113話:コタロウ
島左近清興だ、織物の販売を一旦中断し、青芋と藪芋麻の栽培を奨励しつつも、平穏な日々を過ごしていると、屋敷にユカリ、サマノスケ、コタロウが尋ねて来た。ワシと与一、アリーナとウルザが出迎えた
「これは御三方、揃って如何された?」
「フォフォフォ、サコン殿、やっぱり長生きは良いものじゃ。」
コタロウがそういうと、隣にいたユカリとコタロウは顔を真っ赤にさせていた。二人に何かあったのかと思い、聞いてみた
「ユカリ殿とサマノスケ殿に何かあったのですかな?」
「フォフォフォ、流石はサコン殿じゃ。実はなワシにもようやく曾孫が生まれるのじゃよ!」
「何と!」
「まあ!」
「ああ・・・・」
「本当なの!ユカリ!」
ワシらは思わず両名に顔を向けると二人は照れ臭そうに俯いていた。そんな二人を余所にコタロウが話を進めた
「いやあ、ワシもそれを聞いた時は思わず心臓が止まりそうなくらい驚いたわい。まあ、曾孫の顔が見れるからいいがのう。」
「そうであったか。」
「おめでとうございます。」
「いやあ、確かにめでたいな。」
「隅におけないはね、二人とも。」
「いやあ、忝い。」
「いや、まさかと思ったんだが・・・・」
途中で黙っていたコタロウとユカリがやっと口を開き、まさか赤ちゃんができるとは思っていなかったようだ。話を進めると二人は祝言【できちゃった結婚】をあげようと思っているらしく、その挨拶をしに来たという。ちなみにサマノスケは畑仕事の他に、塩作りも行っており、収入は安定しており、ユカリは用心棒の仕事を辞めるらしい
「そうか。勿論、祝言に参加させてもらうぞ。」
「それでいつ行うか決まってるの?」
「〇月〇日に行う予定です。」
「ほお、場所は決まってるのか。」
「はい、【ガルバ町】の教会で行います。」
「それじゃあ、準備をしないといけないわね。」
「落ち着け、ウルザ。」
二人の祝言に興奮するウルザを抑える与一、ワシとアリーナは祝いの品を用意せねばならんな、3人が帰った後、ワシらは祝言に来ていく衣装の準備をすることにした
「さて、どれを着ていくか。」
「旦那様はこちらが似合うと思いますよ。」
「お前さん、どっちがいいかしら!」
「どっちも似合ってるから大丈夫だ。」
ワシらが準備を進める一方、ユカリとサマノスケはサマノスケの家にいた
「ユカリ、あと5日だな。」
「・・・・ええ。」
「どうしたんだ。」
「いや・・・・私たち本当にやっていけるかなと考えていた。」
ユカリはいわゆるマリッジブルーに陥っていた。この先、サマノスケとやっていけるのか、赤ん坊を育てられるのか心配だった
「先行きについて誰も分からんさ。かの【ガルバトロズ】もまさか解散するとは世間は思わなかったんだから、こればかりは成り行きに身を任せるしかない。」
「それはそうだけど・・・・」
「俺にとって一番の心配はお前と赤ん坊だ、もしお前の身に何かあったらと思うと・・・・」
「心配するな、私は至って頑丈だ。」
「いや、でもな・・・・」
「お前に心配されるほどヤワではない・・・・うう!」
「ユカリ!」
ユカリはそのまま流し台へ向かい、再び吐いた。サマノスケは背中を擦りながら、ユカリを労った
「大丈夫か?」
「あ、ああ。」
「ユカリ、今はお前だけの体じゃないんだ。無理しないでくれ。」
「さ、サマノスケ。」
「俺はお前に出会う前、父と母を失った。師匠に出会わなかったら俺は死んでいたかもしれん。」
「サマノスケ・・・・すまない。」
「いいってことよ。」
5日後、【ガルバ町】の教会にて結婚式が行われた。結婚式には多くの参加者が集まった。その中には島左近らも加わっていた。ウエディングドレスを着たユカリと、白いタキシードを着たサマノスケ、美男美女のカップルに周囲は祝った
「御二方、結婚おめでとう。」
「おめでとうございます。」
「ユカリ殿、サマノスケ殿、おめでとう。」
「おめでとう、お二人さん!」
「ほら、アルグレン、サリーナ。」
「ヨームもだ。」
「「「おめでと!」」」
「「ありがとうございます。」」
島左近、アリーナ、与一、ウルザ、アルグレン、サリーナ、ヨーム等が祝いの言葉を述べ、それにこたえるようにユカリとサマノスケが礼を述べた
「フォフォフォ、ユカリ、綺麗じゃぞ、息子たちにも見せたかった。」
「お爺様・・・・ありがとうございます」
「サマノスケ・・・・ユカリと子供の事を頼んだぞ。」
「はい、師匠・・・・」
コタロウから祝いの言葉をかけられた二人は感謝した。ユカリにとっては両親亡き後、親代わりとして育ててくれた実の祖父、サマノスケにとっては命の恩人でもあり親代わりでもあるコタロウに・・・・
「お二人さん、おめでとさんよ。」
「ユカリおめでとう。」
「「「「「おめでとう!」」」」」
「ありがとう、みんな。」
ユカリが用心棒をしていた娼館【イザナミ】の主であるミリア、そしてロゼット等の娼婦と従業員たち、なぜかいるベーカリーから祝いの言葉をいただき、感謝を述べた。そこから神父の言葉、そして愛の誓い等を行い、二人は夫婦となった
「うん、これで二人は夫婦になったな。」
「正確には夫婦と生まれる子供がいますよ、旦那様。」
「そうであったな。」
それから数ヵ月が経ち、ユカリは女子を出産し、名前はユキと名付けられた。コタロウは曾孫の顔を見れた事を殊の外、喜んだ。曾孫の誕生から1週間後にコタロウは病を患った。畑仕事をしている途中で倒れたらしい。すぐに病院に運ばれ、入院した。医師の診断でもう長くはない診断されたのである。ワシと与一はコタロウのいる病室を尋ねた
「コタロウ殿。」
「おお、サコン殿にヨイチ殿。見舞いに来てくれたのか?」
コタロウは病で痩せ細っていたが、目の光だけは失っていなかった
「先程、ユカリが曾孫を連れて来てくれたんじゃ。やはりめんこかったわ、」
「左様か。」
「思い出すのう、サコン殿とヨイチ殿が畑を耕していた事を。今では【準男爵】とはのう。」
「ええ、それができたのはひとえに貴殿のおかげだ。ワシらにとって貴殿は大恩人だ。」
「フォフォフォ、大恩人か、ワシはただ、気まぐれでやっただけじゃよ。」
「コタロウ殿、左近様も某もこうして暮らしていけるのはコタロウ殿のおかげだ。だから・・・・」
「ありがとう、もう十分じゃ。それとユカリもサマノスケ、そしてユキを頼む。」
「・・・・心得た。」
それから1週間後にコタロウはこの世を去った。苦しまず安らかな最期であった
「大丈夫か、ユカリ殿、サマノスケ殿。」
「はい・・・・お爺様は曾孫の顔が見れた事を喜んでいました。」
「お師匠、ユカリとユキは俺が守ります。」
ワシらは3人を見守るのみであった。それから仏は荼毘にふされ、サマノスケとユカリの家の近くに墓が建てられ、そこへ埋葬されたのである
「左近様、悲しいですな。」
「あぁ、コタロウ殿もいずれ生まれ変わるであろう、ワシらのようにな。」
そう、かつてワシらも関ケ原の敗戦後に死に、この世界に来た。恐らくコタロウも同じ道を辿るだろうと思った
「果たして、コタロウ殿はどうなるであろうかのう。」
ここはあの世とこの世の境、コタロウは目を覚まし、辺りを見渡すと辺り一面、真っ白だった
「ん、天国か、それとも・・・・」
「ようこそ、あの世とこの世の境へ。」
そこにいたのはセビロを着た6尺ほどの背丈の男が出迎えた
「コタロウ・オリムラ様ですね。私は裏飯と申します。」
「ウラメシ殿か、ここはあの世とこの世の境というたが?」
「はい、死んだ人間は真っ先にこちらへ知らせることになっております。貴殿方の担当はこの裏飯が担当させていただきます。」
「そうか、それでワシは天国にいくのか、地獄に行くのか?」
「いいえ、貴方は異世界に逝ってもらいます。」
「・・・・それは決定事項か?」
「勿論。」
「はあ~。分かった、行くとしよう。」
コタロウは観念して、裏飯のいう異世界に行くことになった。裏飯の援助により特典をもらい、異世界へと旅立った
「では逝ってらっしゃいませ。」




