魔法使いへの目覚め編
俺はあのチビリーダーに魔法を教えて貰う事になった。
「燈、そもそも魔法を使うにはどうしたらいいんだ?」
「だから年上には敬語を使えクソガキ!それに燈さんだろ?」
「いいから早く教えろよ、時間が無いんだ。」
こうしている間にも亜里沙にもしもの事があれば俺は何の為にこの不死の力を得たんだと後悔してしまうだろう。
「何をそんなに焦っているのかは知らないが、魔法はそんなに簡単に使える物では無いんだ。」
「何故だ?立花は俺達が居た世界で心を読む魔法を普通に使っていたぞ。」
「あれは楓の固有魔法だからだ。まずは魔法の種類から説明しなければならない様だな。楓、説明してやってくれ。」
「じゃあまず魔法の種類から説明するね。魔法は大きく分けて2種類あるの。1つはさっきから会話に出てた固有魔法。これは1人に1つだけ自分の中に元から備わっている魔法の事よ。これは制限があるけどいつでも使える魔法。」
「俺の不死の力はこの固有魔法なのか?」
「それは今のところ判らないわ。不死の魔法なんて私は聞いた事がないもの。」
「それは私もだ。楓の言う通りそんな魔法は見た事も聞いた事もない。」
「まぁそれは置いといて、さらにもう一つの魔法が普遍魔法。これは覚えてしまえば誰でも使える魔法の事よ。でも魔法を覚えるには適性もあるから大体同じ系統の物になってしまうわね。攻撃的な魔法の大体は普遍魔法よ。」
「なら早く普遍魔法を教えてくれ。」
「説明を聞いていたのか?普遍魔法には系統の適性があるんだ。まずはそれを調べるのが先になるのよ。」
燈にそう言われて少しムカついたがこればかりは仕方がないと立花にも言われたので仕方なく適性を調べる事にした。
「それでだ燈、適性はどうしたら知れるんだ?」
「全ての魔法を試すしか方法は無い。」
「なら全部の魔法の出し方教えろよ。」
「いちいち可愛げのないガキだな。魔法の出し方は人それぞれだが大体は心の中で自分の出したい魔法をイメージするんだ。」
「魔法なんて見たことも無いのにイメージなんか湧くわけないだろ。」
「ならまずは幻覚の魔法を試してみろ、上を向いたら空があっただろ?それをイメージして変えてみろ。」
俺は言われた通りに来た時に見た太陽が昇る空を夜の暗い空に変えるイメージをした。
すると周り一面が一気に暗くなる。
「おい!見たか燈、変わったぞ!」
「………。」
「どうしたんだ?」
「私が作ったこの規模の魔法全てを書き換えるなんて、お前何者だ?」
「そんな事より他の魔法はどんなのがあるんだよ。」
「相手の攻撃から身を守る防御魔法。相手に炎や氷、落雷をぶつける波動魔法。他にも眷属や従えた魔物等を召喚する召喚魔法がある。この攻撃魔法2つは共通して危険な力だ、故にかなりの力がある魔法使いでないと扱う事は出来ない。それにこの2つに関しては今此処で調べる事は危険だ、地上でしか使う事が許されていない。」
「なら今すぐ地上に行って確かめに行こう。」
「まぁ待て、お前は既に幻覚の適性がある。故に他の適性がある事は考えにくい。」
「なんでだよ。」
「魔法使い1人に対して適性は多くて2つと言われている。大抵の者は1つしか適性は無い。2つ以上に適性がある者はこの世界に魔族を含め7人しか居ない。」
「なら俺で8人目だな。」
「なに?」
「防御魔法って要は相手の攻撃から身を守るものが出せればいいんだろ?俺は過去に一度だけそれを出している。」
それは1年前のあの事故の時だ。俺は妹を守る為にあの女に言われた通りに思い浮かべたら自分の前に光の壁が現れたんだ。
「ははっ!お前は面白い奴だなクソガキ。それが出来たなら尚更無理だ、攻撃魔法は扱えないぞ。3つ目の適性を持つ者は魔王でさえも1人だ。そして4つ目の適性を持つ者はフロレンティーナただ1人。」
「なら俺が4種類の魔法を全部出して伝説級の魔法使いになって亜里沙を助け出すさ。」
「ははははっ。気に入ったぞクソガキ。今日は地上はもう夜だ。明日の朝、地上へ出て確かめてみようじゃないか。今夜はうちの部屋を1つ貸してやる。」
俺は言われた通り燈の屋敷に泊まる事になったが部屋についてから数時間後にはやはり待ちきれなくなった。
燈が風呂に入っている隙に抜け出し地上へ出た。
出ていきなり人狼らしき怪物が10匹程いた。
「イメージするって何でもいいのか?まぁ取り敢えずドラゴンでも想像してみるか。」
すると目の前にいきなり巨大なドラゴンが現れた。
「おいおい、まじかよ。おいドラゴンあの怪物倒せるか?」
ドラゴンが振り返り
「無論だ。」
「お前喋れるのか!なら頼む、ちょっと力を見せてくれ。」
「良かろう。」
ドラゴンは再び怪物の方を向くと口を開き炎を待ち散らした。
その衝撃で辺りは荒野から焼け野原へと変貌していた。言うまでもなく怪物は跡形もなく消し飛ばされていた。
辺りを焼け野原にしたドラゴンは俺に問いかけて来た。
「貴様か?私を眷属として呼び出したのは。あの娘との契約が破棄されてから呼び出す者はもういないと思っていたが。こんなにも早く現れるとは。」
「ああ、俺がお前を召喚した。それと今すぐ俺の眷属として契約をしてくれ。」
「お前はあの娘と同じ雰囲気がするな。良かろう。私は貴様を主人と認め主従の契約をしよう。」
すると背後から声がした。
「お前……このドラゴンを呼び出したのか?」
背後に居たのは燈だった。
「ああ、明日の朝って約束は破っちまったが召喚魔法に成功したぞ。」
「ドラゴンは召喚魔法が得意な上位の魔法使いでも呼び出し眷属として従える事はまず不可能とされている生物だぞ!!」
「そうなのか?まぁ出来たならいいだろそれで。亜里沙を助ける為に戦力はあるに越した事はないからな。」
「それはそうだけど。お前は本当に何者なんだ?」
「俺は妹を助けに来ただけのただの兄貴だよ。」
ドラゴンを眷属として呼び出す事に成功した俺は、波動魔法は必ず明日の朝に試すことを燈に約束させられて屋敷に帰ることになった。
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