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4:Cold-blood

こういう話って需要あるんでしょうか。



「誰か。誰か。助けて。私を、助けて」


そう叫び声を上げたい。だが、口も思うように動かない。


雨は容赦なく私を冷やしていく。心臓が凍り付き、鼓動を止めるのも時間の問題だ。死はすぐそこまで迫っている。


あの日のように、ゆっくりと、ゆっくりと、死神は歩み寄る。私を嘲笑いながら歩み寄る。それを私は見ていることしかできない。


「神様。どうか、私を。私をお助けください」


2回続きの願い事を叶えてくれる程、神様は甘くはないかもしれない。それでも私は願い続けた。叫び続けた。ただ、一縷(いちる)の望みを託して力の限り叫んだ。それが雨粒よりも小さな希望だとしても。


「私を————」


助けて。もう死にたくない。私は幸せな人生を歩みたい。


そんな願い事をした時だった。


「哀れなものね。こんな時だけ神頼みって」

「えっ?」


私は一時、静止した。思考が停止したと言ってもいいかもしれない。その声は突然、私に向けて話しかけてきたのだから。


「神様を散々(ないがし)ろにしておいて、いざ自分が困れば神頼み? 滑稽ね」


 どこからこの声は聞こえてくるのだろう。上から? 横から?


「神様はあなたを見捨てたの。そんなことも分からないの?」


 どこにも人の姿は見えない。だとしたらどこから話しかけているのだろう。 だが、そんなことを気にしている暇はない。これで私には希望が生まれたのだ。

 

生き残れるという希望が。



「私を……。助け——」

「なんかあるなら、もっとはっきり言えば? ほら?」


 声は私に気が付いている。どこにいるのか分からないが、確かに私の言葉は届いている。相手が誰であれ——それが例え神様でも——、私は助けてもらえればいい。それだけだ。


「ほら、いつもの威勢はどうしたの? ほら————」

「私を!!!! 助けてください!!!!」

 

 自分でも小さいと思う程の声しかあげられなかった私のどこにこんな力が残っていたのか不思議なくらいの声だった。


その叫びは私とその声に一時の沈黙を与えた。

 

「あの。その、聞こえました?」

「う、うん。聞こえたよ」

 

 声は少し放心気味ではあるが、返事をしてくれた。とはいえしばらくの間、相手の呼吸音が聞こえるだけで少し不安になってくる。

 

「あの……?」

「少しだけ待ってくれないかな……? ちょっと気持ちを落ち着かせたいから……」

 

 どうやら深呼吸をして気持ちを落ち着かせているようだ。吐息が近くから聞こえる。案外、この声は近くから発せられているのかもしれない。


「まったく、びっくりしたよ。人が変わったみたい。以前のあなたなら————」


そう言うと、声は沈黙した。そして、独り言を言い始めた。


「いや、まさかね……」


 声は少しの間を置くと、再び私に話しかけてきた。



「あなたに聞きたいことがあるのよ」

「そ、それよりも————」


 助けてください。その言葉を言い終わる前に、その声は質問を繰り出した。


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