106話:解散
島左近清興だ、ワシらは【ガルバトロズ】の巣くう悪の巣窟であるギュンター・フェスティバルの暗殺に成功した。ギュンター・フェスティバルの死はワシの予想以上の反響を呼び起こした
「まさかこれほどとはな。」
ワシは新聞を見て、ギュンター・フェスティバルの死によって国内外でかなりの反響を呼び起こしたらしく、【ガルバトロズ】の過激な信者による騒動が一気に沈静化したようである
「まぁ、何がともあれ無事に片がついたようだな。」
ワシは【ガルバ町】で隔離生活を送っていたサマノスケを呼び戻し、事の詳細を話した
「肩の荷が降りた気分です。」
サマノスケにとってはギュンターの存在は重荷としか言いようがなかったのである。奴の顔がどこかスッキリした面持ちだった
「サコン殿、実はユカリと復縁することになったんです。」
「何、それは誠か!」
【ガルバ町】に滞在していたサマノスケはユカリとの時間が増えたらしく、自然とそういう関係になり、復縁したそうである。ワシとしては二人が元通りの関係に戻ったことが嬉しい限りだ。それからワシはサマノスケと共にコマイラの下へ向かった。そうギュンターの死を知らせるために・・・・
「ん、おお、サマノスケと・・・・どちら様?」
畑を耕していたコマイラはワシの姿を見て、警戒し始めた
「大丈夫です、この御方は敵ではありません。」
サマノスケが説得をすると警戒心が薄れ、ワシの方を向いた
「すいません、私はサマノスケの知り合いでコマネンと申し・・・・」
「隠さずとも結構、コマイラ殿。」
コマイラは驚愕した表情でワシを注視した
「申し遅れたな、ワシはサコン・シマ、この領地の地主であり、そなたをここへ隔離した者だ。」
「えっ!」
「まぁ、ここではなんだ。中で話そう。」
ワシらは早速、家に入った後、椅子に座った。ワシはこれまでの経緯を話した。コマイラが何故、警備隊に突き出さず、隔離したこと、コマイラが死亡、または警備隊に捕縛された時の【ガルバトロズ】の今後、そしてギュンター等の暗殺等を全て話した。それを聞いたコマイラの表情が曇っていた
「そうですか、私がここにいるのはそういう理由からですか。」
「納得していただけたかな。」
「はい、自分の事ばかりにかまけて、そのような事になるとは考えもつきませんでした。」
「それでコマイラ殿は如何いたすのだ?」
現在のコマイラは全国指名手配の身であり、未だに【ガルバトロズ】の教祖として君臨している。いずれ後継者争いが起きるのは必須であり、【ガルバトロズ】の行く末をどうするのかをコマイラに尋ねた
「コマイラ殿、今の【ガルバトロズ】を抑える事ができるのはそなただけだ。そなたの鶴の一声で解決できるやもしれん。」
「教祖様、どうか御決断を。」
左近とサマノスケの説得に耳を傾けたコマイラは、溜め息をついた後、決心したような面持ちでワシらを見つめた
「解散します。」
コマイラの口から【解散】という言葉が出てきた。自分が作った【ガルバトロズ】を解散させる事で全てを終わらせようと決めたのである
「ならば、そなたの口で直接、信者たちに申されよ。」
「はい、分かりました。」
「本部までは護衛をつける、それで良いか。」
「はい。」
「コマイラ殿、人の上に立つ者は迷いがあってはならぬものだ。己の引き際を誤るなよ。」
「・・・・ありがとうございます、今まで御世話になりました。」
コマイラはワシらに頭を下げた後、【お庭方】の動向の下、【ガルバトロズ】本部へと帰還することにした。道中、賞金稼ぎや警備隊の目を掻い潜りつつ、ようやく【ガルバトロズ】本部に到着したのである。コマイラは顔馴染みの門番に声をかけた
「久し振りだな。」
「き、教祖様!」
「皆を広場に集めてくれないか。」
「は、はい!」
コマイラの帰還に信者たちが広場に集合した。信者たちは今か今かと待ち焦がれていると、教祖であるコマイラが現れた
「教祖様だ!」
「教祖様!」
コマイラは久し振りに会う信者たちを前に緊張しつつも宣言をした
「皆の者、不在の間、ご苦労であった。今日、集まってもらったのは他でもない。本日を持って【ガルバトロズ】を解散する!」
教祖コマイラの口から【解散】という言葉が出た瞬間、一斉に質問責めを食らった
「なぜ、解散を!」
「我々の何がいけなかったのですか!」
「我等は破戒信者等の鎮圧をしました、それを何故!」
「静まれ!」
コマイラは大声で信者たちを黙らせた。そして自分自身の苦悩と決意を語った
「皆の者、私は人民救済のために、この【ガルバトロズ】を立ち上げて数十年の歳月が流れたが、私欲に駆られた者たちによって今では犯罪組織として悪名をもたらしてしまった。ひとえに私の不徳のいたすところである。」
それを聞いた信者たちを皆、苦い顔をした。それでもコマイラは演説を進めた
「私は【ガルバトロズ】を捨て、流浪の旅に出た。私にとっては過酷で険しい旅であったと同時に人の温かさも感じた。」
いつしか信者たちは静かにコマイラの演説を聞いており、中には涙を流す者もいた
「私が何故、解散に踏み切ったのかは、ギュンターの死だ。奴が死んだことによって【ガルバトロズ】に巣食う膿が取り除かれた。だが一度悪名がついた組織はもう元には戻らない、よって私は解散を決意した。皆の者、私に構わず自分の信じる道を歩んでほしい。そして今までありがとう。」
コマイラはそう言い残した後に、信者たちに頭を下げた後に退出した。その光景を見ていた信者たちは老若男女を問わず涙を流していた。それぞれの想いが走馬灯のように浮かび、そして現実に引き戻されたのである。コマイラは本部を出たと同時に、警備隊が待ち構えていた
「コマイラ・ガルバトロズだな。」
「そうだ。」
「貴様に逮捕状が出ている。」
「残念だが、捕まるわけにはいかないな。」
「そうはいかん。貴様を逮捕せねばならぬ!」
警備隊がコマイラを取り囲み、捕縛しようとした瞬間・・・・
「ごほっ!」
コマイラの口から赤黒い血が溢れだした。その様子を目撃した警備隊は驚愕した
「どうゆうつもりだ!」
「私も大罪人だ、自分の罪は自分自身で償うさ・・・・」
コマイラはそういうと、そのまま倒れ、息を引き取った。【ガルバトロズ】教祖であるコマイラ・ガルバトロズの人生はこうして幕が落とされたのである。検死の結果、コマイラの死因は服毒自殺と断定された。コマイラの死と【ガルバトロズ】の解散は国内外に響き渡ったのである
「あの者なりのケジメをつけたのであろうな。」
ワシは、コマイラの死亡と【ガルバトロズ】の解散を表紙に飾る新聞を眺めながら、あの男は自分なりにケジメをつけ、責任を取って自害をしたのである
「まあ、内乱が起きなくて幸いだったが。」
コマイラの死亡を知ったサマノスケは複雑な心境だった。立身出世を夢見たが、夢が簡単に破れ、やがては物乞い同然の暮らしをしていたところ、コマイラに拾われたのである。コマイラを命の恩人として敬愛しつつ、【ガルバトロズ】に巣食う悪を排除していった。脱退する時も何も言わず黙って見送ってくれた。その後、再会しかつての恩から彼を助け、共に支え合って生きていた。その恩人が【ガルバトロズ】を解散させ、最期は自殺したのである
「サマノスケ、大丈夫か。」
「ああ、大丈夫だ・・・・ユカリ、俺にとってあの御方は命の恩人だ、世間がどう言おうともそれは変わらない。あの御方は本当に人民救済に心を砕かれた、だからこそ空しく感じてしまう・・・・」
「サマノスケ・・・・」
コマイラの死を知ったサマノスケは涙を流し、ユカリに色々な思い出を語った。ユカリは何も言わずに黙って聞き、サマノスケを慰め続けたのである。その後の信者たちはというと、それぞれ教団を作り、コマイラが目指した人民救済に立ち上がった。各教団の目的は別だが唯一の共通点は自殺したコマイラ・ガルバトロズを主宰神として崇め、そして彼の理想を叶えようとしたのである。コマイラ・ガルバトロズが再評価されるのが彼が死んでから約400年後であった




