バイル、他国に弱味を見せてはならないのだ。」


「・・・・畏まりました。」


フレイクは直ちに布告をした、兵や民たちは困惑しつつも言う通りに指示に従う一方、不満を持った兵や民たちは国を捨てて他国へ落ち延びる者も現れた。本来は兵を統率するマコト・アララギがやるのだが、奴は出奔しているため兵の統率がままならない


「(くっ、このような大事な時に敵討ちなどしている場合か。)」


フレイクは私怨で国を出ていった同志マコト・アララギに不満を抱きつつも、何とか国難を避けようと粉骨砕身で働いた。一方、マコト・アララギはマルギニア民主共和国が飢饉や干魃に遭っている事を知り、急遽帰国することにした


「今は同志たちを助けねばならぬ、敵討ちはまた今度だ。」


流石のマコトも敵討ちをしている場合ではないと悟り、国へ帰国しようとしたが天性の方向音痴が災いして国に帰れなくなったのは言うまでもなかった


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