First Is End
「USB?なんだろうこれ?」
彼女は自分のUSBではないとすぐに分かったけれど、だったらコレは一体誰のだろう?なんて不思議そうに見ているだけだった。USBを手に取りパソコンにつなげる訳でもなく見つめるだけだった。その中には一体どんな情報が入っているのか、それが徐々に気になりだす。そう思った後、パソコンに繋げるまで時間はかからなかった。彼女はいったん気になってしまえば最後まで追求したくなる性分でありそれが認められ、他の技術は平均的なのにもかかわらずこの機関へ入ることが許された珍しい人物でもある。パソコンに差し込むとドライブが静かに音をたて読み込み始める。
「うわっ・・・凄いデータ量・・・2Tの容量いっぱいってどれだけの情報よ」
データを読みこむまでの間、彼女は一時の休息をしようと部屋を後にする。カツ、カツと真っ白な廊下を歩き休憩所へと向かう。しばらくすると喫煙場に白衣を着た見知っている女性が視界へと入り込んでくる。彼女は出来れば会いたくない人物だったのだけれど彼女の視線にも自分が映ってしまっているだろう、そう思い極力早く用事を済ませようと無意識に早歩きになってしまう。
「あら、大和。こんな時間まで残っているなんて珍しいわね」
「一之瀬さん。お疲れ様です。一之瀬さんこそこんな時間に研究室から出てきているなんて珍しいですね」
「まあ、ね。ちょっと気晴らしにアレをやっていたから」
妙に嬉しそうな声色を発してくる目の前の女性に彼女は明らかな不快感を言葉にこそ出してはいないがあからさまに一之瀬に向ける。彼女も大和のそんなあからさまな表情を楽しむようにただ、クスリと笑っているだけ。
「でも、この施設じゃああなたの方が異質よ?験体を一人の人格として扱うなんて研究者として失格よ?」
普通なら我慢していただろう。愛想笑いし、この場を穏やかに過ごしていただろう、が今回は違った。なにかが違ったのだ。
「なによそれ・・・」
「ん?」
缶コーヒーを片手に一之瀬はこちらを見てくる。
「人を人として見てなにが悪いのよ!異質なのはあなた達じゃない!確かに、私たちがしている事は彼らにとって苦しい事を強いているのかもしれない。だけど、それは彼らたちにも、そして、世界で苦しんでいる人達のためにやっている事よ!彼ら達にしたら綺麗ごとを言っているだけに聞こえるかもしれない!けれど・・・けれど!」
彼女は両目に涙を溜めながら目の前の研究者に怒りの視線を向ける。彼女はただ、ただ鼻で笑いため息をこぼすだけだった。
「ふふっ。まだまだ、若いのね。そんなんじゃあ、あなたいつか精神を壊すわよ?験体はネズミと一緒。ただ、少し大きくて知能があるだけの生き物よ。それにあなたが言っている事は綺麗に聞こえるけれど、それは偽善よ。言葉は違えど私たちは同じ投与をしているのだから・・・ふふっ」
「くっ・・・」
そう言うと彼女はもう片方に持っていた缶コーヒーを大和の横に置き立ち去る。彼女はしばらくの間、その場から動くことが出来ずにいた、がそれでもその場にずっと立ち止まっておくわけにもいかず悔しさ、不甲斐なさを奥歯で噛みしめ自究室へと戻る。
「ふー」
缶コーヒーと紅茶を机の上へと置き無意識にため息をついてしまう。
「私、コーヒーより紅茶の方が好きなんだよ」
悔し紛れにそうぼやきながら自分で買った紅茶缶を開け口につけ、ふとPCへ視線を向けると数個のファイルがデスクトップへと読み込まれていた。
「何だろう?Insane project・・・」
彼女は不吉なファイル名ではあったが気になりファイルを開く、とそこには膨大なテキストが陳列していた。一番上にあったfirst dayと言うテキストをクリックする、とある人物の名前が記載されていた。
「赤羽昭・・・って!初代赤羽研究グループ室長の名前じゃない!でも、どうして彼の名前がこんな所で・・・」
ずらずらと書かれている文字を流読しながら下へとスクロールしていく、とどこかで聞いたことのある名前が記載されていた。
「伊瀬隆一・・・?どこかで見たことのある漢字なんだけど・・・」




