142話:遊学
島左近清興だ、アナキン・ブリッジスやホルス・カイザス伯爵といった者たちと交流をしつつ、領地の経営に専念していた。それから4日後、カイザス伯爵から早便にて書状が届いた。早便を寄越すということは何か問題が発生したということか
「それでカイザス伯爵は何と?」
「メアリー伯爵令嬢を預かって欲しいとの事だ。」
「それはまた何故?」
「うむ、詳しくは書かれておらぬが容易ならぬ事態であることは確かだ。与一、追跡動物を手配せよ。」
「はっ!」
早速、追跡動物【カラス&蝶】を放ち、カイザス伯爵邸へと飛ばした。通常よりも速い速度で駆け抜け、2日でカイザス伯爵邸に到着した。カラスは蝶を放ち、屋敷内に侵入すると、一部屋にはホルス、ローナ、メアリー、オルタら4人が話し合いをしており、話を聞くとワシの予測していた通り、ただ事ならぬ事が起きていた。全員、黒髪紫眼の色白の美男美女であった、あれがホルス・カイザスのようだな、見た目は40代前半の黒髪紫眼の色白の美中年だ
「いいかメアリー、もしサコン準男爵から返事が来たら、すぐに向かう準備をするんだぞ。」
「旦那様、何の理由も書かずにメアリーを預けてくれなどと、向こうが受け入れるとは思えませぬ。」
「では聞くが、メアリーが冤罪をかけられた上で断罪されるだけではなく、カイザス伯爵家は白い目で見られ後ろ指を指される生活を送るのだぞ!」
「ですが、知り合って間もない御方に娘を預けるなど・・・・」
「【稀代の名士】と呼ばれるほど清廉潔白との評判の御仁だ、きっと受け入れると私は信じている。」
「お父様・・・・」
「まずは返事を待つしかない。」
それを聞いたワシは溜め息を付きつつ、与一に命じて紙と筆を持ってくるよう命じた
「左近様、返事は何と?」
「ああ、ほとぼりが冷めるまで預けるとしたためる。」
「宜しいので?」
「うむ、まずは皆を集めよ。」
「ははっ!」
ワシは与一に命じて皆を集めさせた。ワシはカイザス伯爵が寄越した書状の事を皆に聞かせた後、案の定、皆は半信半疑の心境であった。そこへサスケが真っ先へ聞いてきた
「旦那様、もしかして例の侯爵子息と上手くいっていない事が関係しているのでございますか?」
「その可能性もありえる。」
「旦那様、何の話をしているのですか?」
「ああ、そうであったな、まずそこから話さねばな。」
アリーナは何のことか分からずワシを尋ねて来た。ワシはカイザス伯爵と知り合った経緯を話すことにした。【お庭方】の証言もあり、皆は納得をし、ほとぼりが冷めるまでその令嬢を預ける事にした
「すまなかった、今まで話さなかったのは、機密も含まれておったからな。」
「重々承知しています、他国とはいえ貴族同士の婚約は家と家の繋がりを重視しますので、今回の件に関しては伯爵家令嬢に同情いたします。」
元伯爵家令嬢であるアリーナは話を聞き、その伯爵令嬢に同情した、家のために婚約したにも関わらず、当の婚約者は他の女に現を抜かす、同じ女としてこれほど腹が立つ事はない。アリーナだけではなくウルザやシグレやティアもその男に嫌悪感を抱き、全員感情を隠し切れなかった
「そうです!そんな馬鹿婚約者なんか、こっちから切り捨ててやりましょう!」
「旦那様、命あればそやつを亡き者に致します。」
「旦那様、その御方を助けましょう!」
「分かっておるわ。サスケ、そなたは足が素早い【お庭方】数名を率いて、この書状をカイザス伯爵に渡してきてくれ。」
「はっ!」
ワシは既にしたためた書状をサスケらに渡した後、すぐに発った。サスケらは持ち前の俊足で全速力で国境を抜け、4日でカイザス伯爵邸に到着した。サスケらはすぐに門番に自分たちはサコン・シマの使いであることを伝え、書状を渡した。幸い、カイザス伯爵は在宅ですぐにサスケらを招き入れた後、書状を拝読した
「サスケとなら、本当に娘を預かってくれるのか?」
「はっ!我が主は万事承知の上で御引き受け致すと申しております。」
「理由は聞かないのか?」
「我が主は既に御存じにございます。」
それを聞いたカイザス伯爵は背筋が凍った。既に我が家とボルゾン侯爵家に問題が発生している事を察知しているのかと、しかし他に引き受けてくれる者はこの国にはいない、交流を始めたサコン・シマに賭ける他はないと諦め、娘を託すことにした。サスケから見たメアリーの見た目は身長が155cmほどで、黒髪の長髪、色白紫眼の10代後半の美少女であった
「そうか、では娘をお願いしたい。」
「承知致しました。」
「メアリー、しばしの別れだ。くれぐれも粗相があってはならぬぞ。」
「はい、お父様。」
「メアリーにくれぐれも風邪は引かないようにね。」
「お母様もどうか御元気で。」
「姉上、御元気で。」
「オルタも気をつけて。」
表向きは遊学を理由にメアリーは学校を休学し、オルタも休学し領地へ避難する手筈となっていた。遊学の事はボルゾン侯爵家にも伝える予定である
「メアリーの身の回りの世話や護衛にはサナとパドックをつける。」
メアリーの近くにいた身長160cmほどで黒髪碧眼の20代前半の色白美人のメイドのサナ・ミジックと身長180cmほどで黒髪褐色肌で20代半ばの強面筋肉質の寡黙な騎士であるパドック・ライブが神妙な面持ちで控えていた
「では頼んだぞ。」
「「ははっ!」」
「サスケとやら、道案内を頼むぞ。」
「はっ、御一行は無事に我が主の下へ届けます。」
一行は早速、馬車に乗り、サスケの案内でシュバルツ王国、島左近の治める領土へと旅立った。それを黙って見送るホルス、ローナ、オルタらは娘(姉)の無事を祈った
「さてボルゾン侯爵家にも知らせるか。」
カイザス伯爵は手紙を書き、ボルゾン侯爵邸へ送った。手紙は執事長であるポルコの手によってカイルの両親であるオールド・ボルゾン侯爵とナミエ・ボルゾン侯爵夫人に渡った
「この時期にシュバルツ王国に遊学とは。」
「旦那様、カイルにこの事を伝えますか?」
「そうだな。ポルコ、カイルはどうした?」
「カイル坊ちゃまは出掛けております。」
「はぁ~、どうせ女の所へでも行っているのだろう。」
「少しは婚約者と仲良くしてほしいわ。」
2人は息子の女癖の悪さに頭を痛めていた。婚約者がいるにも関わらず、女遊びを続けている。何度も諫めても梨の礫で終わったのである
「旦那様、坊ちゃまがお帰りになられました。」
「父上、母上、ただいま戻りました。」
執事長のポルコがカイルを連れてきた。カイル・ボルゾンの見た目は赤髪の短髪、色白碧眼、身長は182cmほどの十代後半の美男子である。カイルが帰ってきた事でメアリーの遊学の事を伝えると・・・・
「分かりました、では失礼します。」
もはや興味なさげで部屋を退出するカイルの姿に2人は溜め息をついた
「これは婚約解消した方がよさそうだな。」
「そうですわね。」
一方、ここはシュバルツ王国の王宮、監視役の報告書を読んでいたロバートは溜め息をついた
「はぁ~、サコン・シマは余程の御人好しか、それとも何か考えがあっての事か・・・・他国の令嬢が奴の領地に遊学するとは・・・・」
ロバートは何故、サコン・シマがジュリアス王国の伯爵令嬢を領地に招いたのか気になった。報告書によれば交流の一環に伯爵令嬢が奴の領地に遊学すると書かれていたが、それだけで奴が他国の令嬢を迎え入れるとは思えない
「とりあえずは様子見だな。」
ロバートは国際問題にならないように、引き続き監視を続けるのであった




