126話:カンバス地域
島左近清興だ、琥珀を国王陛下に献上してから数日後に、ルナは再びやってきた。今度は何だと思いつつ、ルナを迎え入れた
「これはルナ殿、如何された?」
「サコン殿、陛下よりの勅諚にございます。」
ワシはすぐさま平伏した。それを確認したルナは勅諚を読み上げた
「サコン・シマ、此度の献上の品、大変感じ入った。よってそなたに褒美を与える。」
「ははっ!」
どうやら褒美のようだ、今回は手柄は立てていないが、献上品で褒美をやるとは、国王も流石に焼きが回ったのかと思うのはワシだけだろうか・・・・
「サコン・シマに【カンバス地域】を与えるものなり。」
「ははっ!有り難き幸せ!」
【カンバス地域】とは、【ガルバ町】周辺の土地と隣り合わせの土地であり、ほとんど手入れがされていないススキ野原と原っぱである。勅諚を読み終えた後、ルナは此度の経緯について話した
「【カンバス地域】を開拓しようと考えていたのですが志願者が現れず、陛下はサコン殿にこの土地の開拓を任されたのです。」
なるほど、琥珀の献上による褒美という名の開拓地の開墾を押し付けられたようなものだな。まあ、ワシの土地になるのだから、有り難く受け取っておこう
「左様か、【カンバス地域】開拓の件、お引き受けいたしましょう。」
「サコン殿であれば、そう仰ると思っていました。」
ルナは馬車に乗り、王都へ帰還した後、ワシは【お庭方】を率いて、【カンバス地域】へ向かうと、そこは辺り一面、ススキ野原のだらけと標高300mほどの【カンバス盆地】だけであった
「ああ、開拓する前の頃を思い出す。」
ワシは地主になる前、与一と共にススキ野原の伐採を行った事が嫌でも記憶に残った、与一が途中で火をつけて焼け野原にしようとしたところ、ワシが止めて難を逃れたが、さてどうするか・・・・
「まずは屋敷へ戻るか。」
ワシは一旦、屋敷へ戻った。与一を呼び、【カンバス地域】の開拓について話し合いが行われた
「それで彼の地域は如何なさるので?」
「うむ、いくつか案はある。」
ワシは複数の案を与一に提示した。1つ目は「牧場」、2つ目は「新田開発」、3つ目は「町と村の創設」等、ワシの考えうる案を引き出した
「左近様、牧場は如何にございますか。」
「何故、そう思う。」
「ボブテス夫婦を覚えてございますか。」
「ああ、昨日の事のように、はっきりと覚えて居るわ。」
「はっ、某は夫婦の頑張る後ろ姿を見て、いつか左近様の治める領地にて牧場を作る事を夢見ておりました。【カンバス地域】を褒美に賜った事でそれがようやく叶った心地にございます。」
「そうか、それでそなたはどのような牧場を作りたいのだ?」
「ははっ!まず牧場を創設し、そこで牛・馬・豚・羊・山羊・鶏等を飼育いたしましょう。ススキは伐採し、原っぱは動物たちの餌といたしましょう。」
「相分かった、牧場を作ることにして、後は人手と資金だな。」
「左近様、琥珀で売った金で人手を雇っては如何でしょう?」
「うむ、それは良いな。」
ワシの治める領地は山羊小屋と厩と養豚場と養鶏場(鶏卵&鶏肉)しかなく、海の幸や牛の乳や肉類等は商人によって運ばれるのである。此度、褒美として賜った【カンバス地域】を牧場地にするべく動き出した。まずは開拓するための資金だが琥珀欲しさに高値で売る者たちのおかげで資金は問題ない、後は人手だな。ワシはギルドへ行き、牧場開拓のための人手の募集を行った
【サコン町の場合】
「アメリア、後は頼んだぞ。」
「はい!お任せを!」
【ガルバ町の場合】
「オークラ殿、ビルデ嬢、任せたぞ。」
「「はい、お任せください!」」
次に【サコン町】や【ガルバ町】の警備隊に牧場開拓のチラシの配布を要請した。警備隊は各方面にチラシを店や村々に配布した。後は人手が集まるのを待つだけだが・・・・
「どうだ、人は集まったか?」
「それが・・・・」
「苦しゅうない。」
「牧場作りの人手、現れませぬ。」
「・・・・左様か。」
牧場作りは人気がないのか、人手が集まらなかった。ワシらの牧場作り計画は中止の危機に陥っていた
「もう少し待とう。」
「期日は?」
「1週間だ。」
ワシは1週間待つことにした。もし1週間経っても志願者がおらねば中止することにした。だが【カンバス地域】のススキ野原の伐採を始めることにした。ワシはススキ野原伐採の張り紙を提示したら、先程と打って変わって志願者が続出したのである
「ワシは手順を間違えたようじゃのう、先にススキ野原の伐採をすべきであった。」
志願者たちはそれぞれ道具を持ち、ススキ野原の伐採が始まった。大人数で作業によりススキ野原は大地から消え去り、完全に無くなったのは3日後であった
「左近様、ススキ野原は嘘のように無くなりましたな。」
「ああ、おかげで広大な土地が姿を現したわい。」
【カンバス地域】は【サコン塩湖】の周辺の土地に匹敵するほどの広大な土地であり、開拓すれば新しい田畑が増え、町の1つ、村の4つは作ることが可能である
「これは牧場だけではなく、町や村も作れるぞ。」
「左近様、如何いたしますか、待ちまするか。」
「与一、そちはどうする。」
「某は待ちまする、もし来なければ諦めまする。」
残りの4日間、ワシらは待ち続け、ついに1週間経った。ワシは牧場作りの計画を中止することにした
「約束の刻限は過ぎた。他の案にしよう。」
「御意。」
与一は表情には出さずとも、雰囲気で分かった。奴の願いは叶うことなく頓挫したのである、ワシは【新田開発】、【町と村の創設】の案に移行しようとしたその時、扉からノック音がした。許可を出すと、サスケが入ってきた
「旦那様、募集の志願者が参りました!」
「何!それは誠か!」
「はい、外でお待ちです。」
「おお、そうか。客間へ通せ!」
「ははっ!」
ワシは身嗜みを整え、客間に向かうと、一人の男が座っていた。見た目は30代後半、黒髪短髪、黒目、褐色した肌で中肉中背ほどの体格の男であった。男はワシに気付き、立ち上がり、挨拶をした
「初めまして、募集の張り紙を見て参りました。私はカザック・イシマツにございます。」
「よくぞ来てくれた、ワシはサコン・シマだ。」
「はい、例の張り紙を見て、失礼を承知で尋ねてきました。」
「いやあ、お主が来なかったら諦めようかと考えていた所だ。」
ワシは【カンバス地域】の事を話した。カザックはワシの話を真剣に聞いていた。するとカザックは【カンバス地域】を直接この目で見てみたいと言ってきたのである
「そうだな、百聞は一見に如かず、直接見た方が良いな、案内いたそう。」
「ありがとうございます。」
ワシらは出発し、【ガルバ町】を通り、目的地である【カンバス地域】に到着したのである。ススキはすっかり無くなっており、あるのは原っぱと広大な土地だけであった。カザックは【カンバス地域】をまじまじと観察した後、原っぱへと向かった。ワシらも後を追うとカザックは原っぱを調べ始めた
「その原っぱは牧草地に相応しいか?」
「はい!これほどの原っぱがあれば牧場ができます!」
「そうか、それは良い。」
「あの、資金や人手については・・・・」
「ああ、勿論、こちらで用意いたす。」
「ありがとうございます。」
ワシは商人に依頼し、多くの牛・馬・豚・羊・山羊・鶏等の確保、動物用の小屋や柵の整備のための資材を【カンバス地域】に持ってこさせる事にした。商人たちは新たな商売の種を確保したと意気揚々と行動したのである。人手の方も続々と集まり、カザックの指導の下で行われたのである
「左近様、牧場作りの一歩が進めますな。」
「ああ、問題はここからだな。」




