逃走
私達を見るなりフードを目深に被った男は指をさしてきた。
「皆さん、あの女達は魔女です。我が神を冒涜する異教徒です」
教会に集まっていた人達が一斉に振り向きざわざわしはじめた。
「あなた、何を言ってらっしゃるのですか?私達は神様に感謝こそすれぞ冒涜なんてあり得ないわ」
私自身当然神を冒涜なんてしてない自身がある、でも疑をかけられて不安や恐怖が込み上げて震えが止まらない。
妹達の震えも伝わってきてる。私が守らなきゃ。
さらに男が追い打ちをかけるように喋りはじめた。
「私は神の使い、私の言葉は神の言葉、これを信じるか信じないかは皆さん次第ですが」
男は街の人を睨み付けた。
「何で、私達が神様を冒涜しなきゃいけないの?いくら神様でも適当な事を言わないでください」
私は精一杯の反撃を試みたがすぐさま反撃をされた。
「皆様の前で真実を語るのが可愛そうでしたから言いませんでしたが理由がわからないのであれば答えましょう」
私はもう心臓が飛び出そうでもう何が何だかわからない。
男は辺りを見回して一呼吸おき淡々と語りはじめた。
「あなた達の三女様と、次女様のお2人は死者を蘇らせる降霊術をおこないましたね、私は森で2人が行なっているのを見てしまいましてね」
私は驚きで何を言われたか全くわからなかった。
両脇にいた、ジュリア、クレアの2人の震えがピタリと止まっていたが、変わり顔面蒼白で今にも死にそうな表情になっていた。
「あなた達のご両親は2年前、原因は私にはわかりませんがお亡くなりになっておりますよね?おそらく、ご両親にお会いしたかったのでしょうね、お気持ちはわかります。でも降霊術は禁忌です。いけませんね」
2人の顔は見ていないけど心当たりがあるのだろう、体温が上昇していく感じが手を繋いでいる私の手にも伝わってきた。
「この娘達を神の生け贄にしましょう。街の皆さん、さあ早く捕まえなさい」
いつも静まり返っている神聖な教会、今、時が一瞬止まった、一斉に殺意の空気が漂った。
私はその気配を感じ妹達の手を引っ張り一気に教会の外に出た。
この街から出て行くしかない誰もいない所へ行こうと判断し教会を出て自分達の家に向かった。
家の方角から煙が見えてきた、まさかと思い思い3人で全力で走ったけどすでに家は炎に包まれていて、私が19年間住んできた思い出、そして両親、妹達との思い出は灰になろうとしていた。
周りには見知った街の人たち、優しくしてくれた皆が、鬼の様な形相をして家を囲んで私達を探していた。
「フランちゃん私達の家が燃えてるよ、なんで、なんでこんな目に合うの?クレアはパパやママに会いたかっただけなのに」
「私もクレアの想いに付き合って降霊術ってのやってしまったけど、優しかった街の人があの男一言でここまでなる?普通」
家に戻るのは諦め、次に向かった場所は波止場へ行き船でこの街を離れようとしたが、波止場にも街の人達がいた、なんで?確かに妹達は降霊術もどきをしてしまったかもしれない、でもそんな事でここまで追い詰められなきゃいけないの?
あの神の使いとか言う男はなんなの?そんな疑問がどんどんと頭を巡り焦りと不安で心臓が飛び出しそうだ。
「いたぞ!フランソア、ジュリア、クレア、3人共いるぞ」
街の人に見つかってしまった!もう逃げる道が思いつかず、私達はすがる思いで街のはずれにある丘の近くまで逃げてきた。