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悪役令嬢は太って断罪を回避する  作者: 南蛇井


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29/30

物語の評価(メタ的結論)

王宮の高み。


観測室では、すでに水晶は沈黙している。


記録だけが残る。


国家的視点、最終評価。


予定された劇的カタルシス:失敗。

王子の威厳演出:未達。

悪役排除による浄化:未発生。

恋愛収束:曖昧。


数値は冷たい。


情け容赦なく、物語を「未完成」と断じる。


断罪は起きなかった。


悪役は消えなかった。


王子は決定的な威光を示さなかった。


緊張は解放されず、


拍手も喝采も生まれない。


国家が求めた“美しい終幕”は、


訪れなかった。


物語は、失敗した。


少なくとも、


設計図の上では。


だが――


壇上の三人の視点には、


別の記録がある。


ユーフォミアは、立っている。


孤立していない。


断罪の的にならず、


排除もされなかった。


リリエルも、そこにいる。


勝者として持ち上げられることもなく、


敗者として踏みつけられることもない。


ただ、自分の足で。


ライルヒルトもまた、


威厳の仮面を外したまま立っている。


喝采はない。


だが、偽りもない。


誰も傷つかない。


誰も消えない。


役に潰されない。


三人は、


物語の部品にならなかった。


予定された三角形は崩れた。


頂点は失われた。


だが、横並びの線は残った。


均衡は劇的ではない。


しかし、静かに安定している。


国家は評価する。


「失敗」と。


だが三人は、互いを見る。


そこには敗北の色はない。


選択したという確かさだけがある。


物語は、完成しなかった。


だが。


三人は、完成した。


役割ではなく、


人間として。


国家の物語は失敗した。


けれど。


三人の物語は、


成功した。

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