エンカウント。あるいは回想 その1
朝、鏡を見るとそこにはいつもの童顔があった。少年の顔と言われるよりも少女の顔と言われた方が納得のいく様な僕、住良木葵の顔。
憂鬱だ。僕はついため息をついてしまう。
別に自分の顔が嫌いなわけじゃない。これが他人の顔なら何にも気にならない。でも。
自分がこんな女の子みたいな顔のはずがない。自分が男である限りその思いも違和感も拭えない。
自分が男であることを捨てればいいんじゃ無いか?ある時ふとそう思った。そして女の子になろうと思った。そうすればこの違和感が無くなるんじゃ無いかと思ったんだ。
そうして女装を始めた。もともとそれらしい格好をする事に興味はあったし、ちょうどいい機会だった。
仕草や声色にも気を使い始めた。自分の事も『僕』と言わなくなった。
こうなればもはや誰も止められない。気がつけば中学の制服を着る時以外、いつも女装をする様になった。自らが女の子としてあろうとしたのだ。
それでも消えない。僕の男としての部分。それはありとあらゆる時に首をもたげた。朝も昼も夜もだ。
気づけば僕は再び僕を僕と呼ぶ様になった。今でも自分がどちらなのか分からない。
その日もそんなことを考えて、憂鬱がりながら街を歩いていた。そして彼女に出会ったのだ。