プロローグ
季節は冬を迎えようとしており、今にも泣き出しそうな空がこの世界の気温を下げている。
しかし、ここだけは永遠に消えることのない青き煉獄の炎が街を燃やしている。
炎は轟々と渦を巻き全てを飲み込んでいく。
街は栄えているさほど大きな街ではないが沢山の家が並び、大きな教会が1つあり広場には噴水がある、近くには港があり貿易も盛んできっとこの街に関わる人々は笑顔が絶えない。
そんな街に広がる炎はまるで踊る様に激しく音をたて、街のあらゆる方へ広がっている。
一軒の家が燃える、また別の炎が隣の家を更に燃やしていく。炎の連鎖がどんどん続きどんどん強くなっていく。この街で燃えていない家などもう無く次々と灰になっていき、街のシンボルである教会もまた見るも無残な姿に成り果てていく。
焼けているのは家だけでなくそこに住んでいる人、そして動物、全ての物が燃えている。
老人達は教会に行きただただ神に祈りを捧げて、男の大人達は街から出ようと出口を探しているように見える。
女性達は子供を連れて必死に守っている。
動物達の鳴き声も絶えず抱えているがなすすべがなく、次第に鳴き声は聞こえなくなった。さながらまさに地獄絵図そのもの、しかし何故か人々は街から出ようとしない。
何人かの人間が街の出入り口ギリギリまで来て1人の女性に向かって許しを乞うような、助けを求めるような必死の形相で女性に助けを求めている。
その女性はそこに人がいないかのようにただ燃える街を見つめていた。
そして女性は一言誰に言うでもなく叫んだ
「これが私の求めていた地獄の炎よ、燃えろ、街を人を燃やしつくせ!」
憎悪を浮かべ炎に叫ぶ彼女の笑みは悪意に満ち溢れ、歪んだ表情はもはや人間とは思え
「あははは」
狂気に満ちたその声はまるで魔女の様だ。
女の姿は透き通るほどの青い瞳、炎のように赤ショートへア、見る限り街や燃えろなどと言ったとはとても思えない程の美人だった。年齢は19歳まだ少女だ。
その傍らにいる2人の人間は無言で炎を見つめていた。風貌は2人とも頭からマントを被っており、男か女かな区別もつかないが青い瞳の女よりは幼い様だ。
叫び終え満足した女は、突然炎に興味がなくなり傍にいる仲間に頷き街を離れようとしてこう言った
「結界もう解いていいわよ、お陰で街のやつらを閉じ込める事が出来た、さすがね」
そう、街の人たちは出ないのではなく結界があり出る事が出来なかったのだ。
この美しい女性は誰なのか、街が何故燃えているのか、その物語は少し前にさかのぼる。