グリムス到着編
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城崎海斗と立花楓は向こうの世界へ行く為の扉を開く為に必要な広い空間があるところへ向かっていた。
「広い空間ってどのくらいの広さが必要なんだ?」
「そうねー、縦、横、高さが10メートルの立方体くらいの広さね。」
「それなら近くの広場でいいじゃねーか。」
「ダメよ、誰に見られているか分からないじゃない。」
どうやら扉を開くところは一般人には見られてはいけないらしい。
人気のない場所で広い場所ならもう1つだけ心当たりがあった。
「ならあの事故のあった場所なら開けるだろ」
「たしかにあそこなら広いし大丈夫ね。」
ただ正直なところ俺はあそこには行きたく無いし行く事は無いと思っていたのが本音だ。
「立花、お前は平気なのか?あの場所へ行っても。」
「私は平気よ、私はもうあの場所になんの未練もないからね。」
「ならいいんだが…。」
1年前、俺達兄妹と立花楓を含めた13人が被害に遭ったその場所で俺はあいつに出会った。白髪で瞳は紅い綺麗な女に。
「まさか、また此処に来るなんて思わなかった。」
俺とあの女が出会った場所、そして俺のある記憶と引き換えに力を手にしたその場所に。
「人がいないか周りを見てきてちょうだい。私は扉を開けるから。」
「あぁ、わかった。」
一回りして帰って来る頃には既に扉が開いていた。
「さぁ行くわよ。向こうの世界に着いたらまず私達の生活していた町に行きましょう。」
「何故だ?俺はすぐにでも亜里沙を助けに行くぞ!」
「貴方、魔法使えるの?ただの人間に死なない事だけが付属されたくらいで勝てる相手じゃないのよ?」
「だけど早くしないと亜里沙がどうなるか…」
「だから貴方には確実に魔王を倒せるくらいまでは成長してもらうわ。」
立花がボソッと呟く
「それに死なないなんて魔法、聞いたことがないわ……」
「なんか言ったか?」
「何でもないわ、着いたわよ。ここが向こうの世界と言われる場所、グリムスよ。」
グリムス、この名前は聞いたことがある。あの女が言っていた話に出てきた場所だ。
だか、それにしてもこんな何も無い所で良く生活できるな。俺は心の中で思った。
やばい!忘れていた、立花楓は心が読めるんだった。
しかし立花は何も言ってこない。
ひとまず安心した。
「立花、町はどこまで行けばあるんだ?」
取り敢えず気を逸らす為に聞いてみた。
「目の前にあるじゃない。」
この女は何を言っているんだ?
俺の目の前に見えるのは岩陰に小さな小屋が1つ隠れる様にしてあるだけの広大な荒野だけだ。
「町なんて何処にも無いじゃないか。」
「いいから私に着いてきて。」
そう言うと彼女はその小さな小屋へと歩いて行く。
そして小さな小屋に着くと小屋の中にあった下へと続く階段を降り始めた。
「この世界での地上は私達、魔法使いが安定して住める程の安全は無いの。夜になれば悪魔や魔族達がそこら中に溢れかえるわ。」
「魔法が使えるならそいつらを全て倒せばいいんじゃ無いのか?」
「それが出来てたらこんな地下に暮らして無いわよ。」
「そんなに強いのか?悪魔や魔族ってのは。」
「数年前はそこら辺の雑魚だけならなんて事無いやつらだった。でも4人の魔王が現れてから魔族達のレベルが格段に上がってるの。それに数も増えたわ。」
「そうか。だが魔法使いは他の町にも居るんだろ?」
「居るわ。けれど何処の町も似たようなものよ。地上では4人の魔王が覇権をめぐり戦争を始め、色んな所で戦いが始まりそれを巻き込まれたた魔法使い達はみんな死んでいった。」
俺は魔法使いが想像していたよりもとても弱い事が分かった。
「でも1つだけそんな戦争の中でも地上で生活できていた町があったの。その町の中に最強の魔法使いが居たから。名前はフロレンティーナ、魔法使いの歴史の中で最も強く最も美しいと言われるまさに伝説級の魔法使いだった。」
「だった?そんな伝説級の魔法使いがまさか負けて死んだのか?」
「いいえ。負けてはいないわ、居なくなったのよ。1年前に忽然と姿を消してそれ以降彼女を見たものは居ないの。まぁこれも全て聞いた話だから私は顔も知らないのだけれど。」
1年前、俺達が事故に遭ったのも1年前であの女に会ったのも1年前だ。
「要するにもう誰も魔王の戦争を止める奴が居なくなったって事か。」
「まぁそう言う事ね。そんな話をしてたら着いたわよ。ここが私達の町、アルナスよ。」
そこには地下とは思えない程に明るい景色があった。
「なんだここ、本当に地下なのか?空が有るぞ。」
「あの空は幻覚系の固有魔法の1つよ。本当はただの岩肌なの。」
魔法の話はまだ全然分からないがたぶんこの範囲の規模を1人で魔法をかけているのなら凄い奴に違いない。
「まずこの町のリーダーに会ってから魔法の訓練をしましょうか。」
「リーダーってことはこの町で一番強いってことだよな?」
「そうよ。この町で一番の魔法使いよ。」
そいつに魔法を教えてもらうのが一番良さそうだな。こんな事を考えながら歩いていく。
「ここがリーダーの居る屋敷よ。」
そう言うと立花はいきなり扉を爆破した。
「誰だよ!こんな時間に家を爆破したやつわー!!!」
ギャーギャーと怒鳴りながら出てきたのは身長が130センチくらいで目が大きくて可愛らしい子供だった。
そして立花が話し始める
「いつもこうでもしないと出てこないでしょ?貴方は!」
「お前しかこんな事をしないぞ!楓!」
「おい、立花このちっこいのがリーダーなのか?」
「楓、この男は誰なの?私にちっこいって言ったわ。殺してもいいよね?」
「殺してもいいけどリーダー、この人は城崎海斗、連れてくる予定だった人間よ。」
「こいつがあの人間か。なら殺しても意味ないな。」
「そして城崎君この人がこの町のリーダーの神明燈さんよ。」
「おい燈、早く魔法教えてくれよ。」
「いきなり年上を呼び捨てかこのクソガキめ。」
「年上?どー見ても小学生だろ。」
「よし、お前100回殺す!!」
ここで立花が割って入る
「待ってよリーダー、この人に魔法を教えてあげて欲しいのよ。」
「なんだ、こいつ魔法使えないのか?なのにこいつはどうやってここまで来れたんだ?あの小屋には入る者に一度、死の魔法をかけるようにして有るはずだが。」
「この人はそれをこのまま魔法で防ぐ事なくそのまま通過して来てるのよ。」
「!!!」
「この人は死なないの。謂わゆる不老不死ってやつなの。」
「有り得ない、そんなの聞いたことない。」
「私も初めは有り得ないと思って真っ二つにしたの。そしたらすぐに再生したのよ。」
「それはすごいな!良い戦力になるな!」
立花のやつ俺を死なないって分かって切ったんじゃねーのかよ。あの時有り得ないだとか言って無かったじゃねーか。
心で毒づいた俺はなんやかんやで魔法の訓練をして貰えることになった。
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