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The broken brains is  作者: masaya
序章 断片
14/73

Unconscious abnormalities

部屋を駆けだし一目散にある場所へと向かう。その場所はいくらこの施設で働いている人間でも上層部の者しか立ち入ってはいけない場所。【無警告発砲区域】入り口には嫌みなぐらい大きな赤い文字でそう書かれている。それでも彼は躊躇するとなく駆け抜ける。

「大丈夫。ダミープログラムが五分間は正常に稼働しているはず。大丈夫。大丈夫だからね」

誰に言う訳でもなく彼は全力疾走しながら呪文(あんじ)を唱えるように吐き出し目的の場所まで走り続ける。しばらくすると幾つもの鉄格子が目に入ってくる。部屋の中からは悲観している声、怒りに任せ叫び散らす声、きっと地獄に行ったらこんな声が蠢いているのだろう。

「はぁ・・・はぁ・・・」

目的のドアまでたどり着くと数回、自分自身を落ち着かせるために深呼吸を数回ほどしている、と鉄格子の向こうから子供たちの声が聞こえてくる。

「どうしたの!?こんな所に来たらお兄ちゃんが殺されちゃうよ!」

「早く戻って!何でこんな所にお兄ちゃんが!?」

子供たちは異常事態に戸惑いを隠せずにいるようだった。しかし、彼はなぜか自分の命も危うい場所に居るのにもかかわらず笑っていた。子供たちが、子供らしい反応をしてくれていることが素直に嬉しかったのだ。子供らしい反応、それは当たり前のようで当たり前じゃあない。彼には心を許してくれている証拠だろう。彼は胸ポケットにしまっていたカードキーを使い鉄格子の扉を開ける。その異常(こうどう)に驚きを隠せずにいるのはもちろんその中に囚われていた子供たち。彼はお構いなしに全力で扉を開ける。

「いいか?これからお前たちは逃げるんだ。人殺しなんて絶対にさせない。人を殺すと言うことは人間を捨てると言うことなんだ。君たちにはまだやりたいことだってあるだろう?確かに今まで幼い君たちに酷い事をしてきた大人たちが居るだろう。殺したい、と思うだろう。けれど、それは子供の君たちがすることじゃあないんだ。大丈夫。この施設を出ればきっと楽しい世界が広がるから。憎しみよりもきっともっと大切な物が手に入るから」

彼は戸惑いを隠せずにいる子供たちに熱弁を繰り広げていた。ふと、我に返ると、なにを言っているんだろう、なんて少しだけ照れくさくなってしまう。その間も子供たちはジッと彼を見つめるだけだった。

「おっと、ごめんごめん。えっと・・・ひろき!こっちに」

「えっ・・・」

彼は子供たちのリーダーでもある江藤ひろきを呼び肩をもち他の誰にも聞こえないように小さく耳打ちをする。

「勝手な事を言っているのは重々承知だけど、お前がこいつらをちゃんと連れて外の世界へ連れていってやるんだぞ?503の部屋のベッドの下には抜け穴がある。そこから逃げるんだ。部屋のロックは開けておいたから大丈夫。あと、未来(これ)もお前に託す」

そう言うと彼は持っていたフロッピーを彼の腰へさしこむ。不安そうにしている子供たちを彼は笑顔で一人、一人に向け返す。すると、警戒音が施設中に響き渡る。

「ちっ。もうばれたか」

彼は子供たちを503へと連れていく。未だに理解が出来ていない子供たちも多く居るだろう。理解なんてしなくてもいい。兎に角、彼はただ、子供たちに人殺しをさせたくない、と言う気持ち一心で動いていた。503(あかずのべや)へと子供たちを押しこみ笑顔を向ける。

「最後に絶対に人殺しはダメだからね?兄ちゃんとの約束だ。なんてな。大丈夫だから自分の事だけを考えて行動してな。南区に居る夢野えりかと言う人の所に行けばきっと助けてくれるからそこまで頑張って逃げるんだぞ!じゃあ、僕は研究室に戻るからね!大丈夫。僕はここの職員だから殺されはしないよ!だから僕も後で君たちの後を追うから安心して逃げるんだ」

彼はそう言うと外側からロックをかけ出口へと歩き出す。江藤はグッと彼から預かったフロッピーを手に持ち戸惑いを隠せずにいる仲間たちを逃げ穴へと誘導し始める。

「本当にお兄ちゃん大丈夫かな?」

「大丈夫って言ってたから大丈夫だよ。私たちに嘘なんてついたことないもん」

「兎に角、お兄ちゃんがくれたチャンスなんだ!南区まで逃げよう!」

一人、一人穴へと入っていく子供たち。江藤は仲間が全員穴へ入った事を確認し、穴へ入ろうとした瞬間なにか破裂音のようなものが耳に入ってくる。

「!?」

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