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声美少女伝説  作者: yuzuki
第2章 「ぷりん王国 - 揺籃期」
21/21

第二十話 -第9回ぷりんちゃん放送局-

「それで、アイツはどこに行った?」

 サユリンはテーブルの向かい側に座るチルへ向かって問いかけた。チルは、次のお菓子を開けようとしていた手を止めて、キョトンと見つめ返して答えた。

「さぁ?」

 私知らないよと首を傾げて、チルはポテチの封を開けた。

 旅館の一室、彼らの泊まる部屋のテーブルの上は、食べ散らかしたお菓子や缶ジュースでいっぱいだった。

「……ていうか、チルはまだ食べるのか?」

「い、いいじゃない別に! 明日はまた動くんだし、今日くらいは食べたって……」

「その余分なカロリーが、チルの場合、胸じゃなくって全部お腹の方につくんだよね」

「……」

 こちらを見もせずに言うリッコに向かって、チルは無言で恨めしげな視線を送っていた。

 リッコは窓際の椅子に座って、小さな丸テーブルの上に並べた木のクロスパズルをジッと見つめている。その向かいの椅子に座るミッチィは、同じくパズルを覗き込んで、ニヤニヤと笑みを浮かべながらリッコに言う。

「どうだ、分かったか?」

「んんっ、待って、ちょっと待って! もう少しでヨットのカタチが!」

「このイナズマ型のパーツがポイントだな」

 リッコと二人で話しながらこちらからの視線に気づいたミッチィが、思い出したように言った。

「そういえば、ヒメちゃんならさっき、何か遊び道具借りてくるってどっか行ったぞ」

「この旅館、テレビも無いなんてねぇ。暇だよね」

「温泉旅館なんだから、卓球くらいあるんじゃねーの? あ、それをこうすると……ピカチューのカタチ」

「ええ~っ」

 不満の声をあげるリッコ。

 視線をチルの方へと戻したサユリンは、またポテチへと手を伸ばしている彼女に聞く。

「トランプとか、持ってないのか?」

「私は持ってないよ。たぶん、部長がそういうのまとめて持ってたはずだから、それを借りに行ったんだと思うけど」

 と、廊下の方から軽い足音が響いてくるのを聞いて、二人は目を合わせた。

 そして、勢いよく部屋の扉が開け放たれた。

 ――バン!

「みんな~! オモチャ借りてきたよ~!」

 自慢げに、高々と掲げるそのオモチャは――


 ――ウネウネウネ~


 艶めかしいピンク色のコケシのような何か。電動のようで、彼女の手の中で悶えるような滑らかな動きと心地よさげな微振動を繰り返していた。

 それを見た瞬間、チルはそれを奪い取るとゴミ箱の中へと叩きつけるように投げ捨てた。

「ああ~、私のアンダーソンくんが!」

「うっさい! 名前までつけてんじゃないっ!」

 ガタガタガタ。ゴミ箱の中からは、アンダーソンくんの悲しげな悲鳴が聞こえてくる。

「どう見てもバイ――」

「いや、あれはディル――」

「ちーがーいーまーす~! あの子はアンダーソンくんなんです!」

 自信満々に言う彼女に向かってチルは叫ぶ。

「なんてもの借りてくんのよ!?」

「だから、(大人の)オモチャを――」

「普通のもん借りて来いよ!」

 見かねてサユリンも彼女へ言い返していた。

 チルとサユリンの二人にツッコミを入れられて、さすがの彼女も少しだけ焦ったような様子を見せた。慌てて言い繕った。

「だ、大丈夫大丈夫! 他にもオモチャは借りてきたから」

 そういって、彼女は後ろ手からもう一つのオモチャを取り出した。

「じゃーん! アンダーソンくんの相方の、TENG●くんです!」

「アウト――っ!!」

 取り出したそれ、ボトルのようなナニカを彼女から取り上げて、チルはまたゴミ箱へと投げ捨てた。

「ああ~、なんてことを!」

「部長はまたなんてものを……」

 チルとサユリンは頭を抱えている。それを手渡す方も手渡す方だが、それを嬉々として受け取るコイツも相当に性質が悪い。

「そういえば、TEN●Aくんは私と一緒で入れる方ではなく入れられる方なので、正しくは『TE●GAくん』は『T●NGAちゃん』と呼ぶ方が」

「うっさい黙れ!」

「うわぁ~! コレ、すっごいね」

「リッコ、ゴミ箱を漁らない! 手を入れようとすんなっ!!」

「大丈夫ですよ。部長氏からもらってきたものですが、まだ彼の魔の手には落ちてないみたいなので、もちろん●ENGAちゃんは乙女のまま――」

「いったい何が大丈夫なんだよ……」


 騒がしい旅館の一室で。

 夜の宴会はまだ始まったばかり……。








『プリンちゃんのぉ、今週の一言!』



 ウーノッ!


「あ、ダメダメ。ミッチィ、こいつ止めて」

「無理だ。ドロツー持ってねーよ」

 ほらほら。足掻いたってムダですよ。今日のヒメちゃんはついてるんです。今のヒメちゃんは、いろいろついてないんですが、ついてるったらついてるんです。

「ヒメちゃん、ついてないって何が?」

 何がって? ナニ(・・)がです。ワタクシのアンダーソンくんがです!

「こらリッコ! いちいち拾わなくていい」

 いいじゃないですか。最近、チルやサユリンじゃ、ちょっとした下ネタくらいじゃ全部スルーされるんだし、放送慣れしてないリッコならきっと、いっぱい拾ってくれるんじゃないかって…………あ! それ、あがりです!

「……げっ!」

「バカッ!」

「ミッチィのあほう!」

 やったー! 一位ゲット~!

 はーい! 皆さん、こんにちはこんばんわ。それでは本日の放送を始めていきたいと思います。

 メインパーソナリティはもちろん、一年間の放置プレイもなんのその、失踪しそうで失踪していないこのワタクシぷりんちゃんでお送りしたいと思います。どうぞよろしく。

「……ちなみに、メインの彼は?」

 メインの方の彼は、完全に失踪しました。

 はい。

 というわけで本日の放送は、前回放送に引き続き、合宿旅行の模様を垂れ流していきたいと思います。

「ねぇ、ヒメちゃん?」

 なんですかリッコ。

「どうして急に収録始めたの?」

 それはですね、このオモチャのレンタル料として、部長氏に何かを収録してくることを強要されたからですよ。

 ちなみにですね、このカードゲームは『ウーノ』という名前のもので、どこかのメンズ化粧品会社のような名前をしていますが決して某有名カードゲームとは似ても似つかぬ斬新な最新鋭のカードゲームでして――

「こら! 余計なことは言わなくていい!」

 そうでした。気にしたら負けですね。

 それでは、せっかくなので最初にメンバー紹介をやっちゃいましょう!

 今日は収録メンバーが多いので、右から順に自己紹介をどうぞ。

「チルです」

「リッコでーす」

「……サユリンです」

「ウーノ!」

 はい。

 以上、私を含めて、今日はこの五名のメンバーでつつがなく収録を――

「やったー! あがりだ!」

 こら! ウーノくん、うるさいですよ。こっちは真剣に収録中なんです。

「こっちは、真剣勝負の真っ最中なんだが……」

 サユリンもうるさいですよ。

 早く勝負の決着をつけてください。早くあがってしまった私たちは暇なんです。

 というわけで、真剣勝負続けている三人を横目に、のんびりと実況を続けていきます。

 いやぁ、皆の目が血走ってますね~。何故に皆がこんなにも真剣にゲームをしているかというと、なんと敗者には屈辱の罰ゲームが待っているからです。

 当然ですね。

 まぁ、それに気づいた私は、タイミングを見計らって収録を開始したわけですが。

「……って、ちょっと待って! まさか、罰ゲームを収録する気?!」

 当然です。

 さすがチルですね。気付かなくてもいい余計なことに気がついて、自分で自分の首を絞めています。

 おおっと! 三人のやる気度が一気に上がりましたね。公開罰ゲームの恐怖に気がついたようです。きっとこれが放送されている頃には、敗者は放送室の片隅で頭を抱えて悶えていることでしょう。

 ねぇ、チル?

「うっさい! まだ負けてない!」

 手札の枚数的に、チルが第一候補ですよ。

 現在、手札はチルが5枚、サユリンが4枚、リッコが2枚です。

「ウ~ノッ!」

 あーっと、ここでリッコが勝負に出た!

 この戦局でのリーチ、解説のウーノくんはどう見ますか?

「んん~、まだ時期尚早と言えるでしょうね。他のメンバーの手札が揃っていますから」

「ドローツー」

「あ、私もドローツー」

「キャ~!」

「と、このように反撃をくらうわけです」

 的確な解説をありがとうございます。

「ウーノ!」

 おっと、そうこう言っているうちに、今度はサユリンがリーチです。

「まぁ、罰ゲーム的に、サユリンが負けてもおいしくないし」

 何言ってるんですかウーノくん。

 一部の人たちには、そういう需要だってあるんですよ。

「お前こそ何言ってやがる、ねーよそんなの! ……はい、あがり!」

 サユリン勝ち抜けです。

 残りは、チルとリッコの一騎打ちです。

「むむ……」

「はい、ウーノ!」

「ああ! 待って待って、リッコ!」

「待たない。はい、おっしまーい!」

「きゃあ~!」

 試合終ー了ー~!!

 さすがチルです。みごとに、皆の期待を裏切りませんね。

 それでは、嬉し恥ずかし皆さんお楽しみの、罰ゲームのお時間です。

 チル、罰ゲームの内容は覚えていますね?

「知らない知らない!」

 はい、本人もよく分かっているようです。

「そんな、収録するなんて聞いてない! 無理だってば!」

 チル! 逃げ場はありませんよ、覚悟決めなさい!

 いいですね!

「…………はい」

 さて、敗者が観念したところで、罰ゲームを始めましょう。

 皆、拍手!

 パチパチパチパチ――

 それではいきましょう!

 3、

 2、

 1、

 キュー!


「――ご、ご奉仕するニャン!!」


 ……

 ……

「うわ~ん!」

 え~、それでは、解説のメイド評論家クリスティーナザマス・ウーノ・ミッチィ先生、よろしくお願いします。

「甘いザマス! なんですかその気の無いセリフは?! お前のご奉仕はその程度なのか、とワタクシは問いかけるザマス! メイドたる者、もっとご奉仕精神を持って、真剣に、熱く、ご奉仕を訴える心が必要ザマス! ヒメちゃん、この未熟なメイドにプロのお手本をお願いします」

 ――にゃあ! ご奉仕するにゃんっ☆

「ごふっ! ご馳走様です。このように『!』ではなく『☆』を飛ばすようにもっと深く心を込めて――」

 はい。

 今、なぜワタクシはやらされたのでしょう。

 まぁそれはいいです。気を取り直して、次のゲームへ行きましょう。

 ですが、その前に罰ゲーム決めです。

「勝ったの、だ~れだ?」

 ビシッ!

 はい! ワタクシです!!


 罰ゲーム! 負けた人は、『アンダーソンくん』を口にくわえて、記念撮影してもらいます!


「ギャー!!」

「誰だよコイツ勝たしたの!?」

「アンダーソンくん拾ってくんなっ!!」

 それではここで、6人目のメンバーの紹介です。

 アンダーソンくんです、どーぞ!


 ――ブゥ――ン――ウネウネウネウネ~


 アンダーソンくんも、あらぶっております!

「リッコ! マジックペンで顔書いてんじゃねーよ!」

「ええ~! だって見るからに凶悪そうな面構えだったし、少しはチャーミングな表情になるかなって」

 キリリとした太い眉毛がチャームポイントですね。

 さぁ! このアンダーソンくんと一夜の思い出を刻み込むのは、いったい誰になるのでしょーかっ?!

 ちなみに、放送聴いてる方にご説明しますと、アンダーソンくんは電動こけしみたいな――

「説明すんなっ!」

 はい。視聴者様のご想像にお任せします。

 なお、罰ゲームの写真は、後日、いつものように放送部のHPにアップを――

「すんな!」

「ダメ! 絶対ダメ!!」

 はい。未成年の方々には、とてもお見せできないような危ないベストショットとなってしまいそうなので、公開するかどうかはまた後ほど先生方と協議する方向で。

 ……えっとですね、アンダーソンくんだけじゃインパクトが足りないので、オプションとして、ほっぺにヨーグルト的な何かを付け――

「いらねーよ!」

「インパクト十分だからっ!!」

 仕方ないですね~。

 では敗者の方には、このチェリーボーイなアンダーソンくんを穴の中に導いてあげて、彼の初体験を奪い大人にしてあげるという大役を務めていただくということで。

「そういう言い方すんな!」

 チルがそんなに必至なのは、自分が一番の候補だっていう自覚があるからですよね。

「違う~!」

 それではいきましょう!

 デュエル、スタート!






 ウ~ノッ!


「ああー!」

「だから、なんでお前はそんなに早いんだ!」

 ふっふっふっ、誰にもヒメちゃんは止められません! 今日のヒメちゃんは、ついてるったらついてるんです!

 ――ウネウネウネ~

「アンダーソンくんを股間に構えんな!」

 やったぁ~! あがりです~!

「くそっ!」

「ヒメちゃん、強っ!?」

 ふぅ。

 それでは、一足先に罰ゲームの魔の手を逃れたワタクシは、皆の血で血を洗う抗争をニタニタしながら眺めていきたいと思います。

 とは言っても、一人で実況解説は荷が重いので、誰かもう一人あがってほしいところ。

 ちなみに、私個人としては、サユリンあたりに罰ゲーム引いてもらいたいですね~。

「なんで俺なんだよ! そんなん見たって誰も――」

 需要ならあります!

 某一部の文芸部員の方々なら、狂喜乱舞して喜んでくれると思います。高値で買い取ってくれそうですね~。

「腐ってやがるっ!?」

 というわけでサユリン、素直に負けてください。

「ぜってー負けねぇ!」

 あ。なんなら、ミッチィでも構いませんよ。サユリンほど高値はつかないかもしれませんが、それはそれで重要が……。

「……しゃあー!! あがったぜー!」

 あ~っと! なんと、サユリンをいじってる間に、2位でミッチィがフィニッシュを決めましたー!

「うそー!」

「くそっ!?」

 私がしゃべってる陰で、こっそりとウーノ宣言を行っていたようです。なんと姑息な!

「何気にミッチィもこういうゲームって強いよね」

 それは私も認めるところですが、それならば、なぜ校内博打では借金が膨れ上がっているのでしょうか?

 さぁ、罰ゲームの行方はこの3人に絞られました。果たして、この中の誰がアンダーソンくんと熱い情を交わすことになるのでしょうか。

 解説のミッチィさんは、誰が本命と思われますか?

「そうですね。やはり本命は、チルでしょうか。決してゲームに弱いという印象はありませんが、ここぞという時の引きは素晴らしいものがあります。必ずや皆の期待に応えてくれることでしょう」

「ほっとけ!」

「順当にいけば、リッコが負けることも十分にありえますね。この5人の中では、単純に、一番弱いです」

「ミッチィひどい!?」

「事実です。そして、ダークホースは、やはりサユリンでしょうか。いつも手堅く上がっていて、彼はなかなか負けない印象があります。ですが、2対1で打ち崩せば、あるいは……」

「ほほぅ」

「なるほど」

「ちょっ!! ミッチィてめー!?」

 はい。見事な解説をありがとうございます。

 あっさりとサユリンが勝ち上がってしまっては面白くないので、彼には存分に苦しんでいただきましょう。

 ですが、今回はあくまで個人戦。罰ゲームを引くのただ一人だけ。サユリン1人を狙い撃ちというのは、難しいかもしれません。

「ウーノ!」

 そうこう話しているうちに、リッコがリーチ宣言です。先にリッコが上がってしまうのでしょうか。

「じゃあ、ドローフォー出す!」

 上がらせないと、チルが仕掛けました!

「むぅ~! じゃあ確認させて! チャレンジ(・・・・・)!」

 おおっと! ここで、ここでついに、チャレンジの宣言が――


「――カランカランカラ――ン!」


 ああ~っと!!

 なんと、鐘が鳴りました! チャンスタイムです! ミッチィ、ファインプレーです! 今のアイコンタクトでよくぞ気がついてくれました、ナイスです!

「え、なになに?」

 ここでチャンスの鐘が鳴りましたので、特別ルールを適応させていただきます。

「何よチャンスって!? 私のカード見せればいいんでしょ! ほら、見なさいよ!」

 ノーノー、見たくもないものを見せないでください。そんなもの、チルの寸胴体型と一緒で、誰も見たくないです。

「黙れ!」

 今からワタクシがクイズを出題いたします。そのクイズにリッコが正解すれば、チャレンジは成功、チルが4枚カードを引くことになります。リッコがクイズに不正解ならチャレンジは失敗、リッコがカードを引いてください。

「おっけー!」

「私は認めてない!」

 誰もチルには聞いてません。

 それでは、問題へと行きましょう。

 ミッチィお願いします。

「え~、赤の席にお座りのリッコが答えればチャレンジは成功。白のチルが耐えればチルの勝ち、赤のリッコがペナルティを受けます。青のサユリンはもう一問だけご辛抱。それではいきましょう、大事なだい~じなアタ――ックチャ~~ンス!!」


 ――合宿旅行の初日、夕食を終えて、また部屋でもお菓子を食べまくっている今日のチルですが、そのチルの今の体重はいくつでしょう?


「ちょっと待てぃ!!」

 あ、ちょっと問題が難しかったですか? それじゃあ三択にして――


 ――1.チルの体重=ヒメちゃん+3kg

    2.   〃   =ヒメちゃん+6kg

    3.   〃   =ヒメちゃん+9kg


「ヒメちゃんよりデブいのは確定なんだ」

「リッコ、だからそういう言い方はやめて!」

「……てか、なんでお前がそれを知ってるんだ?」

 さっきのお風呂上がりにリッコに拉致られて、二度目のお風呂で一緒に入ってきたからじゃないですかぁ。

「入ったのか……女湯に……」

 当然です。それでですね、風呂あがりにチルが体重計の上でため息ついてたもんだから、つい後ろから盗み見を――

「見んな!」

 さぁリッコ!

 答えは決まりましたか?

「う~ん、その時私、髪乾かしてて見てなかったからな~。ていうか、ヒメちゃんの体重も知らないし」

 チルより軽い、とだけ言っておきましょう。

「知ってるし。……うん、わかった。2番の『ヒメちゃんより6kgデブい』で」

 ファイナルアンサー?

「ファイナルアンサー!」

 ……

「……」

 ……残念! 不正解!

 正解は、3番の『ヒメちゃんより9kgデブい』で――

「ちょっと待て!」

「ヒメちゃん軽っ!?」

「いや、チルが重いのか?!」

「違う!! アンタが軽過ぎんのよっ!」

 やだなぁ~、そんなことないですよ。ワタクシの体重は、たかだか(小学6年生女子)平均くらいですので、チルが明らかに重過ぎかと――

「ちーがーう~っ!! 皆、聞いて! 身長差が10センチくらい違うから、絶対に私がデブいんじゃないんだから!!」

 さぁ! そんな言い訳苦しいチルですが、今日はおいしいご馳走食べまくりで、神をも恐れぬその所業に本日は凄まじい記録を打ち立てております! 新記録、ニューワールドレコード! 旅行気分が追い風となり、実に約1年ぶりとなる高値水準を記録した! 東京株式市場、終日の日経平均株価を大きく引き上げるその終値は、前日比1.5kg増となる、よ――

「ギャ――――ッ!!」

 ムグ――ッ!?

 んんんん――~~!!

「ああ! チルだめ! だめ!!」

「チル、本気で首締めたらあかん!」

 ――ガガッ!!

 …………

 ……




 ……あぁ、生きてるって素晴らしい。

「ヒメちゃん、大丈夫?」

 三途の川の向こうでおじいちゃんが手を振っているのが見えましたが、なんとか大丈夫です。

「アンタのおじいさん、まだ生きてるでしょ」

 そうでした。見えたのはきっと赤の他人のおじいちゃんですね。

 それはさておき、ワタクシが臨死体験をしている間も、ゲームは着々と進んでおります。

 先ほどのクイズが不正解だったため、リッコの手札が増加し、再び場は膠着状態に陥っています。

 しかし、チルもサユリンもなかなか手札が減らない様子。苦戦しているようです。

「くそ~! 山札、色が偏ってるじゃねーか。誰だよシャッフルしたの?!」

 ワタクシですっ!

「お前かよ!?」

 サユリン、ナイスツッコミです。

 そんなサユリンも、人にばっかりツッコミ入れてないで、たまにはアンダーソンくんにつっこまれてみてください。きっと新しい世界が開けると思いますよ。

「いやだ!」

「なんかホントに新世界が開けそうだな……」

 薔薇の世界ですね、分かります。

 あ! なんなら、リッコが負けた場合は特別に、アンダーソンくんを口ではなく、その豊満な胸の谷間に挟んであげてご奉仕してあげるというのも――

「やだ! 絶対負けない! ウーノ!!」

 おっと、またもやリッコがリーチです。

 さすがリッコ、さっきあんなことがあったのに、全くの恐れ知らずですね。

「チル、リッコを止めるんだ」

「うう~、無理だ! サユリンなんとかして、リバース!」

「……げっ!」

 リバースです。ということは、順番が変わってまたサユリンです。ここでなんとかしなければ、リッコがあがってしまいます。

「……くっ」

 おや~?

 サユリン、いったい何を迷っているのですか?

「これを出さなければ、リッコはあがってしまうが……」

 ふっふっふっ!

 相変わらずサユリンは察しがいいですね~。チルとリッコは、何のことだか分からずキョトンとしているようですが。

 サユリン、腹くくりなさい。

「チッ……」

 舌打ちをしながら出したその手札は、なんとドローフォー!

「ああ! チャ、チャレンジ!!」

 気づいた! リッコ気づきましたー!


「カランカランカラ――ン!!」


 おおっと!!

 やはりここで鳴り響いた――! 起死回生のチャンスの鐘っ!!

「どこがチャンスだよ!」

 サユリンうるさいですよ。

 チャンスタイムとなりましたので、またもやリッコにクイズを出題します。正解すればサユリンが、不正解ならリッコがカードを引くことになります。果たしてリッコはこの試練に打ち勝ち、勝利を物にすることはできるでしょうか?

 それでは、ミッチィどうぞ。

「アタ――ックチャ~~ンス!!」


 ――これまでに、サユリンがワタクシに対して働いた許しがたい行為は、次の内どれでしょう?

 ――1.ヒメちゃんの裸を覗く。

    2.ヒメちゃんと一緒にお風呂に入る。

    3.ヒメちゃんの胸を揉む。


「ほー」(←睨みつけるミッチィ)

「へー」(←冷たい視線のチル)

「サユリンってば、やることはやってんだねー」(←ニヤニヤと笑みを浮かべるリッコ)

「……」(←冷や汗が止まらないサユリン)

 ――ぽっ。(←そして頬を赤く染めるヒメちゃん)


「……って、ちょっと待て!! それはいろいろおかしいだろっ!?」

 ひどい! ワタシのことは遊びだったの?!

「違うっ!! いや! そういう意味じゃなくって!!」

 さぁさぁ! それではリッコ、お答えいただきましょう!

「わかった。サユリンがそうやって答えるのは照れ隠しで、きっとヒメちゃんのことは本気だと――」

 違います。クイズの答えをお願いします。

「ていうか、どれが答えでも、サユリンひどいよね~」

 ぷりんちゃん親衛隊の皆さん、サユリンに制裁をお願いします。

 リッコ、クイズの答えは?!

「じゃあ、真面目に答えるなら、1番! これのせいで、サユリンは放送に引き込まれたんだと思う」

 ファイナルアンサー?

「ファイナルアンサー!」

 ……正解っ!!

「やったーー~!!」

 ついでに言えば、1番2番3番どれを選んでも全部せ~――

「だああああぁぁ――――!!!」

 むぐっ!! んんんん――――っ!?

「あかん! サユリン、そのアイアンクローはあかん!」

「今なんか、聞き捨てならないことを聞いたような……」

「やったぁー!! これであがり~! やったよヒメちゃん!!」

 ~~~~――――っ!!

「リッコあかん! その状態で抱きついたら、ヒメちゃんの首がもげるって!」

「……あっ!?」


 ――パラパラパラ……


「……」

「……ああ――――っ!!」

「ヒメちゃんズルイ!」

「……え~っとですね、放送をお聞きの皆さんにご説明いたしますと、リッコがヒメちゃんに抱きついた拍子に、なんとヒメちゃんの浴衣の袖から数枚のカードがパラパラと」

「イカサマかよっ!!」

「通りで強いはずだ」

 ま、待って! 皆待って!!

 これは全て部長氏の陰謀で、可哀想なヒメちゃんはプリンを人質に取られて仕方なく――

「仕方ないわけあるかーっ!!」

「黙れ――っ!!」

 ぎゃ~~~~!!!!

 …………

 ……








「……ええっと、サユリンです。一応、これは番組だということなので、最後に閉めたいと思います」

「サユリン、最近こなれてきたよな~」

「慣れたくねーよ。それでは、最後に、敗者の弁をどうぞ」


 ――ウネウネウネ~

 ――うぅん~~!! むぅ~ん――――!!


「おら~! もっと艶めかしく喘ぎなさーいっ!」

「チルってば、かなりのSだよね~」

「リッコ、早く写真を!」

 ――パシャパシャ! パシャッ!


「以上、非情に凄惨な処刑風景でした。評論家のミッチィ先生、いかがでしたか?」

「ふぐっ!! す、すばらしい! ワタクシはこれだけで、ごはん500杯は軽く――」

「オカズだけにね」

「こらリッコ! そういう発言は止めなさい!」

「後でHPにアップするんでしょ?」

「アップしません、完全にアウトです。それでは終わりましょう! 本日のお相手は、サユリンと――」

「リッコでーす」

「ハァハァ……ミッチィです」

「チルです!」

 んん――――~~!!

「さようなら~!」

「またね~!」


 ――ピ――ブチン!






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