宣告
沈黙が、十分に沈んだのを見届けてから。
デルガはゆっくりと立ち上がった。
椅子がわずかに軋む。
その音だけで、三人の背筋がさらに伸びる。
怒号はない。
叱責もない。
ただ、事務的な整然さがある。
「結論を述べる」
低く、揺らがない声。
三人は視線を上げる。
逃げる理由は、もうない。
「本日より、異世界式体型矯正を開始する」
静かに。
まるで予算配分を告げるような口調だった。
ライルヒルトが瞬きをする。
「……異世界式?」
ユーフォミアが小さく繰り返す。
「体型、矯正……」
リリエルは反射的に自分の頬に触れる。
だがデルガは説明を急がない。
「魔力循環の最適化、儀礼運動の再設計、食事構成の調整」
一つ一つ、淡々と並べる。
「健康を損なうことはない。むしろ向上する」
救いのようでいて、逃げ道ではない。
「目的は減量ではない。輪郭の再構築だ」
輪郭。
その言葉が、妙に刺さる。
三人は、無意識に自分の身体を意識する。
曖昧な線。
優しい丸み。
それが、削られるのだと理解する。
デルガは続ける。
「断罪は、三ヶ月後だ」
空気が、わずかに凍る。
具体的な期限。
儀式の日付が、現実になる。
「その日までに、象徴として完成してもらう」
命令口調ではない。
当然のように。
すでに決定済みの事項を確認する声音。
ユーフォミアがゆっくりと息を吸う。
三ヶ月。
ドレスは入るようになるだろうか。
ライルヒルトは拳を握る。
三ヶ月。
階段で息切れしない王子になれるのか。
リリエルは小さく頷く。
三ヶ月。
儚さは、作れるのか。
誰も反論しない。
できないのではない。
もう、理屈は理解しているからだ。
デルガは最後に言う。
「諸君は部品ではない。だが象徴だ」
その順番が、微妙に残酷だった。
「磨けば、光る」
それは励ましのようでいて、
磨かれることを前提としている。
重厚な執務室。
高い天井。
歴代王の肖像が、無言で見下ろす。
三人は静かに頭を下げた。
宣誓ではない。
しかし、受諾だった。
その瞬間。
物語は、わずかに動いた。
まだ誰も痩せていない。
だが、もう後戻りはできないと、
三人とも理解していた。




