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141話:稀代の名士

島左近清興だ、アナキンとの交流会を済んでからも書状の遣り取りは続いている。アナキン曰く、世間でのワシの評判は【稀代の名士】と持て囃されているらしい。理由としては数々の功績をあげつつも、仕官もせず、貴族にもならない、その清廉潔白さからそう呼ばれているらしい


「ワシは別にそういうつもりでやっているわけではないのだがな。」


「世間とはそういうものでございますよ、左近様。」


「分かっておるが、これはなかろう・・・・」


ワシは机に置かれている書状の束を注視した。全てワシとの交流を持とうとするものたちである。堤の修繕費を多く出した事で【準男爵】となったアナキンとの交流をどこから聞き付けたか知らないが寄越してきたのだ


「左近様、念のために拝読しては如何か?」


「あの束をか。」


「御意。」


「はぁ~。」


ワシは溜め息をつきつつ、書状の束を一つ一つ拝読することにした。ワシとしては気が遠くなってしまう。書状の内容はワシへの交流、媚びへつらい、援助、中には自分の娘を妾に差し出す等といった内容が書かれており、ワシは思わず閉口した。読み終わった書状は与一が眺めていた


「ようも、これほどの事が書けますな。」


「あぁ、如何にも甘い汁を群がる蟻も同然であるな。」


「左近様、流石に蟻に失礼にござるぞ。」


「そうであったな、蟻に失礼であったな。」


「精々、イナゴにしときましょう。」


「イナゴか、いえてるな。」


ワシは書状をあらかた読み終え、最後の1通となった封のついた高価な書状を目をやると、何とジュリアス王国の貴族からであった


「与一よ、ジュリアス王国の公家【貴族】からの書状だ。」


「ほぉ、珍しいですな。自分から交流を深めたいとは・・・・して何者にござるか?」


「うむ、カイザス伯爵家だな。」


ワシは封を切り、書状を広げ、その内容を拝読した






【サコン・シマ準男爵殿へ】

「お初にお目にかかる。私の名はホルス・カイザス、ジュリアス王国のカイザス伯爵家の当主だ。私が貴殿に手紙を出したのは他でもない、貴殿と交流を深めたいと思っている。もし貴殿にその気があるのであれば手紙を寄越してほしい。ではこれにて失礼する。」

【ホルス・カイザスより】





案の定、ワシとの交流であった。ワシは溜め息をつきつつ、書状を仕舞い、側に控えていた与一に話した


「ワシと交流したいとの事だ。」


「如何なさるので?」


「問題はそこだ、他ならぬ他国の公家【貴族】だ、易々と交流は出来かねんぞ。」


「では御返事はしない方向で?」


「それもそれで角が立つ、まずは【お庭方】を使って、彼の者について調べる。」


「御意。」


サスケを始めた【お庭方】数名を行商人に化けさせ、ジュリアス王国へ向かわせた。それから1週間経った頃、サスケらは帰還し報告をした


「御苦労であった、それで何か分かった事はあったか?」


「はっ!」


サスケらはカイザス伯爵家について報告をした。カイザス伯爵家の領地は比較的大きな町1つとその周辺に広大な田畑と山林を所有しており、岩塩の他に蚕を使った絹と蜜蜂を使った蜂蜜が特産品であり、町の税収と岩塩と絹と蜂蜜の収益で賄っている。更に善政を敷いており、領民の評判は良いとの事である。カイザス伯爵には妻のローナ・カイザス伯爵夫人、娘(姉)のメアリー・カイザス、息子(弟)のオルタ・カイザスがいる。メアリー伯爵令嬢には許嫁であるボルゾン侯爵家の子息であるカイル・ボルゾン侯爵子息との関係だが、最近上手くいっておらず、カイル自身は他の令嬢に現を抜かしているとの事である


「そうか、これは婚約破棄が起きるな。」


「左様にございますか。」


「ああ、侯爵子息が他の女子に現を抜かしているあたり間違いないだろう。」


「それで如何いたしますか。」


「ああ、返事を書こう。」


ワシは紙を広げ、返事の書状をしたためた。ワシは考え抜いた上でカイザス伯爵家と交流を結ぶ事にした。ワシは立場上、平民であるからな、公家【貴族】なら話は別だが・・・・





【ホルス・カイザス伯爵閣下へ】

「御返事遅れて大変申し訳ありません、某はサコン・シマにございます。カイザス伯爵閣下が某と交流を深めたいと聞き、畏れ多い事にございます。某で多忙の身でございますが、よければ謹んでお付き合いのほどをよろしくお願いいたします、今後は手紙のやり取りにてお願い申し上げます。」

【サコン・シマより】





「与一よ、ティアをこれへ呼べ。」


「はっ!」


それから数分後、ティアが入室し、例の事を話した


「旦那様、この事をご報告してもよろしいのですか?」


「別にやましい事はしておらぬ、ただの交流だ、前例もあるからな。」


「はい、分かりました。」


ティアは早速、報告書にこの事をしたため、早便「島左近確認済み」にて送った、追跡動物も一緒にな。他国の者と交流、平民と貴族の交流は意外だが前例があり、他国の者と書状のやり取りも珍しい事ではない。ワシとしても別にやましい事はしていないので、報告させたまでの事である。報告書を受け取ったルナは早速、ロバートにその事を知らせた


「カイザス伯爵家か、ジュリアス王国の者がサコン・シマと交流とはな。」


「陛下、平民と貴族が手紙をやり取りするのは珍しくはありませぬ。」


「分かっておるよ、少しばかり気になっただけだ。」


「気になるとは?」


「うむ、他国の者が奴に交流を求めるとは、何やらきな臭い感じがしてな。」


監視役ティア・ストロートがついております、もし何かあれば連絡が届くはず・・・・」


「で、あるか。」


執務室でロバートとルナはカイザス伯爵家のそれから一週間後、カイザス伯爵から書状と土産が届いた


「それで伯爵は何と?」


「ああ、手紙でのやり取りは了承してくださった。」


「それはようございましたな。」


「ああ、岩塩と絹と蜂蜜を一緒に送ったそうだ。」


「それはようございましたな。」


「ああ、こちらもお返ししよう。」


ワシはこの土地で取れる多くの特産品をつめて、荷駄隊を結成し、ジュリアス王国に向けて送ることにした。我等の力を向こうに示す事も良いかもしれぬな。ワシはギルドにいるアメリア・ハントに依頼の張り紙を渡し、報奨金を渡す事を荷駄隊の護衛を依頼した。その後、アメリアから知らせがあり荷駄隊の護衛を務める者が募集をかけたらしく、ワシはティアと一緒にギルドへ訪れるとベーカリー・ゴーンズと他の冒険者がおった


「ベーカリー、主か。」


「おうよ、大船に乗ったつもりでまかせてくれ。」


「分かっておるよ、くれぐれも失礼のないようにな。アメリア、任務を受理させておけ。」


「はい、分かりました。」


「アメリア、任務を受理したら、休憩に入っても良いぞ。ティア、そなたもだ。」


「よろしいのですか?」


「ああ、2人で談笑すると良い。」


「「ありがとうございます。」」


特産品を詰めた荷駄隊「お庭方も同行」した。荷駄隊はそのまま出発し、ジュリアス王国のカイザス伯爵邸までの道中は特に問題はなく順調に進み、ベーカリーらは物足りなさを感じつつ、カイザス伯爵邸に到着した。その後、ベーカリーらは何事もなくそのまま帰還し、アメリアから報奨金を貰いそのまま解散した、それから1週間後、カイザス伯爵から返事が来た


「それで伯爵は何と?」


「ああ、贈り物を送ってくれた事を感謝しておるよ。」


「それはようございましたな。」


その頃、カイザス伯爵邸では左近の送った贈り物【サコン湖塩・サコン山塩・青芋上布・藪芋麻上布・各種工芸品・琥珀】等を目にして感激と共にサコン・シマの力を思い知った。特に手紙を送ったホルス・カイザス伯爵は恐怖したのである


「うむ、これほどの名物を送るとは、流石は【稀代の名士】だな。」



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