12話:前触れ
島左近清興だ。ワシは与一は商人の護衛の仕事を終えて、【ガルバ町】方面の平原の獣道を歩いていた
「左近様、今日もお役目を果たせましたな。」
「ちと物足りない気はしたがな。」
「確かに道中、何もございませんでしたからな。」
ワシと与一は報酬を貰えれば良いが、やはり刺激というものが欲しいと思いつつ、道中を歩いていると・・・・
「キャアアアアア!」
「左近様!」
「うむ。」
どこからか女子の悲鳴が聞こえた。ワシと与一は悲鳴のした方へと駆け足で向かうと、そこには山賊に教われている馬車を見つけた。護衛の騎士は負傷しつつも、戦っているが多勢に無勢である
「与一、二手に別れよ、ワシは賊を、主は馬車を守れ!」
「御意!」
ワシらは二手に別れ、行動した。ワシは手裏剣を出現させ、山賊に目掛けて投げた
「ぎゃあ!」
手裏剣は山賊の後頭部に命中し、そのまま倒れた。他の山賊たちは左近の存在に気付き、そのまま突撃してきた
「や、野郎!」
「遅い!」
左近は朱槍(短槍)を出現させ、一人の山賊を刺し殺し、山賊の攻撃を円を描くようにかわし、そのまま刺し殺していった
「お、おい、まさか。」
一人の山賊がガタガタと震え、左近を注視した
「あの朱色の槍に180cmを超える背丈、間違いねえ!サコン・シマだ!」
一人の山賊が島左近の正体を知った途端、他の山賊たちも背筋が凍り、恐怖で身動きが取れなくなった
「ほぉ~、ワシの事を知っているようだな。なら、これからどうなるか分かっておるよな?」
ワシは一歩一歩近づいていくと、山賊たちは後退りしていった
「ば、馬車だ!馬車にいる奴等を人質にすれば・・・・」
山賊が馬車の方を振り向くと、既に与一が馬車近くの山賊を始末した後だった
「もう、終わりか?」
与一が挑発めいた発言をしたが、山賊たちは自分達の状況が最悪な事に気付き、逃走を図ろうとした
「逃がすと思うか?」
山賊たちが振り向くと左近は既に後ろにおり、そこから血の雨が降り注いだ。左近は日本刀を出現させ、肉眼では捉えられないほどの居合切りを行ったのだ。山賊たちは何が起こったか分からず、そのまま息絶えるのであった。左近は日本刀を一回振り回し、鞘に収め解除をした
「与一、負傷した騎士の手当ては?」
「ポーションと造血丸を飲ませましたが、まだ体力が回復していないので休ませております。」
左近は手当てを済ませた騎士に近づき、声をかけた
「大事ないか?」
「あ、ああ、忝い。」
「すぐには動かさない方がいい。血を失いすぎたかな。お主に飲ませたのはポーションと造血丸・・・・血を造る薬だ。時間が経てば動けるようになるから今は休め。」
「あ、あの・・・・」
ワシが騎士と話している途中、馬車からメイドの女子が、開閉式の馬車戸から、こっそりとのぞき込んでいた。どうやらワシと騎士の会話を聞きつけ、様子を見に来たらしい
「そちらは大事ないか?」
「あ、はい。お助けいただきありがとうございます。」
「お主等は運が良かったな、我等が駆け付けなければ今頃、賊共に何をされたか分からぬぞ。」
「は、はい。」
「それとあまり外を見ない方がいいぞ。辺り一面、賊の躯だらけだからな。」
「は、はい。」
ワシはメイドに忠告した後、メイドは馬車戸を閉めようとしたら・・・・
「マリア、外の方はどうなっているの?」
馬車の中からうら若き乙女の声が聞こえた。するとマリアというメイドが・・・・
「御心配には及びませぬ。賊はいなくなりましてございます。」
「本当に?」
「はい。」
メイドと中にいる恐らく公家(貴族)の令嬢あたりだろう。ワシと与一は騎士が動けるまで辺りを警戒しつつ、賊の躯を集め、深くへこんだ穴に入れ、火をかけて燃やした。なぜ燃やしたかって死体を狙う獣がいるからだ。ここは獣道であり、人食い動物が死体をあさる可能性がある。それに人の肉の味を思えると人を襲う可能性もあるからだ、クマ等の一部の獣を除き、大半の獣は火を恐れるからな。もし近くに森があったら山火事になるが、ここら一帯は平原だから、燃やすことができる
死体の焼ける臭いで獣が寄ってくるのでは?勿論、その可能性がある、燃やす前に与一が獣が嫌う臭い袋と骨を溶かす薬を死体と一緒に入れて燃やしているため、獣は臭いを嫌って寄ってこない仕組みである。すると肉の焼ける臭いがした。その後、特に何もなく、騎士がようやく動けるようになり、ワシと与一は、その場を去ろうとした
「では我等はこれにて・・・・」
ワシらは別れを述べた後、その場を去ろうとすると・・・・
「もし!」
ワシらが振り向くと馬車戸が開き、一人の令嬢が顔を出した。見た目は黄金の長髪、色白碧眼、気品あふれる美しい十代後半の令嬢が顔を出した。メイドが慌てて、止めようとしたが遅かったようだ
「先程は御助けていただきありがとうございます。失礼ながら御名前を御伺いしてもよろしいかしら?」
突然の令嬢から名前を聞かれた。正直、公家の令嬢に関わると何が起こるか分からないから適当な理由を言って断ろうと思った
「某らは旅の者に御座いますれば、名乗るほどの者ではございません。どうか御容赦のほどを・・・・」
「先程の賊が貴方の事を見て、サコン・シマと言っておりましたが?それに貴方自身も認めてらっしゃったではありませんか。」
「・・・・左様にござるな。」
「それでも私たちの命の恩人であることに変わりはありません。よろしければ御礼をしたいので私たちと共に我が領地へお越しください。」
「いいえ、お構いなく・・・・」
「まあまあそう言わずに、ベル、マリア、この方々を我が領地へ御案内なさい。」
「いや、だから・・・・」
「申し訳ございません、お嬢様は言い出したら聞かないのでどうかお願いします。」
「何卒。」
手当てした護衛の騎士であるベルはとメイドのマリアが頭を下げながらあの令嬢同様、お願いをしてきた。ちなみに騎士の名前はベル・クラウン、メイドの名前はマリア・ミスティアという
「はぁ~、分かり申した。」
「左近様、よろしいのですか!」
「もはや是非もなし、行くしかあるまいて。」
「御意。」
「慎んでお招きに預かります。」
「ありがとうございます。名乗るのを忘れておりましたが、私はブリュッセル辺境伯が娘のセシリア・ブリュッセルと申します。以後、お見知りおきを。」
令嬢は自分の名を名乗り、礼儀作法にかなった所作をした。しかし奇妙だ。なぜここに辺境伯令嬢がいるのだ。貴族の令嬢は普段から王都に屋敷にいるのが常だ。その令嬢がなぜ?
「これはご丁寧に、某はサコン・シマにございます。こちらは某の配下、ヨイチ・ソウマにございます。」
「ヨイチ・ソウマにございます。よろしくお見知りおきのほどを。」
「サコン・シマ様、ヨイチ・ソウマ様、御二方の御名声は王都にも届いております。御会いできて光栄ですわ。我が領地へご案内いたしますわ。」
「その前に【ガルバ町】に寄りたいのだがよろしいか?」
「ええ、私たちもその町へ向かう途中でございましたので。」
「左様か。それは助かる。」
その後、ワシよ与一はセリシア・ブリュッセル辺境伯令嬢に誘われ、ブリュッセル辺境伯領へ向かう前に【ガルバ町】へ戻るのである




