108話:露見
島左近清興だ、ワシらは今はユリヤ・シュバルツ大公殿下のおもてなしをしている最中である。大公殿下は花見を楽しみつつ、料理等を召し上がられた
「準男爵、今宵は花見、感じ入ったぞ。」
「有り難き幸せ。」
「今宵の宿は用意しておるか。」
「ははっ!いつでもお迎えできるよう準備してございます。」
「案内しろ。」
「ははっ!」
花見を終えて、大公殿下は用意していた宿へ案内した。騎士の方々が寝泊まりできる場所を確保している。騎士たちは用意した宿で寝泊まりをしつつ交代で宿の警備をしていた。ワシは大公殿下は接待を続けた。夕餉は最高級の霜降り肉を使った炙り肉を用意した。勿論、毒味は済んでいる。大公殿下はそれを味わいつつ、葡萄酒を飲んだ。それらを食べ終わるとワシの方を向いた
「準男爵、今宵のもてなし、感じ入ったぞ。」
「ははっ!有り難き幸せ!」
「うむ、湯浴みの用意はできておるか。」
「はっ!既に!」
「そうか、ご苦労。屋敷へ帰れ。」
「ははっ!」
その後、左近は許しを得て屋敷へ帰った後、大公殿下は大浴場の風呂に入った。側付きの侍女が世話をしつつ、湯船に入って疲れを取っていた
「ふぅ~、今日は疲れた。」
「殿下、お身体をお清め致します。」
「うむ。」
一旦、湯船から出て、石鹸により泡立った手拭いを使って、ユリヤの体を洗い続けた
「おい、そこはくすぐったい。」
「はっ、申し訳ありません。」
「はぁ~。」
ユリヤの鍛え抜かれつつも彫刻のように美しい裸体を丁寧に洗う侍女にユリヤは・・・・
「(こんなことだったら自分でやった方がいいわ。)」
内心、そう思いつつも侍女たちの奉仕を受けた。体を洗い終わり、再び湯船に浸かった
「ふぅ~。」
ある程度、湯船に浸かった後、風呂から上がり、侍女たちに体を拭いてもらい、寝間着に着替え、部屋へ戻ろうとしたところ、執事長のソロモンが待機していた
「ソロモン、如何した?」
「サコン・シマ準男爵より知らせが参りました。殿下に毒を盛ろうとした者を捕縛したと。」
それを聞いたユリヤは眉を潜めた
「そうか、で、下手人は?」
「はっ!ブルガリア公爵の依頼で動いたと。」
ブルガリア公爵、かつて自分が大公家を継ぐのを反対した男尊女卑思考の卑劣漢、忘れもしない
「・・・・そうか、相分かった、下がって良い。」
「ははっ!」
執事長と侍女を下がらせた後、ユリヤはベッドに座り、一息ついた
「さて寝るか。」
ユリヤはその後、ベッドに入り、就寝したのである。自分を毒殺しようとした憎き男を思いつつ・・・・
「(やはり殺しておくべきだったわ。)」
話を遡ると、屋敷に帰った島左近は警備にあたった【お庭方】よりある知らせが届いた
「怪しき輩を捕縛した?」
「はっ!知らせによりますれば、夕餉に毒を盛ろうとした輩がおり、そやつを捕縛した上で拷問致しました。それである者の依頼で動いたと。」
「ほぅ~、誰だ?」
「はっ!ブルガリア公爵の依頼だと申しております!」
「左近様、この事、大公殿下にお知らせ致しますか?」
「そうだな、ワシが行こう。」
ワシはすぐに大公殿下が滞在している宿へ向かった。突然、ワシが現れた事に気付いた騎士がワシと対応した
「大公殿下に火急の用があって参った。お目通り願いたい。」
「殿下は今はお湯浴みの最中だ、明日にしていただきたい。」
「一刻も争う事態にござる!」
「何かあったのですか?」
そこへ騒ぎを聞き付けて執事長のソロモンが現れた
「執事長殿、急ぎ大公殿下にお知らせしたき事がござる。」
「それなら私が承りましょう。」
「畏れながら耳打ちにてご無礼仕る。」
ワシは耳打ちにて執事長に知らせた。事を知った執事長は驚きワシに問いかけた
「それは誠で!」
「勿論、下手人も捕まえてござる。」
「そうですか、わざわざお知らせいただきありがとうございます。」
「では某はこれにて。」
そして現在に至るのである。左近等は下手人が自害せぬように、道具を回収し舌を噛ませないように口枷をした。勿論、見張りを立て四六時中、監視を続けたのである。そして朝になり、ワシは乾パン等を食した後、大公殿下の下へ参った。騎士たちの許可を得て待機してると、そこへ大公殿下が現れた
「ん、準男爵か。」
「おはようございます。」
「例の事はソロモンより聞いた、大儀である。」
「ははっ!」
「朝食は済んだのか。」
「既に。」
食堂に入った大公殿下は用意された朝食を一見した後、ワシの方を向いた
「毒は入っていないであろうな。」
「御懸念あらば某がお毒味を致しますが。」
「・・・・冗談だ、さて頂くか。」
勿論、既に何回も毒味は済ませており、何の問題もなく食事を取る大公殿下にワシはその様子を待機しながら見ていた。朝食を済ませた後、大公殿下は帰る準備をし始めた。ワシらは見送りの準備を進めると共に例の下手人を逃げられないように眠り薬を飲ませた後、口枷と足枷をし、手錠をした上できつく縄を縛り付けた。そして大公殿下が宿から出てきた時点でワシらは平伏した
「苦しゅうない、面を上げよ。」
「「「「「ははっ!」」」」」
「サコン・シマ、貴様のもてなし、大変満足したぞ。」
「ははっ!有り難き幸せ!」
「して下手人は?」
「こちらに。」
【お庭方】によって連れられた下手人を大公殿下の前へ連れてこさせた。睡眠薬で眠らせ、口枷と足枷をし、手錠を嵌められ、縄で縛り付けられた状態を見た大公殿下は・・・・
「サコン・シマ、念のために下手人の見張りを貴様の配下の者に任せたいと思うがどうだ?」
「ははっ!ご存分に!」
「うむ、ではさらばだ。」
大公殿下は馬車に乗り、そのまま王都へ帰還した。それを黙って見送ったワシらは念のためにある事を行った
「サスケ。」
「ははっ!」
「主は手の者たちを引き連れて、これより先に王都へ行き、ブルガリア公爵を捕縛せよ。」
「承知致しました!」
サスケは【お庭方】を連れて、一行よりも早く王都へ向かった。数日が経ち、王都のブルガリア公爵邸では、ブルガリア公爵が今か今かと知らせを待っていた
「まだ知らせが来ぬか!」
「いいえ。」
「くそ!あの女が死ねばワシが贔屓にしているチャメル公爵を大公家を継がせる約束が!」
ブルガリア公爵は自分と懇意にしている王族出身であるチャメル・シュバルツ公爵を大公家に据えようと前々から計画しており、ユリヤ・シュバルツの命を狙っていたのである。勿論、ユリヤ・シュバルツの大公家に就任に公然と反対しており、両者は険悪な状態である
「当主は男子相続こそが相応しい、女系などもっての他だ!」
ブルガリア公爵は自分の部屋で文句を垂れつつ、参内の準備を進めていると、扉からノック音がした
「うむ、入れ。」
許可を出すが誰も入ってこなかった。不審に思ったブルガリア公爵は扉を開けるとそこには誰もいなかった
「何だ、一体誰・・・・ぶふ。」
突然、顔に手拭いのような物に覆われ、ジタバタと抵抗したが、やがて眠気に誘われ、そのまま眠った。次に目覚めた時には物が雑多な置かれた部屋におり、複数の男が自分を見下ろしていた
「な、何じゃ、貴様ら!私を誰だと!」
「うるさい。」
「ぐはっ!」
馬を躾けるための鞭をブルガリア公爵の顔面に浴びせた。ブルガリア公爵は何が何だか分からずに呆気に取られたが、すぐに食って掛かった
「き、貴様ら、私を誰だと・・・・ぶひ!」
ブルガリア公爵の強気な態度に再び顔面に鞭を食らわした。ブルガリア公爵は何度も食って掛かる度に鞭を食らい続け、顔は原型を留められないほど酷くなり、次第に耐えきれず命乞いをするようになった
「や、やめへくへ・・・・」
「貴様がユリヤ大公殿下を毒殺しようとした事は下手人の自白で露見している。」
「な、なんはと・・・・」
「その前に貴様を捕らえよと命があってな。さてこれより拷問の続きを行う。これまでの事を洗いざらい話してもらおうか。」
「ひゃ、ひゃめへくへ・・・・」
「安心しろ、死なない程度に痛め付けてやる。」
その後、サスケらの強烈な拷問によって、完全に心が折れてしまい、計画を暴露した。一方、ユリヤ・シュバルツは王都へ帰還し早速、王宮へ参内した。勿論、捕らえた下手人を連れての参内である。ユリヤの帰還を知ったロバート・シュバルツはすぐに会うことにした
「ユリヤ、花見は楽しかったか?」
「はい、お陰さまにて。ついでに私を毒殺しようとした下手人を捕まえました。」
「何?」
「はい、下手人の自白によってブルガリア公爵の依頼で私を毒殺しようといたしましたが、サコン・シマ準男爵によって事が露見し、失敗に終わりました。」
「そうか、あの者が・・・・」
「陛下、直ちにブルガリア公爵の捕縛をしたいのですが?」
「うむ、実はな公爵は失踪した。」
「何ですと!」
ロバート曰く、突然姿を消したのだと言う。それを聞いたユリヤは、事が露見するのを恐れて出奔したと思っていた時、側近が現れロバートに耳打ちをした
「何!公爵が木に縛り付けられているだと!」
「はい!」
「ユリヤ、どうやらブルガリア公爵は逃亡に失敗したようだぞ。」
「おお!」
早速、ロバートとユリヤはブルガリア公爵の下へ向かった。二人が目にしたのは、既にボロボロな状態で木に縛られている状態のブルガリア公爵を見かけた。ブルガリア公爵の隣に【ユリヤ・シュバルツ大公殿下の命を狙った下手人】と張り紙が張ってあった
「ひ、ヒイイイイ!」
ブルガリア公爵は二人を見た途端、恐れおののき始めた
「も、もうひわへありまへん・・・・もうゆるひて!」
後にブルガリア公爵は恐怖のあまり洗いざらいぶちまけた、その様子を見たロバートとユリヤは養豚場の豚を見るような目でブルガリア公爵を眺めていた。その後、ブルガリア公爵は爵位剥奪の上で絞首刑に処された
「私は無実です!北の塔に入るので命ばかりは!」
「2度と世に出ないことを誓うか?」
「はい、一生幽閉生活を送ります!」
「そうか、もし破れば分かっておろうな?」
「はい、神明に誓って!」
チャメル・シュバルツ公爵はというと此度の一件に関わっていないこと、本人が爵位を返上をし自ら申し出て、北の塔にて生涯、幽閉生活を送ることを決着がついたのである




