101話:仲間割れ
誤字報告ありがとうございます
島左近清興だ、現在ワシは返答の書状作成に奔走している
「はぁ~、これで半分。」
ワシは半分を書き終え、一旦手を休めていると扉からノック音がし、許可を出すと与一が入ってきた
「左近様、お茶と塩味饅頭をお持ちしました。」
「おお、御苦労。」
ワシは書状を別の場所へ移すと、与一は茶と茶菓子を置いた。ワシは塩味饅頭を味わいつつ、茶を一服した
「ふぅ~、ようやく半分終えたところだ。」
「いやぁ~、大変ですな、人付き合いも。」
「全くだ、地主に町長、そして【準男爵】、やることがいっぱいにあって、気が休まらぬ。」
ワシは塩味饅頭と茶をいただいた後、残りの返答を書こうとした所、再び扉からノック音がした。ワシが許可をすると、入ってきたのはウルザだった
「主様、サマノスケさんが参りました。」
「サマノスケが?客間へ通せ。」
「はい。」
ウルザが退出した後、ワシらは身嗜みを整え、客間へ向かうと、長椅子に座らずに待つサマノスケの姿があった
「お待たせ致した。」
「あっ、サコン殿、娘さんのご誕生おめでとうございます。」
「ありがとう、ところで何用で参られたのだ?まさか祝いの言葉だけで参ったわけではないだろう。」
「はい、実は怪しき馬車を見かけました。」
「詳しく教えてくれ。まずは座られよ。」
ワシはサマノスケを長椅子に座らせた後、怪しき馬車について聞いた。サマノスケいわく、畑仕事をしていると視線を感じ、ちらっと視線のした方へ向くと、一台の馬車を見かけた。遠くで分からぬが恐らく3人の男がサマノスケを注視していたらしい。馬車が出発したのを確認した後、すぐに畑仕事を中断し、ワシの下へ訪れたという
「その怪しき輩に心当たりがあるのか?」
「いいえ、俺はないが向こうは俺の事を知っているみたいで、もしかしたら前の職場の関係者かも。」
前の職場、つまり【ガルバトロズ】の者の可能性が高い。ワシは馬車の特徴を聞くと、サマノスケは遠目ながらも、特徴を教えてくれた
「はい、どこにでもある普通の馬車でしたな。」
「左近様、馬車ともなれば使う者は限られますな。」
「うむ、サマノスケ殿、わざわざ知らせてくれて忝ない。それとコマネンの下には行かない方がいい。奴等が主の後をつける可能性があるからな。」
「分かりました。」
サマノスケは「畑仕事があるから」と申した後、そのまま帰った。ワシは与一に命じて【お庭方】と共に例の馬車と3人組について調べた
「与一、任せたぞ。」
「はっ!」
そういうと与一は部屋を退出した。さてワシは残りの返答の書状を書かねばな・・・・
その頃、例の3人組を乗せた馬車は【サコン町】に到着し、宿に宿泊し、部屋の中で話し合いが行われた
「まさかサマノスケがここにいるとはな。」
「あぁ、厄介な事になったな。」
「どうするよ。」
「ギュンター様から町での捜索って言われたからな。町の捜索だけにしよう。」
「「異議なし。」」
例の3人組はギュンターの命令通りにコマイラがいないか町中を確認することにした。そんな3人組を監視する与一と【お庭方】、すぐに特定された
「あやつらで間違いないか。」
「【サコン町】に停まっている馬車は一台、馬車の持ち主はあの3人組と分かりました。」
「そうか。」
「どうしますか、命令あらば捕縛しますが?」
「いや、まずは様子見だ。」
与一もすぐには動かず、まずは主である島左近の考えを聞いてから行動することにした。とりあえずは監視だけに留まった。例の3人組は監視されている事に気付いておらず、町を散策し始めた
「一通り見たら、ここへ集合だ。」
「「おう。」」
別々に別れる3人を【お庭方】が後をつけた。与一は先に屋敷へ戻り、島左近に状況を報告した
「そうか、やはり奴を探していたのか。」
「如何いたしますか?」
「放っておけ。」
「宜しいので?」
「ああ、奴らは町に教祖がいるか確認をしているだけだ、奴がいないと分かれば、いずれここから立ち去るであろう。」
「町だけで済めば宜しいですが・・・・」
「見張り番にも知らせたか?」
「はっ!既に。」
奴らが捜しているコマイラ・ガルバトロズは町にはいない。ワシが隔離した場所にて生活をしている。勿論、見張り台による監視もある。奴らがここまで辿り着くのに、どれほど時が掛かるか分からぬが、このまま諦めてくれると有り難いのだが・・・・
「ところで左近様、返答の方は・・・・」
「既に終わらせたわ。」
「それは宜しゅうございましたな。」
「ああ、次は【コマキ丘陵】の報告書だがな・・・・」
「・・・・もしかして奴らを放っておけというのは。」
「ああ、これ以上、面倒事を増やしたくないのだ、奴らは監視だけで手を出すな、良いな。」
「ははっ!」
ワシの下には【コマキ丘陵】に関する報告書が次々と届けられた。桜の名所にするためには余計な仕事を増やしたいないのが本音である。例の3人組の事なんか正直どうでもいいが、もしコマイラの下に辿り着くのも面倒だからな。その後、3人組を監視していた【お庭方】からの報告では、コマイラが町にいないと判断し、早々に引き上げるらしい
「そうか、ご苦労。引き続き監視せよ。」
「「「はっ!」」」
【お庭方】がスッと姿を消した後、残されたワシと与一はというと王都に潜伏しているギュンターについてだが・・・・
「左近様、ギュンター・フェスティバルは如何いたしますか?」
「奴はすぐには動かん。側近らが帰るまでは大人しくしているだろう。」
「もし動けば如何いたします?」
「その時は・・・・」
その頃、側近3人組は【サコン町】にコマイラがいないことを確認すると、すぐに引き上げることにした
「ここにいなかったな。」
「ああ、やはり警備が厳重なところにいるわけないよな。」
「だな♪」
3人組は宿で一泊した後、馬車に乗り、そのまま王都へ帰還した。3人組を監視していた【お庭方】の報告によって知った。ネズミがいなくなってくれた事に安堵した
「左近様、奴らは引き上げましたな。」
「ああ、問題はギュンターだな。」
数日が経ち、3人組は王都にいるギュンターの下へ無事に辿り着き、【サコン町】にコマイラがいないことを報告した。報告を聞いたギュンターは腑に落ちない顔をしていた
「うむ。」
「ギュンター様?」
「全ての町を回ったが、どれもハズレ・・・・」
ギュンターはコマイラの側近くにいて、奴の性格を推理し、奴が何を考えどうするのかを自身の頭脳で導き出したが、ここにきて歯車が狂い始めた。まさか自分の計算がはずれたか・・・・
「ありえない、奴の事は私が誰よりも知っているはずだ!」
「ぎゅ、ギュンター様!」
「落ち着かれよ!」
激高するギュンターに側近らはなだめようとした。ギュンターはふとある結論に達した
「まさか誰かがコマイラを匿っているのでは・・・・」
それを聞いた側近らは内心、呆れかえっていた。指名手配されているコマイラを匿う愚か者がどこにいるのだと・・・・
「ギュンター様、とうとう耄碌されましたか?」
「何!」
「だってそうでしょう、追い詰められすぎて我を失ったとしか言いようがありませんよ。」
「ワシが追い詰められているだと。」
「そうでしょう、追手にも追いかけられるし、指名手配もされる。一緒にいる我等にもとばっちりを食らいますよ。」
「貴様等、誰のおかげでいい思いをしたと思ってるんだ!」
「今となっては裸の王様ではありませんか?」
側近たちから耄碌した、血迷っている等、呆れと嘲笑を向けられた。断じて自分は耄碌も血迷ってもいない、至って正常だとこの場で言いたいが、もし騒ぎを聞きつけて、警備隊が駆け込まれるのも厄介である。ギュンターはこれ以上、争うのは得策ではないと感じ、引き下がることにした
「・・・・すまなかった。少しばかり頭に血が上ってしまった。」
頭を下げるギュンターに側近らは益々、図に乗り始めた
「次からは外さないようにしてくれ。」
「そうだ、俺たちはあんたの駒使いじゃないんだからな。」
ギュンターはこの場で斬り殺そうと思ったが、多勢に無勢、逆に返り討ちになる可能性がある。こうなったら我慢するしかないと堪え続けた
「(こやつら、絶対に許さぬ・・・・)」




