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アンドロイドシリーズ

かの国のアンドロイド事情

作者: 流堂志良
掲載日:2014/08/27

 やあ、ようこそ。日本へ。

 君たちが私たちにある要求を突き付けに来たことはわかっている。

 アンドロイドを全廃させろ、という事だったね。

 私も君たちの国がどうなっているかよくわかっている。

 この国からも復旧の為の支援を送っているのだから。

 君たちが私たちに突きつける要求に関してだが、答えは最初から決まっている。

 答え? もちろん「No」だ。これだけははっきりさせておく。

 不思議そうな顔をしているね。何故私たちが拒否するか理解できない?

 それならこの国でのアンドロイドの扱いについて説明しよう。

 何なら、アンドロイドの生産工場の見学でもするかね。

 安心してくれ。この国においてアンドロイドの脅威は全くない。



 さて、アンドロイドの生産については今さっき見たとおりだよ。

 君たちのところと変わりはないはず。

 では君の国と私の国で何が違うと思う?

 君たちはアンドロイドに自我を求めながらも、枷をはめた。

 所有者に刃向わないために。

 私たちは枷をはめない代わりに、ある一つの欲求をアンドロイドの本能として植えつけた。

 それは「承認欲求」。その中でも他者に認められたいと欲求だ。

 彼らは誰かに「ありがとう」と笑ってもらうのを至上の喜びとするように強く刷り込まれている。

 驚いた顔をしているな? そんなに意外だったか?

 もう一つ、君の国のアンドロイドとこの国のアンドロイドには違いがあるのに気付いたか?

 君たちは会社ごとに規格が違う部品を使っているそうだね。

 それぞれの会社でもシリーズごとに部品が違うとも聞いている。


 こちらは違うのかって?

 この国ではある事情により、全アンドロイドの規格を統一している。

 家政型から、災害支援型に至るまで全てだ。

 まあ、だけど完全に全部が同じってわけでもない。

 家政型、看護型、職人型、災害支援型など、種類ごとに統一された規格があるんだが、互換性があるようになっている。

 何故だかわかるだろうか。

 災害時、限られた資源の中で災害支援型が破損した時に困るからだ。

 互換性があれば、緊急時にどの型を作る工場でも修理が可能だ。

 そして、これは本当に緊急の時だけなんだが、少しでも知識がある人がいれば、災害支援型が救助の際に四肢を欠損した時に近くの起動できなくなった機体から挿げ替えることもできる。

 あくまでも緊急時の対応だ。

 他に質問はあるかね?


 ん? ああ、外にあるオブジェが気になるのか。

 あれは供養塔だ。

 全損した機体、修理しても起動できなかった機体などの機体番号をあそこに刻むんだ。

 それから私たちは年に一度供養をすることになっている。

 大げさだと思うだろうか? だけど、アンドロイドと共に暮らす人たちはそれだけ彼らに愛着を持っているんだ。

 では次に街中で実際に彼らを見てみようか?




 黒髪の男、金髪の男が二人、街中を歩いていく。

 人々がひっきりなしに行き交い、途切れる事のない喧騒の中をかき分けていく。

「それで、一体どこにアンドロイドがいるっていうのかね? Mr.ハマノ」

「おや、お分かりにならない? もう何人もすれ違ったというのに?」

「何?」

 ハマノの言葉に金髪の男が眉を跳ねあげて、周りを慌てて見回す。

「どこにいるっていうんだ?」

 そう言った男にぶつかった少女が慌てて謝って、去っていく。

「例えば今の少女もアンドロイドだ」

 ハマノは人波に隠されていく茶髪の少女の後姿を指して断言した。

「……そうは見えないぞ」

「まあ、普段暮らしている上ではアンドロイドだの人間だの区別することは食事の席以外では必要ないからね。一応アンドロイドは耳にアクセサリーに模した印をつけているんだけれど」

 ハマノが笑う。金髪の男はそれに不快感を示した。




 全く、おかしなことになったものだ。

 私がこの国に来たのは彼らが所有し隠し続けているある技術を手に入れるためだった。

 飛行ユニット。それもアンドロイドと人間一人を宙に浮かび上がらせるだけの力を持っている。

 そのユニットはアンドロイドが背負えるサイズでそれだけの力を出せるそうだ。

 以前私はこの国で開催された災害支援型アンドロイドのデモンストレーションで、彼らが飛ぶ姿を見たことがある。

 あれならありとあらゆる乗り物に応用ができるのではないか。

 そう思い、私は何度も政府に交渉してきた。

 日本が保有するその技術を広く世界へと知らしめるべきだと。

 しかし、政府は日本とどんな交渉もしようとはしなかった。

 本当はしたのかもしれないが、日本からどんな情報も引き出すには至らなかったようだ。

 それで、日本以外で起きたアンドロイドが暴走した事件を機に私は日本にやってきた。

 この国で稼働するアンドロイドを全て破棄せよ、さもなくば隠匿している技術の公表をせよ。

 そう、Mr.ハマノに突きつけるつもりだった。

 彼は飛行ユニットの生産を一手に引き受けているある企業の重鎮だ。

 それもかつては飛行ユニットを開発した研究部門の出身。

 何も知らないはずはない。

 情報を引き出すためにわざわざここまで来たのに、Mr.ハマノには迷いがなかった。

 迷いがあれば私がその隙に乗じて、彼にもう一つの条件を突きつけるつもりだったのだ。

 だが、どうだろう?

 Mr.ハマノには余裕があり、あれよあれよという間に私はこの国のアンドロイドの見学をすることになってしまった。

 なかなかに侮れない男だ。

 街中で出会ったアンドロイド達は皆人間と変わらない。

 注意してアンドロイドを示すアクセサリーを見なければ本当に見分けがつかなかった。

 Mr.ハマノに付き合ってアンドロイドの見学をして最後に私が行きついたのは災害支援型アンドロイドの訓練施設だった。

 様々な災害を想定して、アンドロイドたちが人間を救助する訓練を行う施設。

 そこでは当然飛行ユニットで空を飛ぶ訓練も行われていた。

「さて。ここから本当の話し合いをしようか?」

 Mr.ハマノは空を飛ぶアンドロイドの風景を背にして私に言う。

 その表情は逆光でうまく読めなかった。

「……君の本当の目的は彼らの使う飛行ユニットの情報。そうだろう?」

 まさかここで本来の目的を、しかも相手方から持ち出されるとは何たることだ!

 私はここに至るまで飛行ユニットのことなど一度も話題に出さなかったはずなのに。

「私が目的を知っているのが不思議なようだね。君は一度もアンドロイド見学中に飛行ユニットの話題を出さなかった。飛行ユニットの存在は知っているはずなのに」

 しまった。

 目的を気取られないように話題に出さなかったのだが、それが裏目に出ようとは。

「まあ、見ての通り災害支援型アンドロイドは、さまざまな災害で活動するために飛行ユニットを装備している。そしてその飛行ユニットの作り方などの技術は隠匿してきた。知りたくなるのは当然だろう」

 Mr.ハマノの話に私は返す言葉もない。

「それで、その技術の内容はある事情から教えられない」

 やはり拒否をするのか。

 話を自分から持ち出しておいて、教えられないとはどういうことなのか。

 私には全く彼の意図が読めない。

「そもそも、私たちがどうやってその技術を手に入れたと思う?」

 一体彼は何の話をしようとしているのだ?

 私にはさっぱりわからない。

「君は飛行ユニットの存在を聞いたとき、疑問に思わなかったかね? そんなものを開発するだけの技術が何故日本にあるのだと」

 それは確かに思ったことがある。

 日本がどんな技術を保有していても、飛行ユニットはまだ開発できないだろうと思っていた。

 我が国でもプロペラやジェットエンジンなど、既知の技術以外で飛ぶ技術は研究しているが手がかりも全くない。

 しかし彼らはやすやすと達成した。

 何か秘密があるに違いないと私はこうしてここを訪れているわけだが。

「我が国にも元々こんな技術は存在しなかった。この技術は『外』からもたらされたものだ」

 その後彼が語ったのは突拍子もない話だった。

 彼がまだ研究畑にいたころ、宇宙から日本へ漂着した地球外生命体、言ってしまえば宇宙人がやってきたのだそうだ。

 Mr.ハマノたちは宇宙人の乗り物を修理する報酬として彼らの有する技術を教えられたのだという。

「教えては貰ったんだが、彼らの提示した使用条件が厳しくてだな。実はアンドロイド以外には使用できないんだ」

「何……だと?」

「一つはこちらのコンピュータ類では動かせないからだ。どうしてもアンドロイドでないと飛行システムは起動しない」

 動かない? どういうことだろうか。

「もう一つだが、絶対に平和利用する事を宇宙人と約束してしまってな。約束を破るとどうなるかわからん。なので災害救助などに限定して運用しているというわけだ」

 一人、また一人Mr.ハマノの背後をアンドロイドが飛んでいく。

 私は彼に対して何も言うことはできずに、飛ぶアンドロイドを見ていた。

「……災害救助なら、緊急の時は普通のアンドロイドにも搭載するべきではないかね?」

 かろうじて私はそれだけを口にした。

 アンドロイドにしか扱えないのであれば、全て廃棄して決着をつけようとしていた私たちの計画も考えねばならない。

 人間に決して逆らわず、飛行ユニットを扱えるアンドロイドを私たちは作らねばなるまい。

 やはりそのためには技術を公開してもらわなければ。

「その点については心配いらない。ほぼ全てのアンドロイドには組み込まれている。もちろん君たちの国のアンドロイドにも組み込まれている」

 そんな話は聞いたことがないぞ。

 一体どういうことだ?

「アンドロイドの重心制御ですよ。その部分が飛行ユニットと同じものだ」

 だが、我が国のアンドロイドは飛べない。

 この国のアンドロイドだってあの飛行ユニットと呼ばれる装備を付けなければ飛べないはずだ。

 私はそうMr.ハマノに言った。

「あのユニットか? あれは補助装置のようなものだ。一般のアンドロイドはある電磁波を受け取ることと、もう一つある条件で空を飛ぶことができる。本当に緊急の措置だね」

 Mr.ハマノは語るのをやめない。

 私は彼が何を私に伝えようとしているのかがわからない。

「……条件?」

 何だか私に質問してほしそうな感じである。

 仕方がない。何か情報が得られるかも知れないから聞いておこう。

 重心制御か。全てのアンドロイドに搭載されている物ならばこちらで研究もできよう。

「電磁波自体は災害発生の可能性があるとして警報と同時に発することで、クリアする。もう一つはアンドロイド自身が死にもの狂いになった時だ。共に暮らす家族を守ろうと本来のスペック以上の力を発揮する。火事場の馬鹿力の時のみ彼らはどんなアンドロイドでも飛ぶことが出来る。ただ、スペック以上の動きをするので壊れやすい」

「つまり、何が言いたい」

 Mrハマノの視線には何か含むところがある。

「所有者登録でアンドロイドを縛り付けて、無理に言う事を聞かせても恐らくはスペック以上の力は出せないだろう」

 痛い所をついてくるな。

 彼は私たちにこう言ってるのだろう。

 アンドロイドを縛り付けるような事はやめろと。

 しかし、アンドロイドへの国民感情はほとんど最悪だ。

 一度処分して絶対逆らわないアンドロイドを製作する必要がある。

 私たちにどうしろというのだ。

 よっぽど私が変な顔をしていたのだろう。

 Mr.ハマノはクスリとわらって私に言った。

「急ぐ必要はないのではないかね? 敵対するアンドロイドも人間側もきっと分かり合える時が来るだろう。人間側が歩み寄りの姿勢を見せれば、だけどね」

 恐らくその道のりは遠いだろう。

 飛行ユニットは魅力的な技術だったのだが、今の私たちに扱えないのでは仕方がない。

 しかしアンドロイド以外のロボットに重心制御と自我を持たせたら実用化できるのではないか?

 これはいい情報だったな。実際に試してみよう。



 私はこうして、Mr.ハマノから情報を手に入れて帰国したわけだ。

 ただ、実用化にこぎつけるにはまずアンドロイドとの対立を早急に解決する必要があるぞ。

 それは頭の痛い問題だが、日本のアンドロイドを見ていると不可能な気がしない。

 今度また来るときは損得勘定なしでアンドロイドの話をもっと聞きたいものだね。

SF=サイエンスフィクション

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[一言] いまひとつ、何が言いたいのか伝わってきませんでした。
2014/09/08 06:44 退会済み
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