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帰郷がもたらすIターン技術革命

 その後、イブが王立魔術学園を卒業するまでの期間、ケイはセボン国とナカックニ連邦を行きすることになる。良き息子であり、良き幼馴染であり、良き友人であり、良き経営者であり、良き調停者であるために。

 ケイもまさかそんな面倒なことになるとは思っていなかったのだが、イブが極度に離れたがらなくなっていたのだから仕様がない。「仕事でちょっとだけ行ってくる」と言えば、「私学校を辞めてケイ君とこで働くね! 楽しみ!」と笑顔でいいだしたのにはさすがに土下座して、卒業するまでは止めたとか。そしてイブを不安にさせないというケイの強がりのために、いろいろな“モノ”がこの世界に産み出されることになる。


 まず各都市に公営の“無線通信局”がたくさん開かれた。

「どこも、そこも、だれとでも連絡が出来ることが大事なんです!」と半ば叫びながら、各都市の情報局を無理やりコンサルタントしたそうだ。それまでは伝書鳩やモンスター特急便で最速二、三日は当たり前だったのが、いきなり遠距離無線通信である、エジソンも段階を踏めと怒るだろう。そして幸か不幸か、それを起点として、“科学技術”というものが各地方で芽吹いた。通信装置を保守点検するために電気部品を扱う鍛治屋、魔術道具屋が現れ始めたのだ。さらには簡単な電子工学を取り入れた魔術道具を売り出す商会もちらほらと現れ始め、世はまさに産業革命期を迎えた。その裏には、マチコ、ケイ、乙葉がこっそり派遣したドウルジ教の高位魔術師の活躍があったのだが、それは知る人ぞ知る事実となっている。


 連絡網を超特急で整備したケイは次に、後に貴族の間で富の象徴となる“鉄馬”シリーズをセントレーヌの“魔術式自走馬車”の大手商会と供に産み出した。“鉄馬”は魔術を原動力とする黒金ボディの馬型4足歩行型ロボットであり、砂漠だろうが山稜だろうが風の様に駆け抜け、2国間を股にかけるケイをおおいに助けたという。余談だが鉄馬が出来るまでは、クレア伯が飼育する黒トカゲのクロン君に騎乗していたらしいが、何かの拍子に右腕の魔術式義手を食べられること3回、限界を感じて諦めたらしい。

 ちなみに“鉄馬”とケイの魔術式義手についてはマチコ・ロクハラがいなかったら、この超短期間での開発は不可能であっただろう。ドゥルジ教の人類学者見習いマチコ・ロクハラ、通称マチコちゃんはケイが知らなかった魔力に感応する金属“エーテル金属”とその特性を熟知していた。エーテル金属を複雑美麗に加工し意匠をあしらったケイの義手は、本人の意思に従い本物の手のように動いた。魔力反応パターンを覚えるという難しさはあったが、覚えてしまえば寧ろ本物の手より器用に動かせる場面もあったりして、ケイは涙を流してマチコちゃんに感謝したという。鉄馬はエーテル金属で作った駆動系を、ケイが作ったコンピューターで制御する二人の合作2号であり、二人のロマンが詰め込まれた遠慮のない仕様となっていた。







 イブ・ロータンは王立魔術学園を卒業すると、ファミマートの一員となる。持ち前のまっすぐで気のきく性格ですぐに商会のメンバーに受け入れられ、マチコと同じ開発だけでなく営業、経理、荒事までニコニコと卒なくこなす、なくてはならない存在になる。




 ファミマートもケイの生還と帰郷とともに忙しくなる。


 ケイがドゥルジ教の地下都市から帰還してから、リハビリが終わるまでの半年間に職員が大幅増員され、生産工場が稼働し始めた。若手、熟練者、応募、スカウト、様々な人員を集め、一流の職人へとしたてあげる手腕も一流の生産技術の技であることは、ファミマートの商品品質、回転率を見れば明らかであった。


 それに併せて代表代理であるテスラ・ローレンツは剣をコンピューターに持ち替えて、ナカツクニを西に東に飛び回る忙しい身になった。無線電話やコンピューターでケイは毎日連絡を取りながら、華族や豪商相手にも堂々とした立ち振る舞いでいくつもの案件をファミマートへもたらす。たまにケイに長電話で愚痴をこぼしたり、ケイ達と一緒にダンジョンに出かけて息抜きしたり姿をよく見かけたとか、しないとか。


 マチコ・ロクハラはファミマートに加入してから、一目散にケイとマンツーマンで科学、物理学、電気工学を習い始めた。周囲もマチコの人柄と勤勉さに心打たれ、すぐにドゥルジという先入観も消えて仲間となった。ケイはケイの知らない魔術や魔術にまつわる物理法則を教えてもらうことになったが、マチコちゃんの知識の幅の広さと深さ、頭脳の明晰さに舌を巻いたという。驚く速さでケイの知識を吸収したし、すぐにケイの作った初期型コンピュータの原理まで理解してしまったのだ。ケイのセボン帰郷の後に、多忙を極めるファミマートの開発業務はマチコちゃんがいなかったら実現できていなかっただろう。

 

 偶に小さな事件が起きたりもしたが、充実して皆が笑って過ごせる日々が流れていた。






 そんな時が流れること5年。

 ファミマートは破竹の勢いで成長を遂げ、知る人ぞ知る商会からセントレーヌ1番の「便利屋」と知られるようになっていた。


ここまで読んでくださったかたありがとうございます。


少しのあいだ更新が遅れるかと思いますが、頑張って続きは書いていきたいと思います。


2章は起承転結の承部分で中だるみ甚だしいですが、3、4章はテンポよくいけたらと願っています。


また目にしていただけることあったら嬉しいので、今後とも見かけたら何卒よろしくお願いいたします。

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