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第3話


「さてさて、では何からお話ししましょうか」


 ふわふわのパンを主食に、これまたふわふわオムレツ。

 シンプルだが美味しいスープ。

 葡萄に似たフルーツ。


 この小さな体躯に合わせた分量だったが、とても美味しく頂けました。


 少しばかり残念なのは、1人での食事だったことか。

 しかし記憶の中では、食べさせて貰っていた時期以降はほぼ1人で食べていた。

 給仕メイドは居ても、一緒には食べて貰えない。

 殿下と呼ばれていたし、良いところの子供なのだろうか。


 そう、この身体は子供なのだ。

 大人であった筈なのに。



 美味しい朝食を終え、部屋に戻ってきた。

 僕をベッドに乗せて、クッションを使って寄り掛かるように座らせてくれる。

 やや過保護ではないかとも思うものの、メアが楽しそうにしているのと、お世話されて嬉しく思う自分も居るので、まあいいかな、とクッションに身体を軽く預ける。


 話を始めるメアはと言えば、部屋に備え付けられた椅子に座ってこちらに身体を向けている。

 最初は立ったまま話し始めようとしたが、長くなりそうだし、立たせておくのも落ち着かないので座ってもらった。


「まずは殿下、昨日までの殿下の記憶はございますか?」


「あるよ。そんなにいっぱいおぼえてるわけじゃないけど」


 話すのが難しい。どうしても舌っ足らずになってしまう。


「では、前世の記憶はどこまで覚えているでしょうか?」


 前世。確かに僕にはその記憶がある。


 …………


 ……………………


 …………………………………………


 あれ?

 どんな感じに過ごしていたのかは思い起こせる。

 しかし、自分が何処の誰で、何をしていたのかはぼんやりとしている。


 地球にある日本という国で、恐らくは社畜と区分されるような仕事と仕事量をこなしていたはずだ。

 しかしトラックに引かれたり、空から何か落ちてきたり、地震が起きたり、そういったことで死んだ記憶はない…………?


 いや、ある。


 ゆっくりと眠るように、力が抜けて何もかもが抜けていったような…………。


「かろうし?」


「また随分と悲しい終わり方を……。いえ、過去に苛まれる様子もないですし、マシと言うべきでしょうか?


 知識は有り、人格はある程度引き継いで居るものの、過去の自分の記憶は薄いというタイプですか」


「そんなかんじ…………。でもぼくまだしゃべってないよね?」


 なんだろう、察しが良いにも程があるような。


「ああいえ、私は前世などの記憶は有りません」


 違った。だとすると。


「私は他者の考えていることや感情がある程度分かるのですよ。


 …………気持ち悪くは有りませんか?」


「?


 おなかいっぱいなのと、いろいろびっくりなことおおいけど、たいちょうはだいじょうぶだよ?」


 突然どうしたんだろうか。

 確かに情報多くて頭は混乱ぎみだけど、なんとか付いていっている。


「いえ、私のこの力のことですが」


「ああ、そっち?」


 便利そうでは有るけれど、面倒なこともいっぱい有りそう。

 前世で嗜んでいた作品の中でも、読心能力や精神感応能力はメリットデメリットが極端にあった。

 特にデメリットは、人に疎まれやすいこともある。


 しかし、


「メアをきもちわるいとおもうことはないよ」


 前世の記憶を思い出したとはいえ、この身体の記憶も3才児の朧気なものだがいっぱいあるのだ。

 その中で、メアの存在はとても大きい。


 ただ人の心を読めるというだけで、その人を遠ざけ気持ち悪く思うほど酷い人間だと、自分のことを思いたくない。


 しかし実際に直面しないと分からないものだが、少なくともメアならマイナス方向には思わない。思えない。


 むむ、メアに対する感謝の気持ちやらなんやらが溢れt──むぎゅ


「申し訳ありません殿下。抱き締めたくなってしまいました」


 いつの間にか、メアに抱き締められていた。

 それは良いのだけれど、顔を抱え込まれると息が出来ないです。嬉しいけど。


「ああすみません殿下」


 するとメアは胸に抱えていた僕の頭を肩に乗せるようにして、ちっこい僕の胴体を抱き締めていた。


 心が読めるって便利だね。

 なんだか良い匂いがするし、落ち着く。


 そんなことをつらつらと考えながら、メアが落ち着くのをゆったりと待っていた。

 抱き締められるのも嬉しいしね。

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