3時間後②
おいおい、ホント、何やっているんだよ。
ハルキが殺人?
ありえない、ありえない。
混乱している俺の肩をグイッと押しながら、男はさらに圧をかけてきた。
「知っているだろう」
だから、何を?
怖いからさぁ、そんなこと口に出来やしないけど、いい加減、もっとわかりやすく説明してくれないかね。
ま、まずい。欠伸が出そうだ。そんな場合ではないのに。
だって寝る直前に連れてこられたんだからな、俺は悪くないよな。
必死に堪えたが、多分、バレた。
ギロリと鋭い目で睨まれた。
耐えた。震えそうになる体を必死に押しとどめた。
スイッと目の前に一枚の写真を出された。
お、写真だ、と心の内でちょっと興奮。
思わず食い入るように見てしまい、そして、驚愕した。
な、なんで庶民の食事会ごときが貴重な写真になんかなっているんだ?どう考えてもおかしいだろ。
しかも、この店の雰囲気、たしか俺がセッティングしたやつ、だよな…。1ヶ月くらい前になるっけ?
悟られてはいけない。本能的にそう感じた。
「トーヤ、お前もこの中にいるな」
写真の隅の方ではあるが、いつもより気合いを入れているのが一眼でわかる自分がいて、なんだかこそばゆいが、ここは素直に頷いておいた。
ってか、欲しい。自分が写真になるって、この先もおそらくないだろうな。
「ハルキとはどんな関係だ」
あ、それ今聴きます?最初に聴いてこないから、とっくにわかっているもんだとばかり思っていた。はて、何と答えたものか。
「知り合い…です」
とりあえず無難に答えてみたら、またまた睨まれた。
「そんなことは分かっている」
ですよね。とはいえ、どう表現したものか。あんまり近しい感は出したくはない。どこまで知られているんだろう。
「近所の知り合いで、たまにご飯を一緒に食べに行くくらい、の関係…です」
こんなところかな。
「で、たまたまこのときも、一緒に食べていた、と」
「はい…そうです」
よしっ、このまま。
「マエカについては?」
「知らない…です」
嘘じゃない。
「一緒の場にいたようだが?」
そう言われてもねぇ。
こんな綺麗な人がいたら覚えていると思うし、話しかけていると思うんだ。だが、記憶にない。おかしくないか?
何をやっている人なんだろう。誰つながりであの場にいた?
いろんな疑問が湧くが、まさかこの場で尋ねるわけにもいくまい。
俺は眉根を寄せながら首を傾げた。
「ということは、ハルキとマエカの関係も知らないか…」
悔しそうに男が呟く。
よし、この調子だ。
「ハルキからなんか…そうだな、彼女とかについて聞いたことはないか?」
「ない、です。そんなことを話す仲ではないので」
アイツとそんなことについて語り合うなんて冗談じゃぁない。
男が俺を見る目力が徐々に弱くなってきた。
それからもいくつか質問が投げかけられたが、俺は満足させるような返しは一つもできなかった。
「何か思い出すことがあったら必ず申し出るように」
そう言ってようやく解放された。
はぁ、ハルキ、どうすんだ?
とりあえず、寝よう。
そうだよ、俺は寝るとこだったんだよ。
俺は家に帰り着くと、しっかりと戸締りをし、バタンとベッドにダイブした。