エンカウント。あるいは覚醒 その1
目を覚ますと僕はやわらかいベッドの上にいた。起き上がろうと体に力を入れる。しかし、ピクリともしない。腕も、足も、首すらも全く動かない。
まるで見えない何かが体を押さえつけている様に……いや実際に押さえつけられているのだろう。手首や足首、に力が加わっているのが分かる。
「あら、起きたんですか~」
枕元から今この場に全く合わないゆるい声がする。状況は全くわからないけれど、この声の主は元凶かそれに類する何かなんだろう。
是非とも顔を確認しておきたいけれど、首が動かないから顔を見ることはできない。
というか、どうしてこんなことに……僕はいつも通り女装して、散歩に出かけて、そして…………。
「――っ⁉ 」
突然頭痛が走る。まるでそれ以上思い出すことを咎めるかの様に、それは明確な悪意を持って来襲した。
「状況が呑み込めないですか~?」
そんな僕の状況とは裏腹に声の主の調子は変わらない。呑気だ。
「あのっ……はい」
つい悪態をつきそうになってしまう。すると声の主はふふっと笑って、
「あなたはかわいいですね~かわいいので何を言おうとしたのかは、聞かないで差し上げます~」
「あっありがとうございます?」
勢いに押されてついお礼を言ってしまったけれど、別にお礼を言う場面じゃないよね⁉︎
「ところで~倒れる前に〜血とか見てないですか〜」
「血?血って赤いやつですか?」
「普通、血は赤いですけどね〜」
思わぬ言葉につい幼稚なことを聞いてしまう。
「それで〜見たんですか〜」
倒れる前に血なんて見たのだろうか?分からない。思い出せるのは悲鳴が聞こえて……
「その様子だと思い出せないみたいですね〜残念です〜」
「……『思い出せないみたいですね』ってことは、あなたは知っているんですか?僕が倒れる前に何をしていたのかを」
「ええ〜知っていますとも〜」
「それじゃあ教えて下さい!僕が何をしていたのか、何で倒れたのかを」
僕がそう言うと、声の主は少し黙った。そして……
「本当に教えても良いんですか?一時の刹那的な好奇心のために後悔するかも知れませんよ?」
今までとは調子の違う冷たい声でそう言ったのだ。
更新遅れました。申し訳ありません。
今までもそうですが、今回特に文が酷いので結構手直しとかすると思います。