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声美少女伝説  作者: yuzuki
第1章 「ぷりん王国 - 黎明期」
9/21

第九話 -第EX1回通常放送回-


 こんにちは!

「こ、こんにちは……」

 ごらぁ! もっとキリキリ喋らんかい! そんな声で、リスナーに熱い思いが伝わると思ってんのか!?

「オマエいつも情熱なんて伝えてないだろ。わ、わかったから、足蹴んなっての」

 はい。皆さん、こんにちは!

「こんにちは!」

 それでは、本日の放送を始めたいと思います。メインパーソナリティはもちろん、どうもボクです。

 そして、こちらは下僕の――

「下僕じゃねーよ。……いえ、はい、オレは下僕です、下僕のミッチィです」

 はい。本日はこの二人で放送を行っていきますので、どうかよろしくお願いします。

 ああ! 皆さん、いくらプリンちゃんもチルも出てないからといって、音量下げたり放送切ったり、投稿ボックスを荒らしたりしないように。

 なぜ今日はチルがいないかというと、そうですね、自分で作った料理に当たって寝込んでいるということで。

「ただの風邪だろ」

 はい。将来的にパンデミックが予想されるであろう新型インフルエンザのプリン型ですね。ボクも先月重い病気にかかりまして、夢と現実とトイレの間を行ったり来たり。

「ただの食いすぎだろ」

 いいえ、違います。

 飲みすぎです。

「…………抹茶ミルク」

 あああ、やめてください! まだトラウマが残っていますので、傷口を抉らないでください。

 はい。そんなわけで、チルがお休みしていますので、代わりにこの下僕を連れてきた次第です。

 え、ピンチヒッターはプリンちゃんじゃないのかって? 違います、そう都合よく出てくれるはずがないじゃないですか。出るかどうかどうしても知りたければ、お近くのプリン星大臣の方までお問い合わせください。

「それで、なんでオレなんだろうな」

 うるさい黙れ。

 借金のかたに売られた分際で、文句言うとは何事ですか。借金分はしっかり働いてもらいますよ。

 もっとも、この放送の出演では、利子分にもなりませんけど。

「おい、ちょっと待て! それは聞いてないぞ、出演料分くらいは減らしてやると――」

 ボクの出演料はタダです!

「……」

 ……

「……」

 ……はい、文句があるなら部長さんまでお願いします。というか、放送部員でもない我々二人がなんでこんなことしてるんでしょうね?

「だな……」

 貴重なお昼休み削って働いてんですから、メシくらい奢ってくれたっていいじゃないですか。

「当然だな」

 ……出前でも取りますか。

「よしきた」

 もちろん部費で。はい、部長さんの苦情は聞きませんよ。文句があるなら投稿ボックスへ。先生方は、文句があるなら毎日出前取ってる理科準備室の先生までお願いします。あ、ミッチィ、ボクはいつものチャーシュー麺ネギ少なめ麺固めで。

 それでは、出前が届くまでの間、暇つぶし程度に放送を続けていきますので、皆様どうかよろしくお願いします。

 今日はチルがいませんのでボケとツッコミにキレがないかもしれませんがご了承ください。まぁ、ダブルボケもそれはそれで一つの漫才のカタチとして定着してきてますのでアリかなと。

「オマエとコンビ組む気はねーよ」

 やだなぁ、すでに二人でワンセットとして扱われてるじゃないですか。ミッチィが何かやらかすと二人揃って職員室、ボクは全く関係ないのに二人揃って生徒指導室、風邪で休んでいたというアリバイがあろうと二人揃って校長室。

「その呼び出しの半分以上は、オマエの責任だけどな」

 はい、というわけで今回は相方がミッチィなのですが、これではいじるネタがありません。現在投稿ボックスに送られてきている投稿は、そのほとんどがチルをいじるネタなので今回は使用することができないんですよ。

 チルがいないので言います、皆さんグッジョブです。

 さて。

 では、本日はどうしましょうか?

「オレに聞くな」

 電話でチルを呼び出しますか?

「そこは寝かせてやれよ」

 さすがに自宅療養中の病人を呼び出すのは心苦しいです。

 というわけで、本日はチルの身代わりにミッチィがいじられ役となりますので、皆さんからの投稿をお待ちしております。

「そういうポジションなのかよ!」

 はっはっは、今更気づいたんですか。

 それでは、皆さんがミッチィへの怨みつらみを書いている間に、一つメールを紹介したいと思います。まぁ、今回この投稿があったから、無理矢理ゲストに引っ張ってきたんですけど。

 2年A組の匿名希望のRさんからの投稿です。

『パーソナリティのお二方、リスナーの皆さん、はじめまして。私はつい先日、非常にたいへんな事件に遭遇してしまいましたので、思わず筆をとった次第であります。これは以前から噂されていたことなのですが、根も葉もない話と全く信じておりませんでした。しかし、私はあの日、衝撃の現場を目撃してしまったのです。なんと、今学校で噂の女の子、プリンちゃんが男の子と一緒に歩いているではありませんか。その相手というのが、また私達のよく知る人物、なんとミッチィだったのです!』

「ちょっと待て! マジで待て! それはいろいろおかしいぞ! そもそも、それをなんでリッコのやつ投稿なんてして――」

 黙りなさい! 今は投稿を読んでいる途中です、それについての弁論は後でじっくり聞かせて頂きます。

『私は我が目を疑いました。私自身はあまり彼女のことをよく知らないのですが、一緒にいた彼女をよく知る友人Tは間違いなく本人であると断定しました。茫然自失とする私達の前を、二人は仲良く並んで映画館の中へと入っていったのです。ひょっとしたら腕くらい組んでいたかもしれません。思わず写真に撮りましたので同封いたします。プリンちゃん本人に聞くのはあまりに恐ろしいので、是非とも彼女がいないところでミッチィを問いただして頂きたいです』

 という投稿でしたので、写真を先ほど部長さんとHPのトップにアップしておきました。皆さんご確認ください。

「お前ら全員グルかよ! てか、いつも写真あげないクセになんでこういう時だけ――」

 被告人、内容に相違ありませんね?

「……」

 肯定!

 判決、さらし首!

「すでにさらしてんじゃねーか!」

 はい、というわけで、これをふまえて皆さんからの投稿をお待ちしております。

 それでは本日の曲紹介を――


 ♪~



 皆さん、たいへん悲しいお知らせがあります。

 皆さんからのHPへのアクセスが殺到しましたので、サーバーがダウンしております。情報の先生から苦情が入ってきておりますので、もう少し時間が経ってから繋ぎ直してください。

 なので、このわずかな時間の間に届いたいくつかの質問メールに答えていきたいと思います。もとい、答えさせます。

「だから、あれはたまたまチケットが余ってただけで。そもそも、お前がドタキャンしやがったせいじゃねーか。だいいち、ヒメちゃんはそれまでリッコ達と一緒にいて……」

 そんなのは全く関係ないです。重要なのは、ミッチィがプリンちゃんと一緒にいたという事実のみ。

 届いているメールの大半はミッチィへの果たし状だったり闇討ち宣言だったりしますが、一部野次馬根性丸出しの質問メールがありますので、適当に見繕って質問していきたいと思います。ミッチィ、登下校時には十分注意してください。

「人事だと思いやがって……」

 はい、人事ですよ。ちなみに、ボクもミッチィもしばらく前からケイタイの電源を切っておりますので、いくらメールを送ってもムダです。

 それでは、一つめ。ストレートな質問です。

『ミッチィは、本当にプリンちゃんと付き合っているのですか?』

「付き合ってない!」

 即答です。これは、用意されていた答えですね。では、次に――

「待て! オマエの解説がいちいち――」

『付き合い始めてどれくらいですか?』

「だから、付き合ってねーって言ってるだろ!」

 往生際が悪いですねぇ。リスナーは誰もそんな回答は望んでいないんですよ。

 それで、いつからの付き合いなんですか?

「違う! あの日初めて会っただけで、それ以来一度も会ってない!」

 ほほう。初めて会った日に、一緒に映画を見に行くほどの仲になったんですね。

「だから、それはたまたま映画のペアチケットが余ってただけで。あの日は、ヒメちゃんと映画見ただけで、他は何もねーよ!」

 別れ際にキスとか。

「ねーよ!」

 腕組んで歩いたり、ハグしたり。

「ねーよ! まだ手も繋いでねーよ!」

 ということは、いずれはそういう関係になりたい、と?

「……」

 ……

「……」

 出ました! 皆さん、犯人ホシはクロです!

 プリンちゃんファンクラブ(非公式)の親衛隊の皆さん、制裁をお願いします。

「待て待て! これは誘導尋問だろ!? 別に妄想するくらい個人の勝手で、そもそもお前らだってそれくらい――」

 はい、続いての質問です。

『出会いのきっかけは何ですか?』

 姿を見せないと噂の彼女、どうやって出会うのか、それが分からなければ同じスタートラインに立つことすらできない。ミッチィへの嫉妬は、つまりそういうことです。ミッチィ、どうですか?

「街彷徨ってたら、たまたまRやTと一緒にいるところに遭遇した、以上」

 使えない男ですねぇ。だから、だれもそんな使えない情報を望んでは……

「本当なんだから、しょーがねーだろ! そもそもTやRが一緒にいなけりゃ判別つかねーよ、オレは顔だって知らなかったんだから」

 ということらしいです。皆さん、鵜呑みにして街をゾンビのように徘徊しないように。

「てか、Tやオマエの周りを徘徊した方が、遭遇確率高そうなんだけどな」

 ……なんで、そこでボクの名前が出てくるんですか?

「だって、本人に聞いたもんよ。オマエとヒメちゃんは――」

 わぁああ!! ああああーーー!!

(それはトップシークレット! 彼女の身元詮索は止してください、チクりますよ?)

(「わ、わかった……」)

 ということで、唯一の仲介人はT氏ということで。

「今いない病人に丸投げすんなよ」

 続いての質問です。

『プリンちゃんの第一印象は?』

「そうだな……小学生みたいなチビで騒がしい女」

 つ、次の質問は、

『一緒に話してみて、どんな感じの子でしたか?』

「ムカつく変な電波女」

 ……親衛隊の皆さん、ミッチィに制裁をお願いします。

「待て待て! なんでそうなる?! オレはただ単に、オレ的に素直な感想を述べただけで」

 キミは今、数多くの敵を量産していますよ。そのことをよく理解した上で、次の質問に答えてください。

『彼女のどこに惹かれましたか?』

「……」

 この裁判に、被告の黙秘権は認められていません。もう一度聞きます、

『彼女のどこに惹かれましたか?』

「…………む、胸が意外にでかかったとこ」

 ……

「……」

 ……判決、死刑!

 キミはそんなとこばかり見てたんですか!

「ちょ、ちょっと待て! 違う! んなこと、素直に答えられるかよ!」

 今のキミの発言からは、彼女は胸がでかいけど電波で変な女という、最悪の印象しか残らないと――

「だから、こんな場所で素直に言えるわけねーだろ!」

 はい。残念ながら、この学校での放送は、毎回ボクやチルを通して、録音したバックナンバーを彼女に送り届けているという。

「んなこと知るかよ! てか、バックナンバーあるなら、HPにあげろよな!」

 ダメです。そんなことしたら、放送部の貴重な収入源がなくなってしまうじゃないですか。

 知ってますか? プリンちゃんの出演放送回はかなりの高値で。

「売るなよ!」

 あ、すみませ~ん部長さん、これシークレットでしたか?

 それならそうと、ちゃんと口止め料を払っていただかないと。

「オマエ……」

 はい、というわけでミッチィ。

「んだよ……」

 今までの発言は、ツンデレということで大目に見てあげますから、もう一度だけチャンスをあげます。いいですか。よ~く考えて、今後のことも考えて、質問に答えてください。いいですか?

「……」

『彼女のどこに惹かれましたか?』

「……」

 ……

「…………な、生意気そうな目が、似てたから……」

 ……は?

「い、いや、だから……小悪魔みたいなんだけど、そのわがままに付き合わされるのも案外悪くないっていうか…………」

 ……ただの、ドMですね。

「違う! そうじゃない! そうじゃなくって、ただのムカつく女かと思ったら意外に可愛い性格してて、思ってたヤツにそっくりで、ってオレは何を言ってんだぁあああ!!」

 ……何を言ってんですか。

「や、やめろ! そんな蔑んだ目でオレを見るなぁ!」

 ……ただの変態ですね。

「うわぁああああ!!」

 ……

 ……はい、被告が自分の発言に耐え切れず床をのたうち回っておりますので、本日の裁判はこれにて閉廷とさせていただきます。

 皆さんご静聴ありがとうございました。

 また最後になりましたが、いつものようにこの放送に関するご質問やご意見・ご感想は、掲示板への書き込みなどで受けつけておりますので、どうかよろしくお願いします。

 それでは、パーソナリティを務めさせていただきましたボクと、

「うわああ~あああ~!」

 被告人、2年A組の(ド)Mくんでした。

 さて、では出前のラーメンを。

 え、生徒指導室に届いてる? では、のびないうちに――


――ピ――ブチン!



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