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声美少女伝説  作者: yuzuki
第2章 「ぷりん王国 - 揺籃期」
13/21

第十二話 -第5回ぷりんちゃん放送局-

 ――♪♪♪~


 いえ~~い!

『や~ん、ヒメちゃんサイコー!』

 いやぁ、一度思いっきり歌ってみたかったんですよ~。

 あれ? チルチル、なんですかその目は?

「いや、別に……」

『と、次の曲は――』

 ちょっと、トイレ行ってきます。

『ほいほい』


 ――ガチャン。

 はい、皆さんこんにちは。お久しぶりです。

 コレが無事に放送されているということは、チルは自分で自分の自爆スイッチを押したということですね。

 え、アタシこんなの知らないって?

 放送室でポカンと口開けてるチルの様子が目に浮かぶようですが、もう手遅れです。はい、部長氏、チルがスイッチ切らないように取り押さえていてください。

 チル、あの日何を言ったか思い出してみてね~。

 もっとも、こちらはこれから収録ですので、どんな爆弾発言が飛び出すか神のみぞ知る――もとい、チルのみぞ知るというところです。

 ただ今ワタクシ達は市内某所のカラオケボックスに来ております。今回の放送分は、なんとこのICレコーダーを使って学外での収録を行いたいと思います。

 まぁ、収録と思って話してるのはワタクシだけで、他の二人は何も知らないのですけど。

 申し遅れました、本日のパーソナリティを務めさせて頂きますワタクシ、遠い遠い彼方の惑星プリン星からのピンチヒッター、プリンちゃんです。ワーワーパチパチィ。

 ふー。

 一人でやってもツッコミがないと悲しいですね。部長さん、やっぱり無理です。

 お願いだから、ヒメちゃんにオナ○ープレイ強要しないでぇ、一人じゃ満足できないの!

 話が逸れました、そしてあとの二人はチルと、おそらく収録後に快く出演を了承してくださっているであろう、マイク放さないでお馴染みのリッコです。収録のメインはワタクシとチルの会話の部分になると思いますので、リッコの歌声はバックミュージックとして適当にお聞き流しください。ちゃんと音が拾えているか心配ですが、どこぞのキチ○イ部長氏が放送内容を文章化するという変態プレイも行っているみたいなので、雑音は気にならなくなると思います、問題ないですね。

 なぜワタクシがこんな学外で、通りかかった店員さんにあの子何独り言話してんのと奇異な視線で見られながらも内緒で収録を行っているのかといいますと、とある2年A組のMくんから様々な情報を仕入れてきたからです。

 Mくん曰く、

『最近の放送ってチルをいじる投稿が少ないみたいなんだけど、ヒメちゃんなんか知ってる?』

 ええ、よく知っておりますとも。

 届いた投稿は、皆さんの期待に応えるべくチルの制止も全て無視して読めるだけ読ませていただいているのですが、ワタクシも全てに目を通す時間があるわけでもないので、投稿ボックスの内容は一度放送部の構成作家さんの目を通ってからワタクシのもとに届くものがあります。

 なんと、その構成作家さん=チルなのです!

 これではチルをいじるおいしいネタが届くはずがない。かろうじてそのフィルターを潜り抜けたものだけをワタクシが読ませていただいているのです。ひどい、なんという職権乱用の鬼。

 というわけで、本日は放送部の影の権力者、アシスタントとかいう助手のくせに気がつけばメインの彼よりも人気があるとのもっぱらの噂の彼女、チルの生態について検証していきたいと思います。皆様は、ワタクシの胸ポケットに忍び込ませた盗聴器の音を拾ってハァハァシコシコやってるストーカーの気分になって無防備な女の子の会話をお楽しみください。

 なおこの放送は本当に事前収録ですので、皆様からのご質問にリアルタイムで答えることはできませんが、いつものように投稿や感想は掲示板などで受け付けております。今後の放送に役立てていきたいと思いますので、よろしくお願いします。

 それではいきましょう! 本日の曲紹介、2曲目は――

 ――ガチャン!

『ヒメちゃん遅い』

 リッコの歌声、トイレまで響いてましたよ?

『うそ~?!』

 あ、タイミングバッチリですね。チル、マイク貸して。


 ぽ~にょぽ~にょぽにょ♪――

『きゃー、ヒメちゃんかわいい~!』



 ねぇチルチル、最近好きな男の子とかっていないの?

「――ブッ!」

 あらやだ汚い。

「アンタが変なこと聞くから」

 失敬な。何もウーロン茶吹くことはないでしょうが。

「……どうしたの? なんか変な物でも食べた?」

 ひどいチルチル、いくらなんでも言っていいことと悪いことが……はい、すみません、そんな目で睨まないでください。ちょっとしたガールズトークをしてみたかっただけです。

「……」

 ……はっはっは、やだなぁ。そんな顔で見つめないでください。何もありませんから。

「アンタが変なこと言い出すと、なんか裏があるような気がして」

 やだなぁ、あるわけないじゃないですか。ただの興味本位ですよ。

 チルってどんな男の子が趣味なのかなぁ~って。

「別に……」

 例えば、2年C組のIくんとかどうなのかな~って。

「ブッ!!」

 あらやだ汚い。

「ちょ、ちょっと待って! だ、だだだ、誰に聞いたのよ!?」

 あれ? 何かおもしろい反応を見せましたよ?

「なんでアンタが知ってんのよ!?」

 えええ~、なんのことですか? プリンちゃんよくわかんない~。

「とぼけんな!」

 ええ~、チルがメールでデートに誘われたとか、まさかそんなのあるわけないですよね~?

「誰から聞いたの?!」

 きゃ~、胸倉掴まないでください。

 誰って、そりゃもちろん、あの歌って踊ってる女。

『いえーーい!!』

 いえ~い!

「リッコ! あれほど人には言うなって言っておいたのに!」

『えー! ヒメちゃん、もう言っちゃったの? せっかくネタになりそうだったから、こっそり教えてあげたのに』

 大丈夫です。きっと有効活用してみせます。

 それで、デートには行ったんですか?

『あ、結局どうしたのかワタシも聞いてない。あれからどうしたの?』

「う……」

 リッコ、そのメールが届いたっていうのはいつ頃?

『うんとね、たしか前の中間テストの後だったと思うから』

 じゃあ、うまくいっていれば嬉し恥ずかしの初デートも終わってキスなんかしちゃったりして乳繰り合っちゃったりして。

『や~ん、ヒメちゃんって親父くさい』

 失敬な。

 ……で?

『で?』

「う…………け、結局、デートには行ってない」

 ちぇ、つまんないの。

『つまんないの』

 あ、次もリッコの曲。って、なんで3曲もまとめて入れてるんですか?!

『だって、チルってばあんまり歌わないし。その分ワタシが――』

「……」

 で、なんでデートには行かなかったんですか?

「アンタもしつこいわねぇ」

 で?

「……そ、それは、その、あんまりIくんのこと知らないし、別に好きってわけでもないから」

 知らないんだから試しにデートに行ってみればいいんじゃないですか。

 それとも、他に一緒に行きたくない理由でもあるんですか。

「べ、別にそういうわけじゃないけど」

 タイプじゃないってところですか。Iくんって人づての情報によると、わりと明るくて親しみ易い子らしいけど。

「う~ん……まぁ、強いてあげれば、あの騒がしそうでバカっぽい感じの性格がアタシには合わない」

 ご愁傷様、Iくん。

 それじゃあ、Iくんの顔は悪くないと。

「アタシ、顔とかはそれほど選り好みする方じゃないとは思うんだけど」

 チルって、俳優も渋いオヤジの方が好きだもんね。

「い、いいじゃない、芸能人の好みなんて」

 それじゃあ、2年C組のYくんとかHくんみたいなタイプは?

「ゴツイ体育会系はムリ、なんか汗臭そう」

 Yくん、Hくん、ご愁傷様。

 バッサリ斬りますねぇ。やっぱ、チルって面食いじゃね?

「う、うっさいわねぇ、人間第一印象が重要なのよ。そ、それより、アンタはどうなのよ」

 な、何がですか?

「最近、アタシ思うんだけど、アンタの周りで浮いた話ないなぁって思ってたら、なんかミッチィといい感じだっていうじゃない。ひょっとして、そっち気が――」

 ない! 断じてない!!

『そうそう、ワタシも他の子から聞いてきてって頼まれてたんだけど。ヒメちゃんってミッチィと付き合ってるの?』

 どんな噂が広まってるか知りませんが、そんな事実は一切ないです! というか、雑音は黙っててください。いえ、大人しく歌っててください、今大事な話の途中なんです。ほらほら、次の曲はリッコの十八番ですよ。

『あれ? 入れた覚えないんだけど』

 ワタクシが変わりに入れておきました。

 それでですね、あとは2年B組のNくんみたいなタイプは?

「う……まだ引っ張るの、そのネタ。そうねぇ……Nくんってどんな子だっけ?」

 Nくんは、身長がどちらかというと小柄な感じの……。

「ああ、確かアンタと同じくらいの背の低い子よね。悪いけど、アタシより背の低いのはパスだわ」

 Nくん、ご愁傷様。

 というかなんですかその嫌味を含んだ言い方は?

「別に。ていうか何この質問攻め。今更アタシの好み聞いたって――」

 さぁさぁ! しかし本命はこの人、3年A組K先輩、なんと元生徒会執行部員の登場だ。2年生への引継ぎも終え、大学受験へと勤しむ傍ら、唯一の楽しみは週に一度の校内放送、彼女の声が聞けたなら辛い勉強にだって耐えられる。目指すは一流T大。本命馬の登場だ。チル、いかがですか?

「いや、いかがとか聞かれても。アタシ、K先輩ってあんまりよく知らないし。ていうか、コレは何?」

 実はですねぇ、匿名希望の2年A組のMくんより情報をいただきまして、どうやらチルに興味があるらしい人達を厳選の上ピックアップしてみました。

「ほ、本当なの?」

 情報源がMなので怪しいと言えば怪しいですが、他の人づてに聞いて裏の取れたものから並べています。

「K先輩が……」

 ほほう、なにやら脈がありそうですね。チルの年上好きのツボをついたようです。K先輩、チャンスですよ!

 この方は熱心なリスナーさんで、ちょくちょく投稿もしてくださってるようですよ。

「そうなの?」

 ええ。ワタクシも知らなかったのですが、掲示板にも書き込みをされてるようで。ケイタイで見れるかな、たしかこの辺の……。

「ああ、このIDの人! よく見るよく見る。でもさ……」

 なんですか?

「この人って、投稿もよくしてきてくれるんだよね」

 らしいですよ?

「この人、アタシじゃなくて、完全にアンタの――ぷりんちゃんシンパの人だよね?」

 ……。

「……」

 ……。

「……」

 ……ご愁傷様、K先輩。

「ご愁傷様」

 チル、さすが構成作家、伊達に一番投稿に目を通してるだけのことはありますね。

「その毎回必死で番組構成してくるのに全てをぶち壊すのはどこの誰よ?」

 ふー。

 さ、さてと、外の空気でも吸ってこようかな。

『チル! 今度はアンタも歌いなさいよ!』

「ええー! う、歌うにしても、もっと他に曲が――」

 はいチル、ちゃんとマイク持って。


 プリッキュア、プリッキュア♪――



 ――ガチャン!

 はい。

 チルの生態について、少しでも分かっていただけたでしょうか。これに懲りず、今後もチルの生態について迫っていきたいと思います。2年A組のMさん、特別ゲストのリッコさん、貴重な情報をありがとうございました、これからもよろしく願いします。

 そして、ここまで聞いてくださったリスナーの皆様、本当にありがとうございました。

 本日のお相手は、初めてのカラオケにwktkな、プリンちゃんでした。

 バイバ~イ、またね~!

 さーて、次は何を歌おっかな~。






 私信です。

 部長氏へ。これを放送したくば、以下の口座に指定の額を入――


 ――ピ――ブチン!




※ 2012年2月13日 本文一部修正

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