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異世界は神様と共に  作者: 腹巻
3/42

調査で分かる事


「失礼いたします。」

魔王討伐軍による軍会議の天幕に、調査を担当していた研究者が慌しく駆け込んで来た。

「魔王城地下の祭壇にて、勇者召喚の術が使われた形跡がありました。」

各国の代表者が注目する中、研究者の報告に誰もが驚きを隠せないでいた。

「どういう事なんだ?」

「詳しく説明してもらえますか。」

「そんな事がありえるのか?」

「勇者召喚の術式は王国に封印されているのではないのですか?!」

その場の視線が一斉にマリアに集まる。

彼女は聖女でありミルドレイク王国の王女でもあった。

マリアは少し考えていたが、首を横に振り言った。

「詳細は申し上げできませんが、もし盗まれたり封印が解かれたりした場合には必ず判る仕掛けがしてございます。」

そう答えるマリアに周囲はそれ以上追及は出来なかった。

「ではなぜ・・・」

誰のつぶやきだったか。


「魔王に勇者召喚の術を渡した人物がいる。」

「「「・・・・・・・」」」

続いて発言したアニエスに一同は言葉を失った。


勇者召喚の術は、スキルとは無関係に、魔力のみで発動する特殊な魔術だ。

現在、存在が確認されているものはこれだけであった。


千年前、賢者マーリンは勇者召喚にて異世界より勇者アヤトを呼出した。

終戦後、禁忌魔術として使用を禁じ、ミルドレイクの王城の最奥に封印したとされている。

今回魔王城で使用された事で、封印されている術の他にも、入手出来る可能性があると判ってしまった。

魔王ランカイに術を渡したのは誰なのか。

各国とも思惑は様々だが、何としても手に入れようと動く事は間違いない。

それだけ勇者の戦力は大きいのだ。



◇  ◇  ◇



クリスはマリアと共に自身の天幕に戻ると、入り口にアニエスが待っていた。

「2人とも少し良いか?」

「ああ、どうした?」

アニエスを天幕に促す。


「やあ、久しぶりだね。」

アニエスの影から出てきた人物。

2大魔国の1つである“シュ国”の国王アルヨル・シュシュリカであった。

「アルヨル陛下・・・どうしてここに?」

「前のように“アル”って呼んでくれよ。仲間じゃないか。」

アルヨルは魔王討伐が始まる前、1年ほど行動を共にしていた時期があった。

前王の逝去に伴い、シュ国に呼び戻されるまでは調査中心に勇者達に同行していた。

「・・・アル、なぜここに?」

「魔王城の調査を頼んだ。」

とアニエス。

「さすがに同輩としては黙ってはいられなかったんだよ。」


勇者アヤトにより魔王を倒され、まとまりを失っていた魔族だったが、当事指揮を執っていた将軍2人が国を興し、「ア国」と「シュ国」が生まれた。

それでも大勢の魔族は国に属さず、大森林に消えて行ったと言われている。


今回の戦争は、ア国の王弟であったランカイが魔王を僭称し、軍部を掌握してクーデターを引き起こした事が発端となった。、


アニエスは目線でアルヨルを促し、本題に話を戻させた。

「報告では話さなかったんだが、使用された術式について判った事があるんだ。」

「勇者召喚か?」

「ふむ・・それなんだが・・・実はその術式にある細工がしてあった。」

アルヨルによると、その細工とは、術式を起動すると通常の何十倍もの魔力を吸収し、発動と同時に開放して魔力の爆発を引き起すと言うものであった。

最初から成功するかもあやしい改造された術式。

「しかし爆発の痕跡などなかったと思うが・・・」

「ああ、その通り。あの場に倒れていた者はすべて魔力枯渇による昏倒だったらしい。」

「どういうことだ?」

これはまだ調査中だからと前置きした上でアルヨルが言った。

「数百人規模の魔力の暴走があの程度で済むわけがない。その場に魔力の痕跡も殆ど無かった。ではその魔力はどこに行ったのか。どこに消えたのか。」

「何者かの復活か・・・・・・」

クリスには引っ掛かるものを感じていた。

「ん?」

「いや・・・魔王の最期の言葉だ。 『あの方が復活すれば・・・人類など・・・。』」

「ランカイがそんな事を・・・」


「あの古い祭壇には何者かが封印されていたと思うか?」

「わからない・・・しかし調べてみたほうが良さそうだ。」

「‥‥‥‥確かにそれなら説明は付く‥‥それは俺が調べよう。」

古代遺跡の研究をしている学者としても有名なアルなら問題ないだろう。


「それともう1つ。‥‥魔術師たちは儀式に生贄など使用していないと言っている。」

アルヨルの言うことが本当なら、ハルという男はなぜあの場所にいたのか、と言う疑問が残る。

「では彼が嘘をついてたって事か?」

「それは判らない。しかし勇者召喚に生贄は必要ないのも確かだ。」

「その代わりに魔力を大量に使うんだったか。」

「本人も気付いてなかったという事でしょうか。」

「確かにな、いきなり知らない世界に召喚されたら、誰だって戸惑うかもな。」

「あの男が召喚された勇者~?そんな感じには見えなかったがな~。」

「でも私が解析したんですが、勇者のスキルはありませんでしたよ?」


誰も答えは出せそうもない。

「ちょっと聞きたいんだが、この勇者召喚ってのは失敗前提じゃなかったのか?」

いつの間にかラグナが会話に交ざっていた。

「前提ってわけじゃない。可能性が高かったとは思うが‥。」

ここで話していても解決はしない。

ハルに会って確認するしかないのだ。

ただ、素直に話してくれるとも思えない。

彼が魔王ランカイの言った者であったなら、いきなり人類存亡の危機である。

私たちでは対処出来ない可能性が高い。

つい先日、言葉を交わしたハルの顔を思い浮かべて、背筋が寒くなるのを感じた。


「では私たちは調査が済み次第、ハルという男性にもう一度会ってみよう。」

クリスが言うとマリアも賛同し、調査が終わり次第、アヤト国に向かうことになった。



調査が終了した頃、主を無くした魔王城は徐々に崩壊を始め、古の祭壇も完全に瓦礫に埋まってしまうだろう。



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