136話:死神
島左近清興だ、あれから【虎の牙】は目立った動きを見せず、平穏そのものであった。かえって不気味ではあるが・・・・
「死神だと?」
「はっ!」
与一の報告によると、シュバルツ王国内で死神の格好をした賊が闇夜に紛れて民を襲っているのだという。警備隊は死神の格好をした賊を探し回っているが、一向に見つからないらしい
「【虎の牙】の可能性はあるか?」
「存じ奉らず。」
「奴等の仕業に見せ掛けた模倣犯の仕業か。」
その夜、島左近の治める領地にて1人の男が家路に帰る途中であった
「仕事、遅くなってしまった、みんな心配してるだろう。」
男は真っ直ぐ、家路へ向かうと、生暖かい風が包んだ。男は風に浴びつつ、ふと背後を振り向くと、そこには大鎌を持った死神が立っていた
「なっ!」
死神は大鎌を振り回し、男に突撃した。男は一目散に逃げたが途中で小石に躓き、転んでしまう。そこへ死神が大鎌の刃が男の背中を切り裂いた
「ガアアアアアアアア!」
男は激痛でのたうち回った。死神はとどめを刺そうとしたところ、棒手裏剣が死神の腕に突き刺さった
「ぐ。」
死神は棒手裏剣を投げた方向へ振り向くと、そこにはサマノスケとユカリ夫婦がいた。2人は太刀を抜いており、いつでも臨戦態勢に臨めるようにしていた
「怪しい奴、このサマノスケが相手になってやるぞ!」
「私も忘れるなよ!」
「っつ!」
サマノスケとユカリは巧みな太刀捌きで死神を容易く追い詰めた。死神は相手が2人では分が悪い事を悟り、そのまま退散した。サマノスケとユカリは負傷した男を救助すると、知り合いの男であった
「シンゴさん!」
「うう、た、たすけ・・・・」
「大丈夫だ、今助ける。」
サマノスケとユカリはすぐさま家に連れていき、医療品を使って、介抱をした。シンゴは生死を彷徨いつつも、一命を取り止めた。サマノスケはすぐにシンゴの家へと向かうと、妻のレベッカが外に出ていた
「あ、貴方はサマノスケさん、うちの人を見かけませんでしたか。」
「奥さん、落ち着いて聞いてください、御主人が何者かに襲われました!」
「えっ!しゅ、主人は無事なのですか!」
「ええ、命に別状はありません、今は俺の家で安静にしています。すぐに向かってください。私はこれより医者の下へ向かいますので。」
「分かりました!」
その後、サマノスケは【サコン町】に向かい、医者に会い、昨日あった出来事を話すと、医者はサマノスケの家へと向かった。サマノスケは警備局に行き、医者同様、昨日の事を話すと現場へと直行した。サマノスケは最後に島左近の屋敷へ向かった
「何?サマノスケが来たと。」
「はっ、何やら昨日、事件が起きたそうで・・・・」
「サマノスケはどこにおる。」
「玄関で待っております。」
「参るぞ。」
「はっ!」
ワシは朝餉を途中で取りやめ、玄関へ向かうと、サマノスケが立っていた
「すいません、突然押しかけてしまって・・・・」
「良い、それで何があったのだ?」
サマノスケは昨日起きた出来事を話した。ワシは例の死神の事を思い出した、まさか死神がこの領土に現れ、危害を加えるとは・・・・
「して怪我人は無事なのだな。」
「はい、一命を取り止め、先程、医者を向かわせました。」
「そうか、よくぞ知らせてくれた。」
「はい、では私はこれにて。」
サマノスケは自分の家へと駆け足で去っていった。ワシとしては失態と言えるほどの事態だ、奴は【お庭方】の目を掻い潜り、我が領土に入ったのか。そこへ与一と【お庭方】がワシの下を訪れた
「如何した。」
「「「「「申し訳ございませぬ!」」」」」
与一と【お庭方】をすぐに土下座をした。恐らく例の死神を見逃した事への謝罪なのだろうと思うた
「誰にも失敗はある、幸い怪我人は命を取り止めたのだ。」
「いいえ、我等【お庭方】は裏より治安をお守りしていたにも関わらず、このような失態を犯してしまいました!いかなる罰も甘んじて御受けいたします!」
「なら例の死神を捕縛せよ、それがそなたの罰だ。」
「「「「「ははっ!」」」」」
与一と【お庭方】は改めて死神捕縛を胸に捜索を続けた。ワシはすぐに戒厳令を敷き、民たちに夜分の外出を禁止させ、警備隊は領内の巡回を行わせた。そして【お庭方】な囮を使って、死神を誘きだす事にした
「では頼むぞ。」
「はっ!」
与一の指揮の下、【お庭方】は動き出した。夜中にシグレが囮となり、1人で歩いていた。他の【お庭方】は気配を殺し、周囲を警戒しつつ、死神が現れるのを虎視眈々と狙っていた。シグレは周囲を警戒していると生暖かい風がシグレを包んだ。すると背後から殺気を感じ、手裏剣を忍ばせた。シグレは背後を振り向くと、例の死神の格好をした賊が立っていた。勿論、大鎌を構えていた
「はっ!」
シグレは棒手裏剣を放つと、死神は大鎌で防ぐと、後ろへ一歩退いた
「(こいつ、忍者だな。)」
シグレは死神の動きが忍者と同じである事を察知し、口笛を吹いた。口笛を合図に【お庭方】が死神を取り囲んだ。死神は大鎌を振り回しつつ、周囲を警戒しながら、シグレに向かって手裏剣を投げた
「ふん。」
シグレは扇子を取り出し、手裏剣を防いだ。【お庭方】は一斉に投げ縄を放つと、死神の両手にはまり縛り上げたが、死神は持っていた大鎌を落とした。シグレは吹き矢を用意し、麻酔針を発射し、死神の体に命中し、続けざまに吹き矢を発射し、死神の体に命中した。死神は段々、抵抗する力が失せていき、その場で力尽きた。【お庭方】は慎重に近づき、突然起き上がらないか確かめると、死神はうんともすんとも言わず、薬が効いているようだ
「ヨイチ様、死神を確保いたしました。」
「うむ、ご苦労。」
「この者、如何いたしますか?」
「拷問部屋へ運ぶぞ。」
「はっ。」
与一と【お庭方】は例の死神を捕縛し、拷問部屋へと移送された。警備隊に渡すと途中で自害しかねないので、警備隊に引き渡さない方向で決した。シグレは屋敷にいる島左近に報告すべく一行から外れた。与一らは例の死神を拷問部屋へと連れて行った後、身体検査や持ち物検査を行った
「まさか女子とはな。」
例の死神の正体は女子であった。見た目は20代前半の美人で、白髪の長髪、純白と言えるほどの色白の肌、切れ長の黒目、持ち物は忍びが使う道具が入っていた、更に見覚えのあるものが入っていた
「これは【虎の牙】の銅板。」
虎の紋様の入った銅板、この女子は【虎の牙】の一員だという事がはっきりとした。今は麻酔針でぐっすり眠っているこの女子をどう料理するか考えることにした
「死神を捕縛したか。」
「はっ!今は拷問部屋に運び、口を割らせます。」
ワシはシグレより例の死神の捕縛の報を聞いた。敵はどうやら忍びの者らしい、詳しい事はこれから調べる事としよう
「それともう一つ、あの忍者は女にございます。」
「女子の忍びか。」
「はい、かすかですが私たち女と同じ匂いがしました。」
「左様か。ご苦労、下がってよい。」
「不躾ながら・・・・この事、報告いたしますか?」
シグレが申しているのは、監視役の事だ。あの女子に知らせるべきか、否かを確かめたいようだ
「詳しい事が分からぬ限り、報告はせぬ。」
「はっ!ご無礼致しました。」
ワシは例の死神から情報を洗いざらい知るために警備隊や監視役には知らせず、戒厳令も解かずに事の成り行きを見定めることにした。その後、与一が帰還し、例の死神の正体を知った
「【虎の牙】とな。」
「はっ。」
「ふん、あやつらは執念深いのう。」
「御意。」
「とことん追い詰めてやろうぞ。」




