伊瀬隆二 平社員 26歳 所属 植山研究グループ
「ふー」
背もたれに背中を預け大きく背伸びをする。椅子に座りっぱなしのため体がガチガチに固まってしまっている。
「腰が痛いな・・・事務職って楽だけどしんどいよな・・・それに夜勤ばっかりって言うのが辛いなー」
ぶつぶつと文句を言いながらずらりとこれでもかと言うぐらい並べられている液晶を眺める、と数人の子供たちが色々な角度から映っている映像が流れている。彼らは著しく脳の成長が早く一度覚えてしまえば忘れることがないがちょっとした事で過度にストレスを抱えてしまい自傷行為を行ってしまう【絶対記憶維持分裂症候群=STY】と言う病にかかっている。
「過度なストレスって言うけど十分彼らはあんな箱で日々を過ごしているだけでもストレスを抱えてると思うけどな・・・」
煙草に火をつけぼんやりと液晶画面を眺めているとある一人の少女がカメラを見ながら手招きをしている。
「赤崎ちゃんか・・・よっと・・・」
彼は椅子から立ち上がると近くにあったお菓子数点を白衣のポケットにいれ部屋をあとにする。彼の研究室こそ暗闇で明りは液晶だけと言う湿気が好みそうな部屋であるが一歩外に出ると影が出来ないほど電気に照らされ昼も夜も関係がないほど明るい。
「って・・・税金賄えてるからって流石に贅沢に使いすぎだろ・・・月、電気代だけでどれだけかかってるんだよ・・・」
夜勤と言うものが重なりついつい愚痴がぼろぼろと口からこぼれてしまう。いかんいかんと自分の頬を数回叩き部屋をノックする。すると中から可愛らしい少女の声が聞こえてくる。
「入ってもいいかい?」
「伊瀬さん?」
「分かってるくせに」
そう言うと部屋からクスクスと笑い声が聞こえてくる。ドアの横にある液晶にIDカードを当て認証させるとドアがスライドし開く。そこには白い服を着た少女がちょこんとベッドへ座っていた。
「今日は伊瀬さんが夜勤だって知ってたから呼んじゃったの」
ブラブラと足を動かしながら嬉しそうにほほ笑んでくる。天才と言えど彼女たちはまだ子供だ。彼はポケットに入れていたお菓子を取りだし彼女に渡す、と彼女は嬉しそうに受け取り小型USBを渡してくる。
「伊瀬さんに頼まれていた情報だけど大丈夫なの?私、伊瀬さんが殺されるとか嫌だよ?」
「大丈夫だって。そんなへまはしないさ。君たちを逃亡にさせるために頑張ってるんだから」
「うふふ・・・やっぱり伊瀬さんだーい好き!!」
そう言いながら美味しそうに持ってきたキットカットをぼりぼりと食べ始める。彼はほほ笑みながらポケットに入れていた小型液晶にUSBをさし情報を眺め始める。
「やっぱりか・・・」
「ん・・・やっぱりって?私、情報収集は得意だけどよく分からなくて」
「ははっ。天才でも分からない事はあるのか」
「そりゃあそうだよっ!それでどうしたの?」
「ん?ああ・・・やっぱりこの施設は人体実験が行われてるらしい。噂では知っていたけど平社員にはその情報が降りてきていない・・・黒幕は荒矧研究グループの連中か・・・」




