135話:処刑
島左近清興だ、【虎の牙】の犯行声明から一週間が経ったころ、【お庭方】が怪しき者を捕らえたと知らせが届いた。どうやら人気のない場所にて放火活動をしようとしたらしい、捕らえようとしたところ、抵抗があり、【お庭方】に一人が掠り傷を負ったが、全員捕縛した。警備隊の拷問によって、賊はついに正体と目的を話した
「何、【虎の牙】だと。」
「はっ!賊はそのように申していたそうにございます!」
【虎の牙】、早速動き出したようである。それもワシの治める領地にてだ、【お庭方】が未然に防いだおかげで建物や民たちに被害はないのは幸いであったが、よりのもよってワシの領土を狙うとは・・・・
「おい、ティアを呼べ。」
「はっ!」
ワシはティアを呼びに行かせてから数分後にティアが入室した。呼んだのは他でもなく、【虎の牙】の一員が放火活動をしようと捕縛し、一人が負傷した事を報告するためである。ティアも【虎の牙】の事は旅人の噂や新聞で知っていたので、報告することに決めていたのである
「では頼んだぞ。」
「はい!」
ティアは早速、監視付きながらも報告書を作成した後、島左近に一旦、見せた後、早便にて送った。早便は数日後に王宮に到着し、国王ロバート・シュバルツの下に届いた
「そうか、【虎の牙】の一味を捕らえたか。」
「流石はサコン・シマ、期待を裏切らない男だ。」
「そ、それで父上、奴らの目的は!」
「落ち着け。」
監視役からの書状を受け取ったロバート・シュバルツとユリヤ・シュバルツとロミオ・シュバルツは、【虎の牙】の目的とその内容を知った
「ほお~、各地で破壊活動をして民を扇動し、蜂起させるとは・・・・」
「革命のために民を犠牲にしてでも成し遂げるとは何と愚かな。」
「父上、1人負傷者が出ましたが、利用されては如何でしょう?」
「ほぉ~、どのように利用するのだ。」
「はい、放火をしようとした賊を民が偶然見つかり、賊が口封じをしようとして民を負傷させたと噂を流してみては如何でしょう。」
「ロミオにしては良き考えだわ。陛下、この事を国内外に触れ回り、【虎の牙】は民にも危害を加える集団として官民問わず、認識させましょう。」
「うむ、その通りにしよう。」
ロバートは国内外に【虎の牙】に関する糾弾状を送った。下々の者にも高札を立て、【虎の牙】は目的のためなら民にも危害を加える犯罪集団である事を植え付けさせる事に成功したのである。これにより国内外、官民問わず、【虎の牙】への敵意を向けたのである。その頃、【虎の牙】は此度の失態で慎重にならざるをえなかった
「不味いな、民を扇動しようとした事が逆に敵に回してしまった。」
「同志フレイク、如何致しますか?」
「作戦の練り直しだ。」
フレイク・マルギニアは破壊工作による作戦を変更することにした。現政府の手際の良さと同志たちの失態も相まって反政府・反王政組織が、いつの間にか秘密犯罪組織へと早変わりしてしまったのである。フレイクにとっては誤算であった
「次こそは成功させてみせる。」
その頃、島左近は捕縛した【虎の牙】の一味を処刑しようとした。最早、聞くべき情報は入手したので一味は毒殺することにしたが、そこにシュバルツ王国から待ったがかかった。シュバルツ王国は衆人環視の下で一味を絞首刑にするらしい
「まぁ、我が領地で処刑せずに済むな。」
一味はその後、王都より派遣された騎士たちによって護送された。舌を噛まないように口枷をさせられ、抵抗できないように手枷と足枷をはめられた。一味は何度も抵抗を繰り返したが、騎士たちによって気絶されられた。念のために【お庭方】を見張りにつけた、いつ【虎の牙】の仲間が襲撃するか分からないのだ、【お庭方】は周囲を警戒しつつも、【虎の牙】どころか盗賊の襲撃はなく、数日後に王都へ到着した。一味は水だけ飲まされたが衰弱していた。【虎の牙】の一味は即刻、絞首刑を行う事にした。既に処刑場は準備は整っており、国民は我先にと【虎の牙】の一味の処刑を見物していた。そして一味が現れた途端、罵詈雑言が飛び交った
「早く処刑しろ!」
「国民の敵!」
「さっさとくたばっちまえ!」
一味は意識は朦朧とした中、自分たちに向けられた罵声ははっきりと聞き取れた。自分たちは何故、罵声を浴びせられるのだ、自分たちは現政府・現王政を打倒し、民主主義のために頑張って来たのに、こんな仕打ちはあるのかと怒りがふつふつと芽生えた。一味は絞首台に到着し、口枷が外された途端、一味は力一杯、民衆を罵倒した
「お前たちは犬だ!王家の犬に成り下がったお前たちは我等の理想を罵倒する資格はない!」
「我等は崇高な志のために戦っているのに、こんな仕打ちを受けるとは!」
「犬は一生、犬の人生を歩むがいい!」
それを聞いた民衆はヒートアップし、一味に向かって石を投げ続けた。中には直接殺そうとする民衆もいたが、兵士たちによって止められた。このままでは暴動が起きかねないと判断し、即刻処刑を行った。一味は首に縄をかけられた後、すぐに椅子を蹴られた
「ぐっ!」
一味は首にはめられた縄によって絞めつけられ、やがて首の骨が折れ、呼吸困難になり、その場で息絶えた。その姿を見た民衆は大盛り上がりだった。一味はその後、無縁仏に入れられ、誰にも知られず埋葬された。一味が処刑されたのを確認した【お庭方】は引き上げた後に島左近に報告した
「ご苦労、下がってよい。」
「「「「「はっ!」」」」」
【虎の牙】の一味の処刑を【お庭方】の報告で知ったワシは空しさを覚えた。奴らにとって、それが正義だとしても、【勝てば官軍、負ければ賊軍】、勝利した方が正義なのである。そうかつての主である石田治部少輔三成が亡き秀吉公のため、忘れ形見である秀頼君のため、豊臣家のために愚直なまでに生きたにも関わらず関ケ原の合戦に負け、逃亡生活を送る羽目になったのだ・・・・
「ちちうえ!」
ふと考え事をしていると、いつの間にかアルグレンとサリーナが部屋に入っていた
「如何した、2人とも。」
「あそんで!」
「あそんで。」
「ああ、構わんぞ。」
ワシはアルグレンとサリーナと一緒に遊んだ、そうワシが今、望むのは平穏な暮らしである。その平穏を壊す輩がいるのであれば、例え相手が王国だろうが、秘密犯罪組織であろうが容赦なく討つ・・・・
その頃、【虎の牙】の同志がシュバルツ王国王都の処刑場にて絞首刑に処された事を知ったフレイク・マルギニアは涙に暮れた。衆人環視の下で、絞首刑に処され、民衆から罵詈雑言と投石を浴びせられた同志に心の底から冥福を祈ったのである。フレイクは同志たちを呼び、此度の事を教訓とした
「同志諸君、聞いているだろうが、我等の同志たちは処刑場にてその一生を終えた。その同志のためにまずは黙とうをしようではないか。」
「「「「「はい!同志フレイク!」」」」」
「では黙とう!」
フレイクの号令の下、1分間の黙とうが捧げられた。この1分間、皆は何を考えているのかは分からないが、思いは一つである。黙とうを終わらせた後、フレイクは同志たちに向けて檄を飛ばしたのである
「同志諸君、我々の同志たちは民衆から罵詈雑言と投石によって辱められ、絞首刑に処された。だが我々の理想は未来永劫、消えることはない。良いか、我々はこの世に生を受けた時から皆、平等であり上も下もない。その理想の世界を実現するまで我等は戦い続けるぞ。」
「「「「「はい!同志フレイク!」」」」」




