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150話:父と娘

ここはブレメルン王国王宮、ルイスの実父であるロレンス・ブレメルンとマーリーの実父であるカーリー・サラシリア伯爵が応接間にいた。2人は互いに険しい表情をしつつ、王太子と側近らが向かった時の資料を拝読していた


「陛下、私はこれよりシュバルツ王国へ参ります。」


「カーリー伯爵よ、まだ早いのではないか。」


「ルイス王太子殿下は身分を偽ってまでシュバルツ王国に入国した事は明白にございます。」


「伯爵よ、ワシはもうあやつの事は諦めた。あやつは散々と問題をやらかしてしまった。マーリー嬢には申し訳ない事をしたと思うておる。カーリーよ、そなたはルイスよりもマーリー嬢の方を見つけたいのではないのか?」


「・・・・はい、メイドのモリーとの間にできた私の最愛の娘ですから。此度の婚約にも反対にございました。」


「・・・・すまない。」


モリーというのは、マーリーの実母でありカーリー伯爵とは幼少の頃からの幼馴染であり、男女の関係であった。政略結婚で結ばれた本妻の嫉妬を恐れて、モリーと腹の中にいたマーリーを領地内の田舎町へ身柄を移し、マーリーを出産したのである。本妻との間に子供はおらず亡くなったため、安心したのも束の間、モリーが亡くなったと知った時は愕然としたが残された娘のマーリーを引き取ったのである。本当の事を言うと王太子との婚約には反対であり、何度も婚約解消を願ったが叶わず、婚約破棄と国外追放が起きたのである


「確証はあるのかも分からぬのだぞ、本当にマーリー嬢がシュバルツ王国にいるのかすらも分からないのに。」


「王太子殿下が身分を偽ってまで向かったのです。必ずやマーリーがいるはずです。」


「・・・・分かった。シュバルツ王国との交易に関する会談がある、大使としてそなたを任命する。」


「感謝いたします、陛下。」







島左近清興だ、ブレメルン王国王太子のルイス・ブレメルンと側近らを始末し、証拠類は全て廃棄し痕跡もなくした。あれから何事もなく平穏であり、マーリー・サラシリアはいつも通りに働いている。ワシは様子見がてらマーリー・サラシリア改め、マリー・スターズと対面していた


「マリー、調子の方はどうだ?」


「はい、御蔭様にて。」


「うむ、あれから王太子に関する情報が入ってこないが一応、警戒は続けた方がいいぞ。」


「はい。」


既に始末しているが、今後もブレメルン王国からの追手が来る可能性があるから油断はできない。それから1週間後にブレメルン王国の大使がシュバルツ王国に入国した


「ブレメルン王国の使者が?」


「はっ!どうやら例の王太子の事やもしれませぬ。」


「うむ、念のためにマリーにも伝えるか。」


「御意。」


与一は早速、ギルドへ向かいマーリー・サラシリアにブレメルン王国の大使が入国した事を伝えた


「それで私はどうしたら、宜しいですか?」


「うむ、今まで通り仕事をしてもらうぞ。」


「え、仕事してもいいのですか?」


「下手に休めば怪しまれるからな、そなたはマリー・スターズとして活動して貰うぞ、勿論そなたの役者としての腕の見せ所だがな。」


「不安ですがやってみます。」


それから数日後にブレメルン王国の大使がワシの領地に訪れた。ワシと与一はブレメルン王国の大使であるカーリー・サラシリア伯爵に応対した。サラシリア伯爵ということはマーリーの実父で間違いない、まさか父親が大使として来訪するとは予想外であった


「ようこそお越しくださいました、サラシリア伯爵閣下。」


「うむ、歓迎痛み入る。」


「伯爵閣下、お泊まりになる宿は既に手配しておりますので、どうぞこちらへ。」


「1つだけ聞きたい事がある。」


「何でございましょう?」


ワシらはカーリー・サラシリア伯爵を宿へ案内しようとしたところ、サラシリア伯爵から止められ、質問をされた


「この土地に複数人の冒険者の一行が訪れてはいなかったか?」


「仕事を探しにギルドに寄ることもあれば、この土地で宿泊し食糧を購入することもございます。」


「そうか、ではギルドに寄っても構わないか?」


「構いませぬが・・・・」


ワシらは内心、ドキッとしたが下手に断って怪しまれるよりは堂々とした方が良いと思いギルドへ案内させた。ワシは読唇術を使い、与一に命じてマーリーに会わせないようにした


「では某は先にギルドへ赴き、出迎える準備をいたします。」


「うむ、頼むぞ。」


「はっ!」


与一がマーリーに伝えるべく、先に行かせた。まさかギルドに寄りたいとはワシも思わなかったので急遽、変更することにした


「別に出迎えなぞ、不用だぞ。」


「いいえ、ブレメルン王国の大使、ましてや伯爵閣下と知らずに無礼を働く者がいるやも知れませぬゆえ。」


「ふむ、分かった。」


与一は先にギルドへ入ると、ギルド内には客はおらず受付はマーリー・サラシリアだけで、アメリアは休みであった。与一はマーリーにカーリー・サラシリア伯爵が来るのを知らせた。知らせを聞いたマーリーは驚きを隠せなかった


「まさか父上が・・・・」


「如何いたす、会うか?」


「いいえ会いません、もし会えば連れ戻されます!」


「うむ、では。」


与一が命じると、ギルド職員の服装をした【お庭方】の者が現れた。念のために用意しておいたのである。マーリーはギルドの大会議室に避難させた後、与一が【お庭方】の者と共にカーリー・サラシリア伯爵を出迎えた


「ようこそお越しくださいました。ささ、こちらへ。」


カーリー・サラシリア伯爵はギルドに入ると、他に客はおらず殺風景だった


「ギルドはいつもこんな閑古鳥が鳴いているのか?」


「いいえ、今日はたまたま静かなだけにございます。」


「うむ。」


サラシリア伯爵はギルド内を見渡しつつ確認し終えたところ、ギルドを退出した。ワシらは内心、ホッとしながらサラシリア伯爵を宿へと案内させることに成功した。マーリーはというと、父がギルドを出たのが分かった途端に安心したのか、すぐには立ち上がることはなかった


「マーリー、父親が嫌いなのか?」


「いいえ、少々過保護なところがあってどこへ行ったかも報告せねばならないので・・・・」


なるほど、父親特有の愛情と独占欲といったところか、まあ、愛した女子との娘なら尚更か。宿に入ったサラシリア伯爵は用意された部屋にて休息を取った


「マーリー、一体どこへいるんだ。」


国王に無理を言って入国したが、どこにいるかが分からない。もし見つけたら連れて帰ろうと考えていた。カーリーとしては平民の生活させるよりも貴族の生活の方が幸せと考えており、王太子探索より娘の探索に神経を磨り減らしていた。一方、マーリーは父には早く国へ帰って貰いたいという思いが強くなっていった


「(お父様、貴族だけが幸せではないのです。)」


マーリー自身、貴族の生活は窮屈そのものであり、平民だった頃の方が幸せに感じていた。大変ではあるが自由があって、生き甲斐というものを感じることができた


「はぁ~、早く国に帰って欲しいわ。」


宿で1泊したカーリー・サラシリア伯爵はそのまま王都へ向かった。伯爵の乗る馬車には追跡動物を忍ばせ、逐一監視することにした。もし何か動きがあれば対応できるようにしておいた


「与一、ここからが正念場ぞ。」


「御意。」


数日後、ブレメルン王国の大使として王都に訪れたカーリー・サラシリア伯爵はシュバルツ王国国王のロバート・シュバルツに拝謁した


「ブレメルン王国大使、カーリー・サラシリア、シュバルツ王国国王陛下に拝謁致します。」


「うむ、面を上げられよ。」


「ははっ!」


「うむ、交易についての会談は明日行う予定だ、それまでは屋敷にて休まれるが良い。」


「有り難き幸せにございます。」





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