107話:女大公来訪
島左近清興だ、あれから約1年半の歳月が経ち、ついに【コマキ丘陵】に桜が咲き乱れたのである
「与一、ついに完成したな。」
「御意。」
予てから計画していた桜の名所作りがようやく実り、ついに我が領地に桜の名所が誕生したのである
「綺麗ですね、旦那様。」
「あぁ、真っ先にお主に見せたかった。」
ワシらは早速、下見ついでに花見見物を開始した。ワシと与一、アリーナもウルザ、アルグレンとサリーナとヨーム、サマノスケとユカリとコタロウ等が整備された公園と咲き乱れる【四季桜】を眺めていた
「フォフォフォ、見事な桜じゃ。」
「こんな綺麗な桜は久し振り。」
「あぁ、故郷の桜を見たとき以来だ。」
「主様、お前さん、早く行きましょう!」
「落ち着け、ウルザ!」
「「「さくら、きれい!」」」
ワシらは花見を楽しみつつ、さる御方に知らせることにした
「左近様、大公殿下にお知らせせねばなりませぬな。」
「そうだな、気が重いわい。」
去る御方、それはユリヤ・シュバルツ大公殿下である。国王ロバート・シュバルツの従兄弟にして大公家の女当主であるユリヤ大公殿下から完成したことを知らせねばならないのである
「さて書状を書くことにしよう。」
【ユリヤ・シュバルツ大公殿下へ】
「今、【コマキ丘陵】に400本もの桜が咲き乱れております。もしお決まりであれば書状にてお知らせのほど、お願い申し上げます。我等一同、大公殿下のお越しをお待ち申しております。」
【サコン・シマより】
書状を書き記した後に封をし、文箱に入れ、早便にてシュバルツ大公家に届けた。それから数日後、シュバルツ大公家に左近の書状がユリヤの下に届いた
「殿下、サコン・シマ準男爵より、書状が届きました。」
「ソロモン、開けろ。」
「はっ!」
執事長が紐をほどき文箱を開けると一通の封のついた書状が入っていたソロモンは懐から小刀を取り出し、封を切った後、書状をユリヤに渡した。ユリヤは早速、書状を広げ、内容を拝読した後、ペンを取り紙を広げ、書状を書いた
【サコン・シマ準男爵へ】
「早速、知らせを寄越した事、ご苦労であった。早速だが〇月〇日に参る事にする。私はロミオのボンクラと違って、急いだりしないから安心して、迎える準備をしてくれ。では楽しみにしている。」
【ユリヤ・シュバルツより】
「ソロモン、この手紙を早速、サコン・シマに届けよ、」
「かしこまりました。」
ユリヤの書いた書状はすぐに早便にて送られ、数日後に左近の下に届けられた。書状の内容を拝読した左近は与一に命じて皆を呼んだ
「さて皆に集まって貰ったのは他でもない。さる御方が此度、【コマキ丘陵】の視察をしに参るそうだ。」
するとウルザがワシに質問をしてきた
「主様、その去る御方とは、どなたなのですか。」
「ユリヤ・シュバルツ大公殿下だ。」
それを聞いた全員(ワシと与一を除く)は驚きの表情を見せた。そう王族の来訪は今度で2度目(1度目はロミオの視察騒動で来訪中止)である。まさか急にやってくるんじゃないのかとヒヤヒヤしているのを表情で分かったワシは皆を安心させるために日付を教えた
「安心せよ、〇月〇日に来る。ロミオ王太子と違い、ゆっくり来るそうだ。」
「そうですか、私もそれを聞いて安心して準備ができます。」
妻のアリーナを筆頭に安堵の声があふれ出た。だが準備は進めないといけない、ワシらは入念に計画を立てた後に実行した。民たちにも王族の来訪が来ることを事前に知らせ、領地を上げてお迎えをする準備を進めた
「与一、天候の方はどうだ。」
「はっ!今のところ、雲一つない快晴でございます。」
「油断するなよ、当日になって雨天だったら不味いからな。」
当日になって天候が悪化してせっかくのもてなしが台無しになる可能性があるため、天候の観察を行っていた。忍びの術には観天望気というものがあり、自然現象や生物の行動の様子などから天気の変化を予測するらしい
「旦那様、貢ぎ物はどれにしましょう。」
「うむ、ユリヤ大公殿下は常に男装しておられると聞く、青芋の上布を献上いたそう。」
事前に大公殿下の好みをくまなく調べ、最高級の青芋上布を用意した。服の寸法は本人がいないとできないため、我等にできるのは生地を用意するだけである。他に様々な工芸品を用意した。【コマキ丘陵】では道端に石ころがあれば片付け、ゴミがあれば掃除をした
「いいか、失礼があってはいかんからな。」
「「「「「ははっ!」」」」」
一応、大公殿下が宿泊する宿を準備し、最高級の部屋を用意した。料理も方も一流の料理人を雇い、この土地で取れた作物を使った料理を振る舞う事にした。一通りに準備を終えて、後は大公殿下を出迎えるだけである。それから数日後、【お庭方】の知らせでもうすぐ来訪するとのこと・・・・
「皆の者、御一行が御到着する、すぐに準備せよ!」
「「「「「ははっ!」」」」」
今日は運良く曇り1つない快晴、ワシらはいつでも出迎える用意をすると、そこへ騎士団に囲まれ、一台の馬車がこちらに向かっていた。ワシらは唾を飲みながら待つと、騎士団と馬車が寸前で止まった
「ユリヤ大公殿下の御成りである!」
「「「「「ははっ!」」」」」
一人の騎士がそう宣言すると、ワシらは平伏した。すると馬車戸から一人の女性が出てきて、左近らの前に現れた
「くるしゅうない、面を上げよ。」
「「「「「ははっ!」」」」」
凛とした声と同時にワシらは頭を上げた。そこにいたのは立派な男物の服装、金髪で癖のないロングヘアー、色白の肌、キリッとした目つきと鋭い眼光、気品に溢れる美貌、そして身長が175cmあろうかというほどの長身の女当主がワシらを見据えていた
「貴様がサコン・シマか?」
「ははっ!お初にお目にかかりまする。」
「よき面構えだな。」
「畏れ入りまする。」
「さて、あれが【コマキ丘陵】か、なるほど見事に咲き誇っているな。」
「ははっ!」
「うむ、案内せい。」
「ははっ!」
ワシらは大公殿下を【コマキ丘陵】へと案内した。騎士団は周囲を警戒しながら、目的地へと護衛する様にワシらは感心した。そして【コマキ丘陵】に到着し、そこを登るとそこには整備された公園と【四季桜】が大公殿下を迎えた
「おお、これは美しい。」
「お褒めにいただき恐縮にございます。」
ワシらは予め花見ができる絶好の場所を用意し、大公殿下を迎えた。大公殿下は【四季桜】を眺めながら、余韻に浸っていた
「うむ、やはり土地ごとに桜は色々な顔を持っておるな。サコンよ、この桜はどこで取り寄せたのだ?」
「申し訳ありませぬ、生憎、桜の苗木は商人たちに任せたのでどこで取り寄せたかは存じ奉らず。」
「ふむ、そうか。まぁ、見れればそれで良いか。」
「殿下。貢ぎ物を用意致しました。どうぞ、お納めください。」
「うむ、殊勝なり。」
ユリヤの前に貢ぎ物が続々と運ばれた。最高級品の品の数々、かかった金子も馬鹿にならないのである
「お料理とお酒をお持ちしました。」
「うむ、苦しゅうない。」
運ばれた料理と菓子や酒が大公殿下の前に運ばれた。ワシはまず警戒を持たないように、ワシ自ら毒味をした
「畏れながら、某がお毒味を致します。」
ワシは大公殿下の前で料理や菓子や酒を味わいながら、毒が入っていない事を知らせた。毒が入っていないことを確認すると早速、料理等に手をつけた
「うむ、では頂くことにしよう。」
大公殿下は黙々と料理と菓子と酒を味わった。やはり王族の出か、料理等を頂く時の作法が美しく、無駄がない。時々、桜を見ながら、酒の入ったグラスを飲んだ
「ふぅ~、花見をしながらの酒は格別だ。」
その後、大公殿下は料理等を味わいつつ、花見を楽しんだのである




