青い宝石
ある冬の日の夜、空からたくさんの星々がおちてきた。
それは青い宝石のような怪物たちだった。
それは人間を襲う敵たちだった。
怪物たちには人間たちのもっていた武器では攻撃が効かなかった。
人間たちはたくさん喰われ――やがて、戦い方をおぼえた。
少年はいちばん活躍した。待ちのぞんでいた戦い。待ちのぞんでいたレベル上げ。
だが、そのうち、宝石たちはどんどん数を減らしていった。
人間たちはレベルアップし続け、宝石たちは雑魚となった。
少年は退屈していた。
ある夜。
少年の前に宝石がひとつあらわれ、ブレードを振りかぶった少年の前で、かたちを変えはじめた。
急ブレーキをかけて、それがどんな姿になるのかわくわくする少年。
もっと進化してくれるのか。さいきんは、こいつらは雑魚だったからな。
だがそれは、犬の姿になった。青い宝石の犬。
犬は言った。
ごめんナさい。がんバったけど、にんゲん、つヨく、なりすグて、もウ。ごしゅジんさまの、のゾ――
犬は粉になって、くずれてとけた。
あ、あ、あ。
少年は理解した。理解、してしまった。
お前は、ちがうなにかに生まれ変わって、それでも俺のことを。
――なぁ、俺はこのゲームみたいに、じっさいに戦ってレベル上げして、むそうってのをしてみたいよ。
――くぅん。
――あはは! わかるのか? ありがとな。
――わん!
いつもいっしょ。いつもいつも。たのしいときも。つらいときも。あそんであそんで。
そしておわかれ。
ないて、ないて、ないて。
――ほら、けいた! ちゃんと、おわかれをいいなさい! この子がお星さまになれないでしょ!
――いやだああ! ずっと、ずっといっしょだったんだあああ!
少年はひざから地にくずれ、手をついて、涙をながした。
そして、ふらふらと四つ足のまま、青い粉にちかよって。手ですくって。にぎりしめて。
少年は目をとじて、そしておもった。
ありがとうな、たのしかったよ、ぽち。