表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
断罪されるはずの悪役令嬢と、断罪したくないヒロインの政変記  作者: 南蛇井
第一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/24

第7話 動き出す派閥

 議会での一件から三日。


 王城の空気は、明らかに変わっていた。


 廊下で交わされる視線。

 囁き声。

 扉の向こうで止まる会話。


 第一王子の失点は、小さな亀裂だった。

 だが政治において、亀裂は拡大する。


 最初に動いたのは――王弟派だった。


 ◇


 王城北棟、客間。


 重厚な装飾に囲まれた部屋で、リリアナは紅茶を前に座っていた。


 対面には、王の弟であるクラウス公爵の側近。


「率直に申し上げます」


 男は穏やかな声で言う。


「殿下の資質に不安があることは、もはや明らか」


「へえ」


 リリアナはカップを持ったまま視線だけ上げる。


「王弟殿下は、国家の安定を第一に考えておられます」


 つまり。


 王位継承の再検討。


「あなた様のような“民意を持つ方”が協力してくだされば」


 利用したい、ということだ。


 ヒロインの人気と、議会での発言力。


 リリアナは内心で笑う。


 甘い。


「検討しとく」


 曖昧に答える。


 約束はしない。


 男は一礼し、去った。


 ◇


 同刻。


 西棟、執務室。


 レディアナの前には、宰相派の重鎮が座っている。


「見事な資料でしたな」


 低い声。


「王子殿下も、少々早計であった」


「私は事実を提示したのみです」


 微笑みを崩さない。


「あなたほどの才覚を、あの若さで持つ者は稀。王家の補佐に留めておくのは惜しい」


 つまり。


 宰相派として取り込みたい。


 王弟派とは別方向からの誘い。


「もし次期政権が再編されるならば――」


 レディアナは静かに茶を置く。


「その際は、国家の安定が最優先です」


 明言はしない。


 だが拒絶もしない。


 男は満足げに去る。


 ◇


 夜。


 東棟の小会議室。


 リリアナとレディアナは向かい合っていた。


「王弟派、来た」


「宰相派もです」


 やはり、と視線が交差する。


「どっちも私たちを旗にしたい」


「ええ。王子を削る刃として」


 沈黙。


 これは危険だ。


 派閥争いに巻き込まれれば、内乱は前倒しになる。


 リリアナが椅子の背にもたれる。


「利用される気はないけど」


 レディアナは指先を組む。


「利用されるのではなく、利用するのです」


 静かな声。


 だが断固としている。


「王弟派は武力を持つ。宰相派は行政を握る」


「どっちも単独じゃ弱い」


「ええ」


 ならば。


 両方を牽制し、均衡させる。


「二つを競わせる」


 リリアナが言う。


「こちらが鍵を握る形で」


「その通りです」


 世論はリリアナ。


 財務と議会はレディアナ。


 派閥は、彼女たちを必要としている。


 ならば立場は対等だ。


 いや。


 主導権はこちらにある。


 リリアナがにやりと笑う。


「最高」


 その一言に、迷いはない。


 レディアナもわずかに口角を上げる。


「王子殿下は、まだ気づいておられません」


「自分が盤上の駒になりかけてること?」


「ええ」


 窓の外、王都の灯りが揺れる。


 派閥は動き出した。


 だが、盤面を俯瞰しているのは二人だ。


 ヒロインと悪役令嬢。


 本来なら争うはずの存在。


 今は同じ方向を見ている。


 内乱を防ぐため。


 王国を守るため。


 そして何より――


 物語を、書き換えるために。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ