2日後②
「そうだねぇ…」
ハルキは眉間に皺を寄せながら昨日と一昨日のことを思い出そうとした。
「型がつくぞ」
カーヤがそう言って眉間の皺をグイッと指で伸ばしたが、そう言う本人にくっきり消えない溝があるのだから説得力があるようなないような。
「仕方がないじゃないか。思い出すと訳がわからないし、不愉快だっ!」
ハルキがそう言うとカーヤの大きな手がハルキの頭を優しく撫でた。
「でもさぁ、思い出すって言ったって…」
ハルキはカーヤが入れた紅茶を口に運びながら、嫌々ながらも口を開いた。
「ずうっと、お前が殺したんだろ、何で殺したんだ、の繰り返し。それしか言うことないの、ってくらい。特に情報らしいものはなかったんだよね」
「ふーむ…」
ハルキの言葉にカーヤは腕を組んで考え込んだ。
「だいたいさぁ、マエカさんって誰って話よ」
ハルキが口を尖らせてそう言うとカーヤは少し首を傾げた。
「マエカ、マエカ…なんか…うーむ」
出てきそうで出てこない、とカーヤが頭を掻きむしる。
「えっ、カーヤ、なんか知ってるの?」
「それが思い出せんから…」
ハルキが驚いてカーヤを見ると、困ったような顔をして首をぐるぐる回していた。
「綺麗な人だったから、会ったことあるんなら忘れないと思うけど」
「見たのか?」
「写真で、だけどね」
「写真!?」
カーヤが目を大きく見開いた。
「そうなんだ。たかが僕らの食事会が写真になってた。びっくりだよ。ほら、この間、トーヤと参加した、って言ったやつ」
「あぁ、あれな」
カーヤは顎をさすりながら頷いた。
「ちょっと離れたところに、そのマエカさん、も写っていた」
「ふーむ…」
「でも、僕はマエカさん、と直接話したりはしてないんだよ。していたら忘れるわけないじゃんか。でもさぁ、あんな綺麗な人がいたら覚えていると思うし、話しかけてると思うんだけどなぁ」
「だろうなぁ…それにしてもこの間ハルキとトーヤが参加した、あの、食事会の時の写真ねぇ」
カーヤはしばらく黙って考え込んだ。
「そういや、トーヤが、『ハルキのせいで睡眠時間削られた、会ったら文句言ってやる』って言ってたな」
カーヤの言葉に、思わずハルキは、ゲッ、と声を出した。
「あいつはあいつなりにハルキのことを心配してんだよ」
カーヤはそう言って、ハハッと笑った。
「とりあえず、緊急会議、だな」
久しぶりに見るカーヤの真剣な眼差しに、ハルキはグッと顎をひいて頷いた。
「まぁ、ハルキは今日1日ぐらいはゆっくりしてろよ」
カーヤはそう言うと大きく伸びをした。
「さぁ、忙しくなるぞ」
カーヤの言葉にハルキは思わず立ち上がって、カーヤに苦笑いされた。
「ハルキは明日からな」
その言葉にハルキはコクリと頷き、とりあえずまたベッドの中で安眠を貪ることにした。