異世界設定に飽きた僕と世界一の勇者様(2
「インスピレーション・リバイバル インスピレーション・リバイバル」
あの時に出た魔法が呪文を繰り返しても出てくる気配がない。
「さっきから何ブツブツ言ってるの?」
「さっきの魔法。いくら呪文を唱えても出てこないんだ。」
「…オール。さっきはありがとう」
ブツっと何か聞こえた
「アウロラ何か言ったか?」
「何も言ってないわよ。」
なんで俺怒られた?怒られるようなこと俺何にもやってないよ。
「もう目の前よ。気を引き締めなさい。何が起こるかわからないわよ」
「アウロラの城だよね。気を引き締めろってなんだよ。そんなにやばいのかよ」
「…まぁ、それなりに?」
何だろう。すごい行きたくない。アウロラの言葉からわかる。だから、俺はこっそり城から遠く離れようとした。
「どこへ行こうとしているの?オール。」
アウロラの手が、服の裏をつかんだ。アウロラはすごい笑顔だ。
「いやぁ~、ちょっとね。」
「ちょっとじゃないわよ。ほら、行くわよ。契約したでしょ。ほら逃げない。」
そんなことを言いながら、城についてしまった。俺とアウロラでワーワー言ってると城の扉が開いた。
「おかえりなさいませ。お嬢様。」
そこにはなんとも美しいメイド服の女性がいた。
「いつもありがとう。シノウ。オール聞きなさい。彼女はシノウと言って、この城のメイド長よ。」
「貴方様がお嬢様を助けていただいた魔法使いの方ですね。」
「あぁ~はい。アウロラに連れてこられた、魔法使いです。」
「人聞きの悪いこと言わないでくれる?あの魔法、そっちにも届いていたんだ。」
二人は色々話している。話しているというより状況確認していた。
いや、そんなことはどうでもいい。俺の魔法の範囲広い。広すぎて、この魔法の使いどころが難しいぞ。
「オール様、どうぞ中に。お体が冷えます。」
気が付いたらもう夜。しかも、俺のいたところとは違いめっちゃ寒い。
「それじゃあ、お邪魔します。」
その分中はとても暖かかった。実家の様な温かさ。そして、シノウさんに連れられ俺のこれから使う部屋に案内された。その部屋にはある程度のものはすべて揃っていて、生活するのに適した環境だった。
「ありがとうございます。シノウさん」
「いえいえ、お嬢様の命令なので。好きでこんなことするわけないでしょ。」
本心出てる。本心出てる。
「えれど、さきほど申した通り、オール様には感謝をしていますので。」
「それじゃ、ちょっとお願いがあるんだけど。」
「何でしょうか?」
「…いや、何でもない。」
俺には気になることがあった。この城に仕えている人達のこと。メイド長がいるなら執事などはいるのか。しかし、それを聞くと色々と誤解をうむ。
「それでは、永遠におやすみなさい。」
「おやすみ。シノウさん、本音は隠そうね。」
「シノウでいいです。ご指摘ありがとうございます。」
そう言うと扉が閉まった。この部屋に残るのは静けさだけ。俺は今まで起こったことを振り返ってみた。
「インスピレーション・リバイバル」
ボソッと呟くと、俺の周りに例の膜の様な結界が部屋を包みこんだ。そこに映し出されたのは、今日の出来事だった。
「魔法…なんで今、ここに入る前には魔法なんて出なかったのに。」
そんなことを考えているうちに視界が暗くなっていった。よく聞く『魔力切れ』というものだろうか。あ、やばい。視界がどんどん奪われて。そのあとの記憶がない。ただ覚えているのは、視界が奪われる前に結界がどんどん薄くなったことだけだった。
「おはようございます。オール様」
「あぁ、おはよう。今日はなんかあるのか?」
「いえ、これといったことは特にありません。あるとしたら、朝食のご準備ができております。急ぎ、これに着替え来てくれますか?」
「朝食?あんなに嫌われていたのに、ありがたい。」
そんなことを言っていたら渡されたよ。シノウに渡されて驚いた。
シノウに渡されたのは魔法使いの身に着けているローブだった。
「あの…これは?」
「ローブです。」
「みればわかるよ。なんでこれかってことだよ。」
「この世界のルールです。それぞれ特性によって服装が決まっているのですよ」
あれ?魔法特性の人は奴隷として扱われるのでわ?こいつ、頭おかしいんじゃねーの?
「おはよう。シノウ、オール。」
アウロラがとても眠そうに俺の部屋の扉を開けてきた。
「おはようございます。お嬢様。ただ今お戻りしますのでどうぞ席におつきください。」
「わかったわ、オールのこと任せたわよ。ふぁーあ」
と大きなあくびをしながら朝食のほうへ向かっていった。俺は急ぎ、ローブに着替えた。シノウにこれからご飯などを食べる場所に案内された。
「ここへお座りください。」
テーブルは長い長方形。その上にはすごい量の朝ご飯。そして、何より驚いたのがメイドさんの量。学校などの体育館。そのような大きさの場所にテーブルが置いてあり。部屋の周りに立っているメイドさんたち。一人分も入れなさそうで、少なくとも50人はいる。
「なぁ、アウロラ。メイドさん多くね?」
「まぁ、ここにいないだけであって、確か250人ぐらいはいた気がする。」
「お嬢様、250人ではありません。約570人です。」
多い多い多い。いったいどれだけ雇ってんの。
「多いな、苦労しないのか?それと、いっただっきまーす。」
「私は苦労しないわよ。シノウに任せているもの。」
「その分、私が苦労しているんですけどね。」
シノウが何か言っていたが、俺は無我夢中でご飯を食べていた。ご飯も何とか食べ終わった。それでわかったことがある。ここに来るまで歩かされた時やご飯を食べて、自分の色々な能力が上がっているのでは?。そう考えると、俺には少なかったが魔力があって、ここにきて倍増した。そう考えるのが普通だろう。何倍になったのかは知らないがそうとしか考えられなかった。昨日の夜からして、魔力にも上限があることもわかったし、新しい魔法を考えるときは魔力消費の少ないものにしないとな。俺は城の庭に出た。何か新しい魔法を作ろうと思った。よくある魔法を使ってみよう。よく考えるんだ。
「あの魔法ならいけるか?」
思いついたのは強化系。火の魔法とかしたら絶対に火事で怒られる。強化系なら、たぶんばれない。ってことで、創造するんだ俺の手になんでもいい。俺の手に何かものを。おっと来た来た。これこれ魔法のイメージ。
「アンノーン・クリエーション」
呪文を唱えたとたん、俺の手には握った感覚があった。これは、槍だ。これは作り出してみてわかった。これはかなり魔力消費が少なくかなりいい。やはり、魔法はイメージだ。そこから俺は色々なものを生成した。
「アンノーン・クリエーション アンノーン・クリエーション アンノーン・クリエーション アンノーン・クリエーション…」
この魔法で作ったものは魔力消費が少ない。しかし、欠点もある。それは、どんな大きさでも魔力消費は同じということだ。何が問題か、例えて説明しよう。消しゴムを作っても、家を作っても使う魔力は変わらない。どう考えても無駄でしょ。
「オール、いるかしら。」
「なんかようか?アウロラ。」
「1週間後に旅に出る。準備しておきなさい」
「準備って主に何なんだよ。」
「そうねぇ~、特性について学んでおきなさい。」
「特性って何を学べばいいんだよ。」
「特性の相性やデメリットさえ知っているだけで、あなたにも援護ができるかもしれないわ。」
「つまり、このままでは役立たずってことか」
「その通り」
清々しいほど笑顔で言われた。
「めんどくさいけど、致し方ない。シノウあたりにでも聞いておくか。」
そんなことを話していると、視界がだんだん奪われていった。この暗くなっていく感じは忘れもしない。まさか、ここで起こりますか?魔力切れ
俺の魔力、少なすぎるだろ!いや物の作りすぎか。
そう思っていたのが魔力切れ最後の記憶だった。