【荒矧研究所集団殺傷事件】 レポート零
ある人はこんな事を私に言ってきた。「君には特別な才能がある」ある人は「君の姿かたちには興味は無い脳に興味がある」、と私の周りには変な白衣を着た大人たちが私を物として見ていた。その視線が私は大嫌いだった。人間としてではなく標本として見ているのは生まれて一年が経つ頃には分かっていた。私は自我の発達が著しく普通の人よりも早いらしい。それはどうしてか分からない、けど私は生まれて数時間後の記憶ははっきりと覚えている。ここまでくれば自分自身でも異質だと言うことは分かる。だからと言ってそれがどうしたかと言いたい。
一人病院か施設か分からない一直線の廊下を歩いている。上下左右どこに視線を向けても真っ白な壁だけがいつもなら広がっていたのだけど、今は違う。べったりと斑模様に赤いシミが所々についているし下に視線を向ければ人肉がころころと転がっている。誰がこんな素敵な事をしてくれたんだろう。彼女はこの残酷な殺人現場を見てもだた、感謝するだけだった。転がっている肉片は全て彼女が知っている人間の破片だろう。
「うふっ。これって神様がくれたチャンスよね」
彼女は死人を目の前にしても歩くスピードは変わらず前へと進んでいた。気持ち足取りが軽くなったようにも見える。年相応の喜ぶ表情をしつつ彼女は歩いている。しばらく歩いていると鉄で出来た頑丈そうな扉が目に映る。彼女は嬉しかっただろう。特別から普通へと変換できる扉を見つけたのだ。普通を求める異常者。扉に手をかけた瞬間、高圧電流が体中を襲ってくる。
「ぎゃああああああああああああああああああああああああああ」
ただただ喚き散らすことしか出来ない。手を離そうとしているが体が麻痺をしてしまい自分自身で体を動かすことができない。プスプスと彼女の体から異臭がだたよい始める。未だ、彼女はぶるぶると体を震わせながら電流を体全体で受け止めている。
・・・
・・・
・・・
「面白いですね。流石に職員を残虐し始めた時は驚きましたが・・・」
真っ暗な部屋でぼんやりと薄気味悪く光るドラム缶テレビから流れる映像を愉快そうに眺める男性が一人。隣でメモのようなものを取りつつ彼の会話を聞き逃すまいとしている男性一人がその空間には居た。椅子の背もたれに全体重をかけメモを取っている男性へと視線を向ける。
「検者30021番は失敗っと・・・。彼女も所詮天才ではなく異常者だったな」
やれやれと言う表情で椅子から立ち上がり部屋から出るためドアノブへ手をかける。
「あ、もう電流良いぞ?流石に死んでるだろうからな」
「あ、はい。了解しました」
そう言うと彼は部屋を出て行く。記録をしていた彼もメモ用紙を机へと置き画面上ではあるが追悼をしようと視線を向けた瞬間、体全身が麻痺したかのように震えだす。ありえない光景を目の当たりにしてしまう。急ぎ報告をしなくてはいけない。分かっていた。脳では分かっていても体が言うことを聞かない。
「な、な、なんで・・・」
彼はまだ電流を止めた覚えなどない。人が高圧電流を受けてしまうとどうなるかなんて分かりきった事である。しかし、だけど、彼が見ている事は夢でも無ければ幻覚でもなかった。
画面上に映っていた彼女は電流を浴びながらもしっかりとこちらに視線を向けほほ笑んでいた。
超不定期更新の物語でございます。少しでも見て頂いく方々に、あー次はどうなるんだ?、なんて思っていただけるよう頑張ります。とても暖かい目で見てやってください。