第十八話 -第8回ぷりんちゃん放送局-
『プリンちゃんのぉ、今週の一言!』
せ~んろは続く~よ~、ど~こまでも~♪
「線路なんてどこにもねーじゃねーか……」
ちょっとぉ!
せっかくの旅行気分に水差さないでください!
さっきまで放送の収録に否定的だったのに、実に見事なツッコミですね、サユリンは。
「……わざわざツッコミ入れてやったのに、なんでこんな負けた気分に……」
黙りなさい下僕その2、褒めてやってるのになんですかその言い草は?!
「下僕じゃねーよ!」
ん、口答えする気ですか?
と、ワタクシは無言でこのICレコーダーを指差します。なんなら、もう一つの写真もバラ撒きましょうか。
「すんませんごめんなさい許してください、下僕でもなんでもいいです……」
はい、素直になりましたね。
人間、正直に生きるのが一番利口だと思います。長生きの秘訣ですね。
「……ていうか、下僕その1は?」
えへへ~、さぁ誰でしょーね?
ちなみに、それはチルではありませんよ? チルはワタクシの専属メイドです。異論は認めません。
下僕その1はですね、このバス最後方に乗ってる、ついさっきまで爆睡してた某Mくんです。お菓子の差し入れ、ありがとうございます~。
「ごらぁミッチィ! 貢いでんじゃねーよ! てか、前回の放送のネタ売ったの、オマエだろ!?」
これこれ下僕その2。本放送局では、情報提供者の守秘義務がありますので、余計なことは言わないように。
「そんなに羨ましそうに見るなら、オレとすぐに代わりやがれ! おいこら! 寝たフリすんなっ!」
ああー!
こら、下僕その2、いけません! 耐性のない一般ピープルをむやみに放送へ巻き込んではいけません。
「アイツのどこが一般人だ! 何度も放送に出てるじゃねーか!」
それは表の通常放送回の方です。裏の、ワタクシの放送の方は専門外だと思いますので。
はい、そんなわけで、ワタクシの矛先は基本的にサユリンの方向にしか向きませんので、他の皆さんは些細なことは気にせずに、じゃんじゃん放送を盛り上げていってください。
「どうしてこうなった……」
いいかげん諦めてください。
というわけで、『プリンちゃんの今週の一言!』コーナーだったのですが……サユリンが水差したせいで、一言どころではなくなってしまいましたね。コーナー立ち上げて2回目で、なんかすでに挫折しそうです。
まぁいいでしょう。
いいです、そんな時は、みんなの力を借りて、このコーナーを閉めたいと思います。
みなさ~ん! ノッてるかーい?!
――いえーーーー~いっ!!
はーい!
皆さん、バスにノッてます…………すみませんごめんなさい冗談ですもう言いません。
今週の『ぷりんちゃん放送局』、まもなく開始です。
♪~~
みなさん。こんにちは、こんばんは、お久しぶりです。
本日の放送を始めていきたいと思います。
司会、進行役のプリンちゃんです。どうぞよろしく。
「……下僕の、さ――」
ストーーップ!!
「な、なんだよ……」
今、本名言おうとしましたね?!
「だから、なんだ……?」
ひどいヒトですね。
ここまでの、ワタクシ達が必至で作り上げてきたこの物語の空気を読んでください。
はーい、はいはい! ストーップ! ミュージックストップ、止めてください!
それでは、やり直します。
「やり直すのかよ……」
テイク2!
♪~~
みなさーん、こんにちは!
本日の放送を始めていきたいと思います。
司会のプリンちゃんです。どうぞよろしく!
「……アシスタントのチルです! よろしくお願いしますぅ!」
はい。
チル、ちょっと声変わりしました?
「声変わりじゃないですぅ~、ちょっと風邪引いちゃって喉が痛くってぇ~!」
なんていうか、ひじょ~にウザいですね、このチルは。ぶりっ子し過ぎです。
ちょっと野太い声のとっても残念なオカマちゃんのチルですが、そんなわけで今日はこの2人で放送を進めていきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
「よろしくお願いしますぅ!」
それでは最初のコーナーへ……
「……」
……ん、なんですか?
「お願いです、何かつっこんでください……」
それでは、アナ○へ極太バイ○を――
「違うだろ!」
あんあん泣かせてあげます!
「そんな趣味はねぇー!」
もう、なんですか。自分でボケたクセに。
生意気ですよ。
「オマエが言わせたんだろーがっ!!? こら、そこのリッコ! ゲラゲラ笑うな! チル、白い目で見んなっ!!」
仕方ないですね~。
これ以上オープニングを引っ張ってもマズイので、そろそろちゃんと名乗ってください。
「……サユリンです」
はい。
新レギュラーとなったサユリンと共に、本日の放送を進めていきたいと思います。
リスナーの皆さん、周囲の音は聞こえていますでしょうか?
なんと今日の放送は、『ぷりんちゃん放送局』初の公開収録となっております!
イエーーイ!
――イエーーーーイ!!
皆さん、熱いご声援をありがとうございます!
我々は現在、バスで一路、合宿場である某温泉旅館へと向かっております。バスの運転手さんありがとう! 騒がしくてごめんなさい、今日も安全運転でお願いしま~す!
はい、ありがとうございます。いい笑顔で手を振ってくださいましたが、お願いですから手は離さないでくださいね。
そうです! 今年の放送部の強化合宿には、なんとワタクシも参加させていただけることになりました!
というか、知らないうちに参加することになってました……。
そんなわけで、皆の期待を一身に受けて、この合宿を盛り上げていこうと思いますので、皆さんご協力をお願いしますね~。
ところで、サユリン。
「なんだよ……?」
ワタクシ、プリン星から地球に来て、初めて合宿というものに参加するんですが、合宿っていったい何をするんですか?
「……あぁ、そういうキャラだったな」
違います、ワタクシは本当にプリン星のお姫様なんです! キャラ言わない!
「そりゃあ、強化合宿って言ったら、朝から晩まで体力作り、地獄のトレーニングの日々が――」
それは運動部の話ですよね。
放送部の合宿では、いったい何を強化するんでしょうか。
「……そういや、そうだな」
それでは答えていただきましょう。
チル!
――って、露骨に目を逸らさないでください。リッコの影に隠れたって無駄ですよ。
仕方ないですねぇ。それでは臨時放送部員となったサユリン、我々はこの合宿で、いったい何を強化すべきでしょうか?
「…………アドリブ力とか?」
そうです!
そうですね、それを正解にしましょう。
というわけでサユリン。
「おうよ!」
強化合宿のワタクシ達の抱負を語ってください。
「『チルのアドリブ力を鍛える』、これだな」
はい、これを当面の目標としてワタクシ達は頑張りたいと――
――ちょっと、チル、何今更慌ててんですか。自分で答える権利放棄しといて、我々の一途で純真な努力目標にケチつけようってんですかぁ? これは、今後の放送部の活動の中で最も重要かつ、緊急を要する重大課題なんですよ。
はい。ワタクシ達はこの努力目標に向かって、恐れることなく邁進していきたいと思いますので、皆さん、放送部の方へは『無茶振り』という名の課題をどんどんと付きつけてやってください。
それでは続いてのコーナーへいきましょう。
『プリンちゃんの、今週のお便りのコ~ナ~!』
「それ、別にコーナーでもなんでもなくって――」
シッ、それを言ってはいけません。何事もカタチから入るのが大切なのです。
はい、説明も何もないんですが、このコーナーは投稿ボックスへと寄せられたお便りを順に紹介していこうという、まぁいつものコーナーです。
ですが!
今日は初の公開収録ですので、投稿されたお便り、ご質問以外の、このバスにいる皆さんからご質問などを受け付けたいと思います。
「マジか……」
マジですマジです。
どんな質問も大丈夫です、どんな答えにくい質問であっても必ず答えます。
サユリンが答えてくれます。
「オレかよ!?」
大丈夫、そんな懐が大きくて男前なサユリンを、ワタシは応援してる。
「いらねーっ! てか、オレに振るな! そこはチルが答えるべきところ――」
さぁ! それでは最初の質問へいきましょう!
質問のある方は挙手をお願いします。
おおっと!
さっそく一人手が上がりました。流石です、空気読んで怖気づくことなく手を真っ直ぐに天へと伸ばす猛者がここにいました。ありがとぉ!
皆さん、もう一本あるマイクを、後ろの女の子に回してやってください~。はい~、ありがとうございます。
『……あー、あー。音拾えてる? 大丈夫?』
大丈夫ですよ~。
『質問前に、一応名前とか言った方がいい?』
いらないです。言っちゃうと、後の人達が困りますので。
『じゃあ、質問を1個だけ』
どうぞ。
『ヒメちゃんとサユリンは、いつから付き合ってるんですか?』
「付き合ってねーよっ!!」
え~っとですね、それは先々週の――
「答えんな! いや、そんな事実はいっさいない!」
照れなくなっていいじゃないですかぁ。
『女の子にそこまで言わせて、サユリンはまだ逃げるんだ?!』
酷いです~。
『いい加減、男らしく腹括りなさいよ!』
そーだそーだ!
「待て! オレを悪者にしようとすんなっ! だいたい、リッコはコイツの本性を知ってるんだろ?!」
『なによー、可愛い女の子でしょ! そもそもサユリンがカッチャンに振られたのだって――』
「それは関係ねーだろっ!!?」
やめてー、ワタシのためにケンカしないでー。
「棒読みで抗議すんな!」
さっきの話もひじょーに気になるところではあるんですが、とりあえず、ワタシの前で元カノの話は禁止です。
『……ごめん』
まぁ、サユリンがどう言おうと、重要なのはワタシの気持ちなのです。どう思われていようと、この感情にいっさいの嘘偽りはないのです。
「だから、そういう言い方をすんなぁー!」
『……あのさ、結局、二人ってどういう関係なの? なんかやたらと仲良さそうなんだけど、これまで特に接点があったようには見えないんだけど……』
何やら、割とマジに質問返してきましたね。
他の皆さんも頷いてるみたいですし……。
それでは答えていただきましょう!
サユリン、さぁどーぞ。
「そんなんオレが聞きてーよ……」
ああ~!
質問を投げないでください。ていうか、普通に泣かないでください。男の子、ふぁいと!
仕方ないですね~。
それでは皆さんにお伝えします。
ワタシ達はあの日出会い、顔見知りから友人へ、そしていがみ合う天敵へ、先週の放送を乗り越えてその二人の関係は友達以上恋人未満となり、ついにワタシ達の関係はここまで辿り着いたのです。
『……恋人関係?』
いいえ、違います。
主従関係です。
『……は?』
「ちげーーっ!!」
何を言ってるのですか、下僕その2。
と、ヒメちゃんは無言でポケットから写真を取り出します。
「すみませんごめんなさいちょーしのってました、私は下僕です奴隷です……」
よろしい。
それでは、忠誠の証として、ワタクシのことは『ご主人様』とお呼びなさい。
「…………なっ?!」
服従しているのであれば、主人のことをそう呼ぶのは当然です。
「……な、なんでオレが……」
さぁ、早く言いなさい!
「オレには、ミッチィみたいにM属性はねーよ!」
さぁ!!
「……」
ワクワク、ドキドキ。
「……」
……。
「…………か、かしこまりました、姫様」
……。
……チッ。
「こら! あからさまに舌打ちすんな」
せっかくいろいろとおいしい展開が見えそうだったのに。
……ん、なんですか皆さん、その目は。
『皆、呆れてるだけだと思う』
聞いておいてなんですか、その反応は。
まぁ、後は皆さんの想像にお任せするということで。
それでは、気を取り直して、次の質問へいってみましょうか。
リッコ、隣のポケッとした表情の、全く危機感の無い女にマイク渡してあげて。
『ほいほい』
こら、ダメです! そんな高速で首横に振らなくたって。いつものことじゃないですか。
『ちゃんと、マイク持ちなさいって!』
往生際が悪いですよ。
っもう! 仕方ないですね~。
では、その反対側の男子。そう、その子です、マイク渡してやってください。
『うぇぇ~?! オ、オレかよ!』
そうです。
なんか質問でもなんでもどうぞ。この際ですので、サユリンがなぜカッチャンに振られたのかとか、チルは結局某先輩とデートに行ったのかとか、もう質問はなんでもいいですよ。
『そ、そうだなぁー……』
ほら見なさいチル。そこらの一般ピープルの方がよっぽど潔いじゃないですか。
それでは、貴方を名誉ある『プリンちゃん親衛隊、下僕その3』に認定を――
『それは無理!』
シクシク……そ、そんな即答しなくたって。
『それじゃあさ、ヒメちゃん』
なにやら最近リスナーが冷たい……あ、いえいえ、なんでもないです。なんですか? 質問ですか?
『……いいですか?』
どーぞどーぞ。
『すごい気になってたんですが……さっきまでバスに乗っていなかったヒメちゃんが、サービスエリアからどうやって乗り込んできたのかっていう……』
……。
『……』
……キミは、決して聞いてはいけない、開いてはいけないパンドラの箱を今まさに開けようとしていますね。
『えええっ!!』
いえいえ、なんでもないですよ。
その話はですね、さっきワタクシ達が乗り込む前にチルの方から、プリン星の最先端技術をもってすれば朝メシ前であると懇切丁寧にご説明していただけてるはずだと……。
え、何も説明なかったですか?
そんな、皆して首を横に振らなくたって……。
ちょっとチル~!? って、だから視線を逸らさないでください。
仕方ないですねー。
それではお答えしましょう。
サユリン、どーぞ。
「…………こ、このバスに乗っていない部長氏達が乗っている別働隊があってだな――」
カーーーット!
「……な、なんだよ」
だから、なんでそんなホントっぽいこと言っちゃうんですかぁ! 今求められている答えは、そんなちゃっちぃものではないはずです。もっとプリン星の最先端技術を駆使した最新鋭で斬新な回答を望みます。
「オマエ、オレがどれだけ苦心してフォローしてやってると……」
あー、聞こえない聞こえない。
それでは、改めまして回答をどうぞ。
「…………サービスエリアの端に捨てられてたのを、拾った」
拾われました!
って、最先端技術を駆使してワタクシは見捨てられてたのですかっ?!
「皆、すまん。邪魔になるとは分かってたんだが、店先でみかん箱に入ってピーピー鳴いてたもんだから、つい……」
拾ってくれてありがとにゃん! これで飢え死にしなくて済むにゃあ。奢ってもらったアメリカンドックの恩と味は決して忘れないにゃあ~。
……ハッ!
「な、なんだよ……」
はにゃ?!
そうです、そうなんです。
拾われたその瞬間、ワタクシ達の主従関係は逆転したのです!
「……はぁ?」
拾ってくれてありがとにゃあ~。
これからは、貴方が新しいご主人様にゃ。
「……」
吾輩は、プリン星プリン王国第一王女プリン姫様の愛ネコ……そうですね、名前は『杏仁豆腐』というにゃん。
「もはやプリン全然関係ないな、おい」
アンにゃんはですね、何よりも姫様のことが大好きだったんですが、それ以上に大好物だったのがプリンですにゃん。それでですね~、姫様のプリンをつまみ食いしたせいで、そこのサービスエリアの軒先に捨てられたにゃあ。
でもですね、アンにゃんは新しいご主人様に出会って、とっても幸せですにゃん。
……ん、どうしたにゃ? ご主人様は、なぜそんなに不幸せそうな顔してるにゃん?
「頼む、誰か代わってくれ……もうオレの手には負えん……」
に゛ゃああ!
そんなこと言わないでほしいにゃあ~。
そんなご主人様は、また旅館でゆっくり慰めてあげるにゃん。アンにゃんは毎夜、姫様の慰み者になってたから、慰めるのは大得意だにゃん。姫様に愛されて、ベッドの上で熱くにゃんにゃんやっているとですね、アンにゃんはネコなのに思わずあんあんにゃんにゃん鳴いてしまうという――
「やめぃ!!」
ご主人様は、早くアンにゃんに首輪を買うにゃん。
「吊るしあげてやろーかっ?!」
にゃああ~! 動物虐待反対っ!
あ、でもでも、ご主人様がそういうご趣味をお望みとあらば、アンにゃんは気持ちよくなるよう頑張るにゃん、だから、最初はまずムチとローソクと、あとは木馬さんあたりから――
「だから、やめろっての! にゃあにゃあ言うな、キモイッ!」
ちょっ!
ヒドっ!?
だからなんでサユリンは、キモイって言うんですか?! 酷くないですか、ヒメちゃんが精一杯の虚勢張って頑張ってるっていうのに! そんなこと言うのサユリンくらいですよぅ!
「うっさい! 正体知ってたら、キモイ以外の感想なんてねーよ!」
正体とか言わないでくださいー。それじゃあまるでヒメちゃんがネコかぶってるみたいじゃないですか。
「ネコかぶってるじゃねーか!」
かぶってないですにゃあ。
かぶってるのは、ヘタレサユリンのおまたのバナナだけにゃ――
「かぶってない!! 黙れ! もう下ネタしゃべんな!!」
ていうか、キモくなんてないです!
そーですよね!
ねぇ、リスナーの皆さん?!
……。
……。
……あれ?
な、なにやら、車内の皆さんが静まり返っているような気がするんですが……。
そんなにキモかったでしょうか?
「いや、キモイとかじゃないと思うが……」
それではいったい……?
「あれだろ。初の公開収録にも構わず、いつもの調子でやり続けたオマエの下ネタに、車内のリスナー達が若干引いてるっていう……」
な、なんてこった!
やっちまったですか?! ひょっとして、ヒメちゃんやり過ぎちゃったですかぁ!!?
あんなもんはジャブみたいなもので、ヒメちゃんの真の実力はまだまだこれからっていう――
「実力見せんでいい!」
ひぃ~ん! せ、せっかくの初公開収録で、初の皆との旅行で、皆に少しは違う印象持ってもらおうと思ってたのに。恥ずかしい! 恥ずかしすぎる! 皆の視線が痛いー!
公開収録ってこんなに痛いものだったのですね!?
いくらヒメちゃんがドSでドМで変態でムチやロウソクの痛みは快感になっても、視線の痛みまでは快感になりません! 羞恥プレイ視姦プレイは無理です! ていうか、ワタシもう引き籠る! 引き籠ります! そう、ワタシは貝になりたい! ヤドカリになって自分の家に閉じ籠ります!!
「ヤドカリは貝じゃなくて、エビだろ」
エビでもカニでもなんでもいいです!
旅行中はもう旅館にでも引きこもってやる~!
「放送閉めるか。え~、それでは容量と時間がおしてきてますので、本日の放送はこのあたりで――」
勝手に閉めようとしないでください!
「この微妙な空気の中で、誰が質問できるんだよ?!」
だからって、この微妙な空気のまま閉められると、本当にワタシ逃げ場がなくって、この痛い空気の中、この後の長いバスの旅をどうやって生き抜いていったらいいんですか?!! チル! そーだチル! 相方でしょ?! お願い、ワタシを助け――って、だからそんなに高速で首振って拒否しないでーーっ!!
「お相手は、サユリンと、」
……あ、はい。プリンちゃんでした。
「お疲れさまでした! さよーならーっ!」
ばいば~い!
……って、えええ~っ!!?
ねぇホントに閉めるの?! え、ちょ、ちょっと待ってって! だから、この空気のまま見捨てな――
――ピ――ブチン!
登場人物紹介(新キャラ)
○杏仁豆腐/アンにゃん
プリン姫様の愛ネコ。毛並みは白。プリンをつまみ食いしたせいで捨てられて、現在はサユリンに拾われた。
猫なのに、夜はベッドであんあん泣くらしい。