Unconscious abnormalities
「き、君は?」
「こんばんは。ご機嫌いかがですか?・・・ふふっ」
年齢には似合わない微笑み。彼はすぐに自分が知っている湯ノ原葵ではなかった。目の前に居る生物はいったい何者なのだろうか?容れ物は見なれているものなのに何故かまったく違うものになってしまっている。鼓動が早くなり二人の周りに漂う空気が冷たくなってくる。
「ふふっ。緊張しなくて大丈夫です。貴方は彼女の大切な人間。壊したりしませんから」
「もの・・・ね」
大丈夫、なんて言われても彼女から放たれる雰囲気はどう見ても、大丈夫、なんて悠長に構える事は出来ず強張った体勢のまま彼女を見続けるしかなかった。彼女は彼の緊張している表情が面白かったのかクスリと静かに笑い、視線を向ける。
「まあ、その体勢でいいのなら別にそれでも構いません。とりあえず、これ、頂いてもよろしいでしょうか?」
そう言うと彼女は目の前にあったカップに視線をやり、返答を待っていた。言葉を発する余裕がなかったためぎこちなく頷く、と彼女はにこりと微笑み、静かに、上品にカップに口をつける。飲み終わりなにかを思いだしたかのように再度こちらを見てくる。
「聞いているとは思いますけど、ここの施設の大人たちは皆、壊されるそうですね。私も彼女の中で聞いていたので」
彼女の中、と言うことは彼女は湯ノ原葵のもう一人の人格者だろう。動揺し続けても仕方がないと思ったのは彼は平常心を装い彼女に話しかける。
「えっと・・・」
「私の事はアリス・・・と」
「ありがとう。アリス・・・それも重要な話しなんだけど、それよりもさっきの発言だけど・・・」
死んだから楽になれるんだよ?、彼はこの発言になにか引っかかっていた。この施設に入っている人物からこの様な、死んだら楽になる、なんて言葉が出てくるはずはないのだ。しかし、現にこうして発言している人物が居るのだから自分よりも倍以上幼い子供につい質問をしてしまう。質問に対して彼女もまたクスリと笑う。
「人が壊されるかもしれないのに、それよりも自分の疑問が大切なんですね。やっぱり先生は・・・いいですね」
大人びた微笑みは、以前どこかで見たことがあるような表情であった。しかし、今の彼には思いだす余裕なんて無かった。
「えっと・・・」
戸惑っていると彼女は口を開く。
「言葉の通りですよ。死はなによりの安息。なにも考える必要がなくなり自由になれる。だから、考えることが面倒くさくなったのだったら・・・と言う意味で言ったんです」
彼女の発言を聞いたせいか体が熱くなるのが分かる。グッと握り拳をつくり彼女を睨みつける。
遅くなり本当に申し訳ありません。短いですが少しずつ更新していこうと思いますのでよろしくお願いします。




