First Is End
聞こえてくる声はどこか懐かしい。きっと誰かが泣いているのだ。産声のようにも聞こえる、悲鳴にも聞こえる、歓喜にも聞こえる。一体どれだけの声をかけられているのだろうか。きっと眠ってしまった人間にはどの声だって聞こえるはずがない。なぜ、生き物は亡きものに泣きを向けるのだろう。当然、それは悲しいからであり、自分の気持ちを整理するためだろう。
泣いている人間も泣いたからと言って人間が蘇るわけではない。きっとそんな事で命を再生できるなら人間と言う動物は非情であったのではないだろうか?そして、非情になってしまった人間は悲しむことを忘れ人も結局は蘇ることなく死にゆくのだろう。敵わないからこそ人はソレを願う。手に届くものに憧れを向け欲することなんて殆どない。憧れが手に入ったところでそれは当たり前になり無関心になってしまう。それが全てでは無いことぐらい分かっている。しかし、大体の人間はきっとそうだろう。今、彼に向って涙を流している女性もきっとその類に分けられる。建前こそ泣いているが本心はきっとそうではない。ただ、同僚として仲間として過ごして来た時間分の涙を流しているだけ。人が死んだことに対してはそこまで気にしていないだろう。それこそ数時間後には涙は乾き、取れた化粧を済ませ自分の人生へと戻っていくだろう。所詮、自分以外の死はただのイベントであり身を挺してまでする事じゃない。残酷な思考であるが彼女はそうせざるを得なかった。精神を人間のままに留めるためには仕方がない事だった。
「それで・・・いい・・・んだ・・・よ」
死を手に入れたと思っていた人物から言葉が出てきた瞬間に彼女の心は一瞬にして震え壊れそうになる。が、それでもなんとか落ち着くように自分に言い聞かせとどまる。
「きゅ、救護班を呼んできます!待ってて下さい!!」
急ぎ白衣を着た女性は部屋から飛び出していく。血液がたりないのか唇の震えが止まらない。両手で体をこすろうとしても自分の体なのに言うことを聞いてくれない。視界に映るのは何重にも見える天井、椅子ぐらいである。意識が遠のきそうになるけれど、なんとか意識を保とうと弱々しくであるが歯を食いしばりこの経緯に至った過程を思いだそうとするが良く思い出せない。思いだそうとしても体の寒さに気をとられてしまい集中出来ない。しかし、今まさに自分が死んでしまうかと言うのに意外に冷静に分析しようとしている所がおかしかったのかつい、口元が緩んでしまう。若干ではあるけれど、手にぬるぬるとした液体が背中全体を覆っている。きっとそれは自分の血だろうな。なんて冷静に考え付く。車輪の音と共に大勢の足音が聞こえてくる。
「血小板製剤を!早く!!」
罵声にも似た声が部屋中に響き渡る。その罵声のような生きた声に床に倒れ込んでいる男性は安堵の表情を浮かべ開いていた瞳を閉じる。




