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声美少女伝説  作者: yuzuki
第2章 「ぷりん王国 - 揺籃期」
14/21

第十三話 -第6回ぷりんちゃん放送局-

 ――カランカランッ!(←グラスの中の氷の音)


 皆さん、こんにちは。お久しぶりです。

 第……何回目でしたっけ? の、放送を始めていきたいと思います。司会・進行役のプリンちゃんです。

「アシスタントのチルです」

 はい。

 本日の放送は、出張放送局ということで、またもや収録音声の垂れ流しを行っていこうということです。

 しかし、前回放送と異なるのは、チルが収録に気づいているという点です。

「はい……」

 ……

「……」

 チルは、前回のドッキリ放送によほど胸を打たれたようですね。

「……なんていうか、物理的にもグサグサと心打たれた気分です。もうコイツを手放ししとくのは、本当にマズイような気がして」

 しっかり手綱握っててくださいよ、ワタクシの命綱なんですから。

「命綱なんだ……」

 はい、深い深い泥沼に沈み込んで、社会復帰できないくらいの闇に落ちたとしても、きっとチルが救ってくれると信じてます。

 そんな覚悟でワタクシ、当番組のパーソナリティを務めさせていただいてます。

「校内放送番組にそんな覚悟いらない。てか、首輪とかじゃないんだ……」

 はい、イメージとしては火サスに出てくるような崖の上から命綱一本で落ちかけているところを、後ろからチルにツンツン足先で突かれているという――

 ……はっ!

 ご、ごめんなさい、チル!

「な、何よ、いきなり……」

 ワタシ、チルの気持ちなんてちっとも考えてなかった。チルの相棒失格だわ! チルがそんなことまで望んでたなんて、ワタシ、考えもしなかった。それならそうと、もっと早く言ってくれれば良かったのに。

「だ、だから、いったい何が……」

 ワタシ、これからはチルの――いえ、ご主人様のペットになります!

「……は?」

 どうかワタシの首に、首輪をつけてください!

 このメス犬に、ペットとしての証を、わんわん!

「……」

 ……わんわん!

「……」

 ……あ、あの……そんな冷静に、蔑んだ目で見られても困るんですけど。

「こんなペット、いらない」

 ひどい。

 鬼、悪魔、人でなし。最近、なんかホントに冷たいですよね。せめて、全力のボケに対しては、礼儀を持って全身全霊の力を込めてツッコミを入れていただきたいと――

「大人しくジュースでも飲んでなさい」

 はい。


 ――カランコロン!

 ――コクリ(←飲む音)


 ふー。

 改めまして、本日の放送を進めていきたいと思います。

 今日は出張放送局ということで、なんといつもの放送室を飛び出して、スタジオTHにて収録を行っております。

「……何? スタジオTHって?」

 T(チルの秘密がいっぱい詰まった)H(部屋)。

 ねぇねぇ、チルってどんな下着つけてるの?

「って、きゃ~!! 問答無用でタンスを開けるなーっ!」

 ほうほう、チルは淡いブルーやピンクが好みと。あ、こっちのクローゼットは――

「だから、物色するなぁーー!!」

 あれ?

 おかしいですねぇ、ワタクシのプランによると、このクローゼットから雪崩が起きてプリンちゃんは生き埋めになるという。

「起こるか! 勝手に変なキャラ設定作るんじゃない!」

 なんか普通すぎて、プリンちゃんつまんない。

「つまらなくていい。というか、さっきまでは大人しかったのに、収録が始まるとなんでこうコイツは……」

 やだなぁ、力蓄えてたんですよ。油断させるために、借りてきた猫を10匹くらい被ってたんです、にゃあにゃあ。

 そもそもこんなネタの宝庫を目の前にして、大人しく収録だけして終わるはずが――

「あのさ、ワタシから招いといてなんだけどさ。音響くから、あんまり暴れないでよね?」

 はい、すみません……。

 というわけで、本日はチルのお家にお呼ばれしています。

 ワタクシ一人にICレコーダー持たせると何やらかすか分からないと、部長氏とチルの両方から厳重注意を受けまして、結局、余裕があったらチルと二人で収録してこいと、まぁそういうことになったわけです。

「せめて、これ以上被害者が増えないうちに……」

 ワタクシもチルの家にまで遊びに来るのは久しぶりなんですよね。

 あ、このポスター、まだ張ってたんだ。

「す、好きなんだから別にいいでしょ」

 ねぇねぇ、『ぴんぴん』はまだ持ってるの?

「さ、さぁ、なんだっけそれは……」

 あ、あったあった、ありました~! ふとんの中にしっかり隠してありました。あいかわらず、これがないと寝れないんですね。

「だぁ~!! 別になんだっていいでしょ! それがないと落ち着かないんだもん!」

 えっと、分からない人達に説明しておきますと、『ぴんぴん』は哺乳類ではありません、正面から見るとマヌケな顔に見えます、生息域は主に緯度0度から90度の間です。

「説明になってないから」

 はい、ではチルの方から説明していただけるそうです。

「……ぇえ?!」

 それでは、最終ヒントを。

 あ、いえ――


 ――ネクストコナ○ズヒ~ント!


 チル、この動物の鳴きマネをしてください。

「ええ~っ!? な、なんでアタシが……」

 さ、ほら、早く早く。

 『ぴんぴん』は、どうやって鳴くんですか?

「え、え~っと…………グ、グェ~、グゥェ~?」

 ……

「……」

 え、え~っと……

「いや~っ!!」

 今ものすんごいの出ました。

「今のなしなし、カットカット!」

 カットはしません!

「ちょ、ちょっと待って! だって、どうやって鳴くかなんて、アタシ知らないし!」

 知らないはずないでしょう、毎晩夜を供にする仲なんですから。

 素直に諦めて、可愛らしく「ぺんぺんっ!」とか「あんあんっ!」とか言っておけばいいものを。

「あんあん言わない! そんな鳴かせてないから――って、違う~!!」

 なんか自分で墓穴掘りましたね。

 あんあん泣かせてないとか言っちゃって。

「ひぃ~ん! ち、違うから! へ、編集点作るから、ここ絶対カットするから!」

 編集はしません!

 編集なんかできないように、今後も繰り返し掘り返して話していきたいと思いますので、皆さんよろしく。

 きっと、あれなんですよね、この『ぴんぴん』の中にはバイ○とかピンクロー○ーとか仕込んであって――

「あるわけないでしょー!!」

 あ、もちろんこの放送は、青少年の健全な育成を考慮して、見苦しい言葉には伏字を行うなどの配慮を行っていきたいと思います。

 絶対にカットはしませんが。

「だったら、下ネタを喋るな!」

 む。

 それはつまり、ワタクシに口を閉ざせと。

「エロネタ以外に話すことないんかい!」

 いえいえそんなことはないですよ。

 そもそも、今回はチルが変な墓穴を掘らなければ、こんなにエロネタの方に軌道が曲げられることはなかったんですよ。反省してください。

「うぅ……」

 ところで、どっかの地方のおみやげ屋さんに『おっぱいプリン』て、ありますよね? あれってきっと、ワタクシの胸みたいにやらかくて――

「だからぁー!!」


 ――コンコン!(←ドアを叩く音)


「はーい!」

 おっと、誰か来たようです。

「ストップ、録音止めて」

 ほいほい。

 おっと……えー、それでは今週の曲紹介です。どーぞ。




「お母さん、お菓子とかは別にいいって」

『いいじゃない、せっかく来てくれたんだから……あら?』

 すみません、お邪魔してます。

『女の子?』

 あ、はい。

 はじめまして。ワタシのことは、ヒメちゃんって呼んでください。いつもチルとは仲良くさせてもらってます。

『あら、そうなの。それじゃあ、私のことはマチコちゃんって呼んでくれる?』

 は~い、分かりましたマチコちゃん。

『ヒメちゃんって可愛いわね』

「人の親をちゃん付けで……」

『固いこと言わないの。ヒメちゃん、今日はゆっくりしていってね』

 はい、ありがとうございます。

『それにしても……チルちゃん、今日連れてきたのは男の子じゃなかったのね』

「……え゛!?」

 ほほぅ?

「ちょ、ちょっとお母さん、何言ってるの!」

 チルが男を連れこんでるんですか?

「こらそこ、食いつかない!」

『え、そういうわけじゃないんだけど。さっき上がってくる時に、男の子に見えたから』

 ……

『別にヒメちゃんが男の子みたいっていうわけじゃないのよ? こんなに可愛い女の子だし』

 はい……

『ただね、近所に住んでて昔よく遊びに来てた男の子、え~っと名前は確か――』


 ――ジュジュ~ッ!(←ストローで吸う音)


『――くんっていう子なんだけど、ヒメちゃんに少し雰囲気が似てたから』

 え~、そうですか?

 きっと気のせいですよ?

「今、なんかすっごいファインプレーを見たような……」

 それも気のせいです。

『チルちゃん、あの子でもいいから、たまには男の子連れてきてほしいなぁ』

「……それはイヤ」

『ヒメちゃんなら、何か知ってる?』

 何がですか?

『チルちゃんからは、なかなかそういう話ってしてくれないの。浮いた話とか、何か知らない?』

 チルの話ですか?

 そういえば、この前デートに誘われてましたよ?

『まぁ!』

「こらっ! 勝手に言うな! それに、あの話はちゃんと断って……」

 ふったんですよね、バカっぽい性格が気に食わないとかいう理由で。

『え~っ、そうなの?』

「人聞き悪いことを言うな!」

 違うんですか?

 きっとそういう理由だって、全校生徒が認識してますよ。

「……そ、それもあるけど、でもそれが全部の理由ってわけじゃあ……」

『ものは試しで、とりあえず付き合ってみれば良かったんじゃないの?』

「人の親のくせに、なんてことを……」

 まぁ、良くも悪くも、チルは学校内ではすごい有名人ですから。なかなか難しいかもしれませんよ?

『そーなの? チルちゃんって、放送部で放送当番をやってるって話でしょ?』

 はい。それが回を重ねるうちに、その遠慮のない性格とキレのあるツッコミ、そして時折見せるツンデレっぷりに、校内ではかなりの人気を博しまして、今ではファンレターが届くほどに。

「そのファンレターの7割は、アンタのだけどね……」

 いえいえ、甘く見てはいけないですよ?

 ワタシの調査によりますと、我々に下手に近づくと放送で暴露されるんじゃないかという不安要素があり、それを顧みず神風のように特攻してきた猛者達の結果が7:3だったというだけです。潜在的にいいなと思ってる男子の人数ははかり知れません。それこそ教室に1匹いれば10匹は確実にいるみたいに、まるでゴキブリのように掃いて捨てるほどいるのではないかと。

『まぁまぁ、チルちゃん大人気なのね』

「そんなわけないでしょーが!」

 いやいや、ワタシのプリンちゃんシンパに比べると、あそこまで変態的になれない釣り合わないと考えるマトモな草食系男子の多くは、全部チルの方へ流れています。

 ヒメちゃん、ちょっと嫉妬しちゃいます。

 他の汚らわしい男なんて見なくていいから! お願いだからワタシだけを見て、チル!

『まぁ!』

「いやいやいや、それこそないから。お母さん、本気で驚かないで」

 とまぁ、そんな感じで、チルってば全然自覚ないんですよ。

『あら~そうなの。まわりの男の子達もたいへんね』

 ただ、本人がそんな感じなので、真剣に誠実に告白してくれば、チルってこれで意外に押しとか情とかには弱いですから、きっとなんとかなると思いますよ。

 男子諸君、チャンスですよ?

『ヒメちゃん、どうかうちの子をお願いね』

 はい、きっとこの子を一人前にしてみせます!

「そこ、勝手によく分からない同盟を結ばないで……」

『ヒメちゃんておもしろい子ね。これからも、良かったら遊びに来てね』

 はい、ありがとうございますぅ。


 ――ガチャ!(←ドアを閉める音)


 以上、スペシャルゲストのマチコちゃんでした。

「…………え、ええええーっ!!?」

 いやでも、チルの初めては、これからワタクシがいただきますので、それは誰にも譲れませんよ。男性諸君にお渡しできるのは、その後のワタクシの食べカスということで。

「何言ってるの!? というか、音全部入ってるの?」

 カットはしません!

「する! ダメ、人の親まで勝手に出演させるな!」

 まぁ、今回の収録が放送できるかどうか、校内放送倫理委員会の采配に任せるということで。

「ダメダメ! あの部長はそのまま垂れ流すからダメ、絶対ムリ!」

 まぁまぁ、チルチル落ち着いて。

 おやつのプリンでも食べて冷静になってください、はいあ~ん。

「もう今回の収録消す!」

 ぎゃーっ!! ちょ、ちょっと待って待って!?

 ――ガッ!

 ――ガガガッ!!

 ……

 ピ――――



 ……

 ……

 さて、続いては、お便りのコーナーです。

「何事もなく、始めたわね……」

 しーっ! もうどうなっても知りませんよ?

 早く投稿まわしてください。

「はい……」

『ヒメちゃんとチルへ。私は常々疑問に思っていることがあったので、投稿してみました。プリン星の姫様ならきっと答えを教えてくれると期待しております』

 ほうほう、いったい何でしょうね?

『プリンに醤油をかけて食べると、ウニの味がするというのは本当ですか?』

「待てぃ!」

 噂の真相を解明すべく、ワタクシ、固定概念を全て投げうって、決死の覚悟で挑んでみたいと思いま――

「勝手に投稿をすり換えるな! お母さんとさっき何話してるかと思えば……」

 プルプルプルプル。

「両手に醤油とスプーン持って、震えてんじゃない!」

 い、いいえ、違いますよ? これは、恐れ慄いているのではなくて、ただの武者震いですよ……?

「強がりはいらないから」

 投稿には、本当なら酢飯に海苔を巻いてその上にプリンをそっとトッピングしてほしいとの内容だったのですが、さすがにそこまでは用意できませんので、醤油オンリーでウニ風味を体験してみたいと思います。

 チル、はいあ~ん。

「アタシに差し出すな!」

 新味覚体験のパイオニアとして、是非チルには後世へ名を残していただきたいと。

「絶対イヤ!」

 仕方ないですねぇ。

 では、ワタクシ自ら先陣をきって体験してみたいと思います。皆さん、屍は拾ってください、そのまま大海原へ捨ててください。

 いざ――!


 ――パクッ!


 ……

「……ど、どう?」

 …………うっ!

「っ!!」

 ……

「……」

 ……え~、そろそろ時間も押してきておりますので、本日の放送はこのあたりで。

「ちょっと、感想はどーした?!」

 ……あいかわらず、チルは墓穴掘りまくりですね?

 そんなに言うなら、食べてもらおうじゃないの!

「うえぇぇ~!」

 はい、あ~ん。

「うぅ~、なんでアタシがこんな目に……」

 はい、早く食べる! あーん!

「むぐむぐ……」

 いかがですか?

「…………ごふっ!!?」

 はい、それでは感想を。

「~~~っ!?」

 はい。

 まぁ、どんな味かというのは、皆さんご自身で体験していただくということで。

 以上、新味覚体験のコーナーでした。

 ここまでのご視聴ありがとうございました。最後になりましたが、この放送への感想・ご意見、またご質問や無茶ぶりという名の投稿は、いつものように掲示版などで募集しておりますので、どうぞよろしくお願いします。

 パーソナリティは、プリンちゃんと、

「はぁ……チルでした」

 バイバ~イ!






 ……はぁ、醤油味のプリン、すごかったね。

「なんというか、得も言われぬ醤油の風味が広がって、プリンの感触と甘味が交じってなんとも……」

 ああー、悪夢を思い出させないでください。

 ところで、『ぴんぴん』って、結局何?

「見て分かんないの?」

 ……はい、では、『ぴんぴん』が何か分かった人は、下記の投稿フォームまで奮ってご応募ください。正解者の中から抽選で1名の方に、『チルの部屋で見つけた何か』をプレゼントします。

「何かって、何よ? てか、まだ放送続いてたんだ……」

 その何かは、今から探します。

 ……あ、この置物なんてどうですか?

「あげるのは別に構わないんだけど、それ、ほしがる人なんているの?」

 少なくともワタクシはいりません。

 相変わらず、チルはよく分からないものが好きですね。

「ほっとけ!」

 ねぇねぇ、このよく分からないカエルの置物なんてどう? ケロケロ?

「よく分かんなくなんてない! 可愛いでしょ、この置物は!」

 さすがチルチル、美的感覚もセンスもツッコミも、常人の斜め上をいく――

「そんなことないもん!」

 では、そんなチルチルには、このカエルの鳴きマネで、本日の放送をしめていただきましょう。

「ええ?!」

 さぁさぁ、さっきのリベンジですよ?

「あぁ、うん、えーっと……」

 そうですね、お題は『今日は雨なのに、なんだか心がムズムズしちゃうケロ?』です、どーぞ。

「勝手にハードルを上げるな!」

 チルが早く言わないからですよぅ。

 さぁ、早く早く。

「うぅ…………ゲ、ゲロゲロゲ~ロ?」

 ……

「……」

 ……なんでこう、チルは普通に可愛くいかないのかなぁ。

「わーん! 今日の放送、絶対カットしてやる~!」

 カットはしません!

 お蔵入りになんて、絶対にさせません!

 では、またね~。

「うわ~ん!」


 ピ―――ブチン!




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