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2:Regret

パソコンが壊れましたが、データが生きていたので良かったです。(良くないけど)




 人が死んだらどうなるのか。それは死んだ人間にしか分からない。


 というのが定説だ。



 しかし死して尚、それが分かるとも限らない。


 ここは水の中か。いや、土の中か。あるいは火の中か。


 私には分からない……。


 感覚は全く機能していない。私がいるのは暗闇と無音の空間。無感覚の世界だ。


 私はもがいているのだろうか。それとも諦めてじっとしているのだろうか。それすらも分からない。


感覚は眠ったまま。水に溶けた砂糖が誰の目にも見えないように、私は無感覚の海に溶けている。意識があるのが不思議なくらいだ。


 これが私への罰。醜い父から母を救えなかった私への制裁と考えれば、この仕打ちは妥当なのだろうか。


 どうだろう……。

 

 訳が分からなくなってきた。何をすればいいのかも、これからどうなるかも分からない。分からない――――。


 私はもう何もかも分からなくなって、笑っていた――少なくとも意識の中では――。笑うしかなかった。母が父にそうしていたように。いや、母は心では笑っていなかったかもしれないが。


 しかしそんなことはもう、どうだったいい。

 私は死んだ。それだけだ。母の心情を知ったところでどうにもなるわけではない。


 いや……。


 私がもっと母に寄り添えば、こんなことにはならなかったかもしれない。母の心の拠り所となることができたならば、私を殺そうなどと考えることも――――。


 違う……。


 母を私が止められなかったのは、単に私に力が無かったからだ。母を寄り添う力が私には足りなかった。


 違う。これも違う。

 私が……、私が本当に必要としていたのは――――。





 父を止める力。すなわち母を救うだけの力だ。





 しかし、何かしらのあがきをしたところで私は父に勝てたのだろうか。あの暴虐なる君主に反逆するだけの力が私に潜んでいたのだろうか。


 そんなものはない。どこかでそんな風に言う自分がいた。


 私は弱い子だ。誰も救えない弱い子だ。そう罵る自分がどこかにいた。


 だが、どうすることもできない。死んだって何も変わることはない。私は私のまま、いつまでもそのままなのだから。



 ああ――、神様。もし私の言葉が届いているのなら、私の言葉を聞いてください。


私は弱い子でした。誰も救えませんでした。

しかし、これで終わりにはしたくないのです。


私は願います。


 私にもう一回の人生を。あるいは新たな人生を。







 もう何も失うことのない幸せな人生を――――。

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