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109話:下賜紋

島左近清興だ、ユリヤ・シュバルツ大公殿下が帰還後にブルガリア公爵が絞首刑、チャメル・シュバルツ公爵は北の塔で生涯幽閉という沙汰が下った


「「ちちうえ!」」


「おお、よしよし。」


「ふふふ。」


ワシはアルグレンとサリーナと一緒に遊んでいた。その様子を微笑むアリーナ、久しぶりの家族団らんの生活を送っている。実に慌ただしい日々を送ったが、それもまた一興、ワシはこの平穏な日々こそがワシ自身の望みだ・・・・


「左近様。」


そこへ与一が申し訳なさそうにワシらの前に現れた。アリーナも与一の顔を見て悟ったのか、アルグレンとサリーナを連れて下がろうとした


「アルグレン、サリーナ、私たちは先に部屋を出ましょう。」


「「いや!」」


「アルグレン、サリーナ、あまり母上を困らせるな、後で遊んであげるから。」


「「は~い。」」


アルグレンとサリーナを渋々、アリーナと一緒に部屋を退出した後、与一がワシに近づいた


「で、何事だ。」


「はっ!シュバルツ王国の馬車が屋敷に向かっております。」


それを聞いたワシは「やはりか」と悟った。恐らくワシが大公殿下を毒殺しようとした下手人を捕らえた事で、結果として大公殿下を救った功労者として褒美を与えるという筋書きが嫌でも頭に浮かんでくる・・・・


「とりあえず準備をするぞ。」


「ははっ!」


もう慣れたように準備を始めると、玄関口にて馬のいななきが響いた。ワシは玄関へ向かうと、馬車からルナが出てきた。ワシはいつも通り、挨拶をした


「ルナ殿、ようこそお越し下された。」


「サコン殿、出迎えありがとうございます。」


「さあ、中へどうぞ。」


ルナを客間に案内させた後、茶と茶菓子を用意させ、使用人たちを下がらせた。それを確認したルナは・・・・


「サコン殿、勅諚にございます。」


「ははっ!」


ワシはいつも通りに平伏した。ワシが平伏したのを確認し勅諚を読み上げた


「サコン・シマに陛下から【下賜紋かしもん】を賜与され、【ガルバ町】とその周辺の土地、そして金貨3000枚を与えるものなり。」


ワシは耳を疑った。土地と金貨を与えるのは分かるが【下賜紋】だと!勅諚を読み終えたルナにワシは質問をすることにした


「不躾ながらお尋ね致す。畏れ多くも陛下より【下賜紋】を賜与とは何故にござるか?」


ワシの質問にルナは予想していたのか、【下賜紋】の賜与について説明をし始めた


「はい、サコン殿は畏れ多くも陛下の御従兄弟であらせられるユリヤ・シュバルツ大公殿下を御救いなさいました。ユリヤ大公殿下はサコン殿に命を救われた事を深く感謝し、陛下に御口添えしたことで陛下より【下賜紋】をサコン殿に授けることと相成りました。正直に言うと私も驚いています。貴族以外の者に【下賜紋】を授ける事なんて異例中の異例ですよ。」


ルナ曰く、平民が陛下より【下賜紋】を賜るのは異例中の異例であり、大変名誉な事であると説明してくれた、しかも【準男爵】同様、代々引き継ぐ事ができるので、下手な貴族よりも影響力があるのだという。ちなみにシュバルツ家の家紋は【丸に六芒星】の家紋である


「申し訳ありませんが、【下賜紋】と金貨をここへ運んでも宜しいですか?」


「勿論。」


ルナが合図を送ると騎士たちが金貨3000枚入った箱と、【下賜紋】の入った箱を持ってきた。ルナは【下賜紋】の入った箱を有り難く掲げた後、箱を開けて、家紋の入った巻物を出した


「サコン殿、どうぞ。」


「ははっ!有り難き幸せ!終生の家宝と致しまする!」


ワシは有り難く【下賜紋】を賜り、それを拝見した。ワシらが代々使用する家紋は【丸に五芒星】となった。五芒星といえば古くから陰陽道の基本概念となった陰陽五行説、木・火・土・金・水の5つの元素の働きの相克を表したものであり、五芒星はあらゆる魔除けの呪符として重宝されている


「念のために聞きますが、サコン殿は貴族への昇進に興味は・・・・」


「ござらぬ。」


「ははは、そうですよね、分かってはいましたが・・・・」


「また某の昇進の話でもございましたか?」


「そうですね、流石に平民相手に【下賜紋】を賜与したにも関わらず、貴族の爵位を叙爵を辞退するなんて、我が国において異例中の異例ですからね。」


「それについては申し訳ない。」


「いいえ、いいんですよ。聞いてみただけですから。」


その後、ルナは茶と茶菓子をいただいた後、そのまま王都へ帰還した。ワシはルナを見送った後、皆を集め、陛下より賜った【下賜紋】を見せた。皆(アルグレンとサリーナ以外)は【下賜紋】を見た途端、平伏した


「皆の者、ここは王宮ではないぞ。」


「いいえ!旦那様、陛下より【下賜紋】を賜与されるのは貴族にとって大変名誉な事なのです。元貴族である私にとっても大変有り難い事にございます!」


アリーナは【下賜紋】に手を合わせ、「ありがたや、ありがたや」と拝み始めた。与一やウルザ、他の者たちもまともに【下賜紋】を見れずにただただ沈黙するばかりであった。なんだかんだあって、【丸に五芒星】は我が家の家紋となった。他に【ガルバ町】とその周辺の土地もワシの支配下になった事で、我が屋敷に【ガルバ町】の町長であるゴルベリー・クラスト、ギルド長のオークラ・ホールド、娼館【イザナミ】の主であるミリア・クリスマスといった面々が献上品持参の上で挨拶に訪れた


「我等【ガルバ町】一同、サコン・シマ準男爵公に御挨拶に伺いました。」


「まあまあ、そう堅苦しくなされるな。」


「いいえ、サコンさん、いやサコン準男爵に対して無礼は働けませぬ!」


「オークラ殿、昔からの誼ではないか。まあ、気楽にされよ。」


「準男爵様、奥方様、これからも娼館【イザナミ】の事をよろしくお願いいたします。」


「ミリア殿、アリーナも流石に困惑しておる。」


「どうか頭を上げてください!」


流石のアリーナも困惑しており、恩人であるミリアに頭を上げるよう説得を続けた。ワシはいつも通り、ゴルベリー等に任せることにした


「ゴルベリー殿は今まで通り、【ガルバ町】をお任せいたす。」


「おお、有り難きお言葉、感謝いたします。」


「他の方々も同様、このサコン・シマを支えてくだされ。」


「「「「「ははっ!」」」」」


ワシが【ガルバ町】と周辺の土地を得た事で、交通の要衝を抑えたということである。


「さて、これから忙しくなるな。」


「「ちちうえ!」」


「おお、よしよし。」


ワシはいつも通り、アルグレンとサリーナと一緒に遊びつつ、今後の行く末を考えるのであった。その頃、王都ではロバート・シュバルツとユリヤ・シュバルツがお茶会を開いていた。参加した貴族らを余所に厳重な警備の元、国王ロバート・シュバルツと大公ユリヤ・シュバルツは離れた席にて話し合いをしていた


「陛下、サコン・シマの事ですが、どう思われますか?」


「どうとは?」


「今のサコン・シマの身分は平民で爵位は【準男爵】ですが治める領土の広さ、そして財力は下手な貴族よりも凌駕しております。現段階で【伯爵】に相当するほどの力をもっております。その者を貴族にせず、平民のままにするのは如何かと存じますが?」


「その本人が貴族に全く興味がないのだ、貴族の爵位をチラつかせても、頑として動かぬ。」


「なるほど、サコン・シマほど御しにくい男は他におりませぬな。」


「ああ、ジュリアス王国から【準男爵】の爵位を賜った事で、あやつはシュバルツ&ジュリアス両国の繋がりを持ったという事になる。下手な貴族よりも扱いにくいわ。」


ロバートもユリヤもサコン・シマの恐ろしさを改めて感じていた。最初は一介の武人として活動していたが、【為政者】という適性を持ち、奴に開拓をさせたら、大成功を収め、地主に就任し、多大な功績により【準男爵】の爵位をシュバルツ&ジュリアス王国から叙爵され、領土を拡大、挙句の果てには【下賜紋】を賜与される等、これほど末恐ろしい男は他にいない・・・・


「ところで陛下はいつになったら行幸されるのですか?」


「・・・・まだ決まっておらぬ。」


「そうですか、陛下は多忙ですから花見を楽しむ機会がありませんからね♪」


「うむ(だから、結婚できねえんだよ、お前!)」


ユリヤは島左近の領地で花見を楽しんだが、ロバートは花見を楽しめず、多忙な日々を送り、従妹の花見自慢にムカッとしつつ、御茶会は終了したのであった






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