124話:勇者転生
ここは絶海の孤島、ここに二人の男が居座っていた。そう元勇者で元脱獄犯のチャブム・ブレスとコバヤシである。奴らはそうしぶとく、自分の悪行を後悔し、生き残っていた・・・・
「・・・・なんで俺たち生き残ってるんだ。」
「・・・・考えるな、感じろ。」
「・・・・何も感じねえよ。これだったら死んだ方がマシだ。」
すっかり薬が切れて、廃人同然に成り下がり、体を動かす気力もないのに、二人はしぶとく生き続けている。勇者の適正によるものか、それとも二人の生命力が凄まじいのかは分からないが、二人は生き地獄を味わっていた
「なあ、この島を出ねえか。」
「出るっていたってどうするんだよ、この荒れ狂う波をどうやって行くんだよ。」
「そりゃあ、船を作って・・・・」
「船を作る材料があんのか、ここには何もねえぞ。野鳥も魚も食い飽きたしな。」
「ああ、女神様、このコバヤシに救いの手を・・・・」
「無駄な事を・・・・」
コバヤシは天の向かって祈りを捧げた。チャブムは無駄だと言ってもチャブムは祈りを辞めなかった。それが1週間続いた頃・・・・
「勇者よ。」
「ん、チャブム、何か言ったか?」
「何も言ってねえよ。」
「勇者よ!」
「「うわっ!」」
突然の女の声にビビる二人、周辺を見渡したが、あるのは荒ぶる海と何もない大地のみだった
「勇者よ!」
「「はい!」」
チャブムとコバヤシは空を見上げると、そこにはとても美しい顔をした女性が上空を漂わせ、神秘的な雰囲気を醸し出しながら2人を見下ろしていた
「勇者よ、私は女神です。」
「め、女神様!!」
「勇者よ、貴方たちは艱難辛苦を乗り越え、罪を悔い改めて、今日まで生きてきました、その2人にもう1度チャンスを上げましょう。」
「ほ、本当ですか!」
「ええ、貴方たち2人は新しい人生を歩むのです、さあ目覚めるのです。」
女神の後光が一際輝き、チャブムとコバヤシはその輝きに眼を覆った。光が段々と弱まっていき2人は目を開けると、そこは絶海の孤島ではなく、何もない平野にいた
「おお!平野だ!」
「これは奇跡だ、女神様の軌跡・・・・」
「「あれ。」」
何だか声が高くなった、というか女の声になったような、2人は互いに目を合わせると・・・・
「「誰?」」
目の前には金髪碧眼の貧乳色白美人、黒髪黒目の貧乳色白美人がいたのだ。最初は誰だと思ったが、チャブムは恐る恐る尋ねた
「も、もしかしてコバヤシか?」
「まさか、チャブムか?」
「「あはははは・・・・・マジでか!」」
「え!なんで!僕は女になってるんだ!」
「まて、まて落ち着け、とりあえずアレがついているか確かめるぞ。」
「そ、そうだな。」
チャブムとコバヤシはズボンを下ろし、下半身を露わにした。チャブムとコバヤシは互いに自分のブツを確かめると・・・・
「「ついてない。」」
2人はズボンを履きつつ、改めて自分は女になったのだと自覚させられたのだ。ついでに自分の胸を揉んでみたが、見事なまでに断崖絶壁レベルの貧乳だった
「揉む胸すらねえな。」
「ふふふ・・・・」
「「女神の野郎!元に戻せ!」」
チャブムとコバヤシは天に向かって叫んだが、返事はなく、平野に響き渡った。2人は叫ぶのも空しくなり、これからどうするか考えた
「女になったんなら仕方がない、これからは女として生きるぞ。」
「つか、どうやって生きるんだ、女の職業なんて限られてるぞ!」
「なあに、女勇者として生きていけばいいじゃないか。」
「女勇者って・・・・」
チャブムの提案にコバヤシは呆れていた。この期に及んでまだ勇者を続けるのかと・・・・
「それに僕たちは女として生まれ変わり別人になったんだから、指名手配もされないしな。」
「それについては同感だ。」
そう女神によって女になったことで、指名手配の心配が失くなったのである。これで堂々と町で出歩けるのだから、2人にとっては万々歳だろう
「とりあえず町を探すぞ。」
「町ってどこを探すんだよ。金すら持ってねえ・・・・ん?」
「どうした?」
コバヤシがジャンプすると、ある袋がポトッと地面に落ちた。コバヤシはその袋を拾い、紐をほどいて開けると、そこには金貨50枚「50万エン(日本円で50万エン)」が入っていた
「おい、金貨が入ってるぞ!」
「何!それは本当か!」
「見てみろ!」
コバヤシは袋から金貨を取り出し、チャブムに見せると、チャブムは金貨に凝視した
「ほ、ホントに金貨だ・・・・もしかして!」
チャブムもジャンプすると、ポトッと袋が地面に落ちた。チャブムはすぐに袋を拾い、紐をほどいて、開けると金貨50枚が入っていた
「金貨だ!」
「これさえあれば、やり直す事ができるぞ!」
「女神様だ!女神様が寄越してくれたんだ!」
「女神様、ありがとうございます!」
2人は天に向かって、平身低頭した。2人は女神に感謝しつつ、周囲を探索すると、ある町を見つけた
「おお、町だ!」
「よし行くぞ!」
2人は駆け足で目的の町へと向かった。町の名前は【ポルト町】という比較的大きな町である。2人は早速、町の入り口へ向かうと門番が立ちふさがった
「まて、通行証を見せてもらおうか。」
「すいません、実は通行証を落としてしまって、再発行したいんです。」
「だったらギルドへ行くんだな。」
「ありがとうございます。」
目の前にいるのは指名手配されている脱獄犯のチャブム・ブレスとコバヤシとは全く気が付いていない。警備兵はギルドに案内され、チャブムとコバヤシは周囲をキョロキョロしていた
「(誰も気付いていないようだな。)」
「(こうも堂々と歩けるのは久しぶりだな。)」
「着いたぞ、ここで通行証の再発行ができるぞ。」
「「ありがとうございます。」」
チャブムとコバヤシは早速、ギルドに入り、受付へと向かった。受付嬢は2人に気付き、応対した
「ようこそ、ギルドへ。」
「通行証は再発行したいのですが・・・・」
「はい、通行証の再発行は一人10万エンになります。」
「はい、どうぞ。」
「では、この水晶に手をかざしてください。」
チャブムは水晶に手をかざすことに抵抗を感じた。犯罪歴のある者は赤く光るのである。そう元は脱獄犯であり、もし水晶に過去の経歴が暴かれでもしたらと思うと手が震えた
「どうかなさいましたか?」
「い、いいえ。」
捨て鉢になった思いで水晶に手をかざすと、黄色の発光をし、チャブムはホッとしたのである
「適正は【勇者】ですね、御名前をお伺いしてもよろしいですか?」
「は、はい、チャーリー・プレスです。」
チャブムは偽名を名乗り、通行証を発行することに成功した。次にコバヤシも水晶に手をかざすと黄色に発光した
「適正は【勇者】ですね、御名前をお伺いしてもよろしいですか?」
「こ、コーネリアスよ。」
コバヤシも偽名を名乗り、何とか通行証を発行することができた
「チャーリーさん、コーネリアスさん、通行証です。」
「「ありがとうございます。」」
チャブム改め【チャーリー・プレス】、コバヤシ改め【コーネリアス】は正式に勇者に復帰したのである
「「(これから僕(俺)たちの時代だ!)」」
天高く二人は手を大きく振り上げると同時にふとポカンとした
「「あれ?何か忘れているような・・・・」まあ、いいや。」
実はチャブムとコバヤシの第2の人生を送るために女神は記憶を少しいじくり、対価とした。それは島左近に関する記憶である。チャブムやコバヤシにとって因縁の相手の記憶を消去したまま2人は第二の人生を送るのであった
「「ハクシュ!」」
島左近清興だ、ワシと与一は突然、くしゃみをした。何故か分からぬが嫌な予感がしたのである
「うむ、何やら胸騒ぎがする。」
「左近様もですか。」
「そなたも感じたのか?」
「御意、何やら胸騒ぎがいたしまする。」
「あぁ、警戒した方が良さそうだな。」
左近と与一はチャブムとコバヤシが一部の記憶を改竄され、女のして生まれ変わったことを知らずに居たのであった




